老後の生活や医療等に必要となる金員の原資は、退職金・年金・投資などが挙げられると思います。
現在、原則として国民年金は65歳から、厚生年金は生年月日に応じて60歳以降から年金を受け取ることが可能となっています。
他方、「年金の受給開始年齢の引き上げ」といった議論が度々起こるように、近い将来、年金の受給開始となる年齢が引き上げられ、「生涯現役」も現実的となるかもしれません。
今回はそう考えられる背景について、述べていきたいと思います。
年金を取り巻く最近の動向
(1) 雇用保険の適用拡大
今までは、65歳以上は就労時間数にかかわらず雇用保険には加入できませんでした。
その代わり毎年度4月1日時点で64歳以上の方(=その年度中に65歳以上になることが確実な方)からは、雇用保険料の徴収はしていませんでした。
しかし今年1月からは雇用保険の加入年齢の制限を撤廃しました。
具体的には、65歳以上であっても、1週間の所定労働時間が20時間以上かつ、31日以上の雇用見込がある方は雇用保険に加入することとなりました。(但し、雇用保険料は平成31年度までは免除されます。)
この雇用保険の適用拡大は、従来の「シニア世代」も健康で働く意欲があれば、積極的に貴重な労働力として歓迎します、ということになるでしょう。
またご自身で収入を得ることが可能となることで、老後の生活等原資に占める年金の割合を下げる狙いがあるのかもしれません。
(2) 65歳以上への定年年齢の引き上げや、定年撤廃を推進する政策
既に、定年年齢が65歳未満の会社は「高年齢雇用確保措置」として、
・ 再雇用や勤務延長の制度を導入することで65歳まで継続雇用すること
・ 定年年齢の撤廃、のどれかをしなくてはいけません。つまり会社に「65歳までの定年」を義務づけた形
となります。
さらに昨今では、会社に65歳以上への定年の引き上げや、高年齢者の雇用環境の整備を図るような政策も取られています。
このことからも、年齢にかかわりなく働き続ける「生涯現役」の社会が近づいていることが言えると思います。
主要各国の年金受給開始年齢
最後に、主要各国の年金受給開始年齢を見ておきましょう。
日本年金機構のHPに掲載されている情報によると、各国軒並み年金受給開始年齢を引き上げています。
例えば、
・ ドイツでは、生年月日に応じて年金の受給開始年齢を67歳へ引き上げ。
・ イギリスでは、女性の年金受給開始年齢を62歳から65歳へ引き上げ。
・ アイルランドは、最終的に、年金受給開始年齢を68歳に引き上げ。
・ フランスは、生年月日に応じて60歳から62歳へ年金受給開始年齢を引き上げ。
・ アメリカは、年金受給開始年齢を67歳へ引き上げ。
このことから、日本も、現行の年金受給開始年齢を引き上げる方向に進むことは想像に難くありません。
以上、最近の動向や各国の現状から、将来の、年金受給開始年齢がどうなるかについて述べて参りました。
老後の過ごし方・働き方・ライフスタイル等は千差万別ですが、将来の制度を想像しながら現在の働き方を考えるきっかけになれば幸いです。(執筆者:岡村 ひろ子)