介護保険法改正を巡る審議に関しては、衆院厚生労働委員会で森友問題の質問を行った野党に対抗して、与党が強行採決するという一幕もありました。
5月にも参議院で可決成立しそうな介護保険改正法ですが、65歳未満の現役世代と65歳以上のシニア世代、両方で負担が増える層が出ます。
どちらも、収入(所得)に応じた負担を求める方向性が強化されています。
65歳未満の現役世代
介護保険料に総報酬割の導入
40歳以上になると介護保険に加入することになります。
65歳未満に関しては、国民健康保険の中で介護割という形で支払うか、会社で加入する社会保険において介護保険料が給与から天引きされます。
改正が関係するのは、会社で加入するものです。
会社員から徴収した保険料は、運営する全国健康保険協会や健康保険組合が預かって、社会保険診療報酬支払基金に納付します。
この介護納付金の額は、従来加入者数に応じて変動しましたが、平成30(2018)年度からこれを半額は加入者の報酬(給与)に応じて変動させるということです。
この制度が総報酬割と呼ばれ、2020年度には介護納付金の全額に総報酬割が適用される予定です。
大企業の健康保険組合加入者の負担が増える見込み
このように改正すると、大企業の会社員が多い健康保険組合は介護保険料が上昇し、中小企業の会社員が多い全国健康保険協会の介護保険料が減ることが見込まれます。
65歳以上のシニア世代
介護サービス費の負担割合が2割 → 3割になる人も
65歳以上の介護保険加入者ですが、在宅や施設で介護保険サービスを利用した場合の自己負担割合は、所得の高い人は2割、低い人は1割となっています。
現行2割負担に当てはまる人のうち、平成30年8月以降は所得によっては3割負担に引き上げられます。
どの所得層に影響があるのか?
改正前は、下記の基準に当てはまる人は2割負担です。
かつ
・ 公的年金等収入 + 「公的年金等に係る雑所得」以外の合計所得金額が単身世帯では280万円以上、2人以上世帯では346万円以上
【合計所得金額に関しての参照記事】
確定申告によって自分の受ける社会保障はどう変わってくるのか(2)~基準となる所得
確定申告で「損益通算」 改正点も含めて正しい知識で申告すると節税にもなる
改正後、下記の基準に当てはまると3割となります。
かつ
・ 公的年金等収入 + 「公的年金等に係る雑所得」以外の合計所得金額が単身世帯では340万円以上、2人以上世帯では463万円以上
申告の仕方に気をつける
もっともこちらに関しては、年金以外の収入があれば確定申告や住民税申告の仕方により負担上昇回避の余地があります。
事業所得や不動産所得があれば、青色申告を行うことで合計所得金額の引き下げができますし、これらの所得で損失が出ている場合は、損益通算でも引き下げができます。
また上場株式の取引をしている方は、申告不要制度を活用することで合計所得金額の引き下げが可能です。
なお過去3年間の繰越損失に関しては、「合計所得金額」においては相殺の対象とされないことに注意してください。
また医療費控除・生命保険料控除・扶養控除などの「所得控除」は全く考慮されません。
【上場株の申告不要制度に関しての参照記事】
まだ間に合うかも! 所得税と住民税を「戦略的」に申告して社会保障制度を有利にする
以上です。(執筆者:石谷 彰彦)