iDeCo(個人型確定拠出年金)について、マネーの達人、読者の方から質問をいただきました。
iDeCo(個人型確定拠出年金)に定年間近に入ったとしたらどうなるのでしょう? どんなメリットがあるか検討してみましょう。
iDeCo(個人型確定拠出年金)って何?
iDeCo(個人型確定拠出年金)とは、加入者本人が積み立てた掛け金(または保険料)の運用結果に応じた年金資産を原則60歳から70歳までの間に受け取る私的年金制度です。
iDeCo(個人型確定拠出年金)で積み立てた年金資産は国民年金や厚生年金・共済年金(公的年金)に上乗せされる形です。
60歳以降70歳までに受け取る老齢給付金は年金でも一時金でも受け取れます。障害給付金や死亡一時金、脱退一時金が出ることもあります。
過去記事の「どんな人がiDeCoに向いてる?」や、「iDeCo(個人型確定拠出年金)のリスク」も参考にしてください。
iDeCoで運用できる金額
・ 自営業者… 国民年金基金保険料との合計で月6万8,000円まで
・ 公務員と勤務先に企業年金がある会社員… 月1万2,000円まで
・ 企業年金がない会社員と会社員・公務員の被扶養配偶者… 月2万3,000円まで
・ 勤務先が企業型確定拠出年金加入でiDeCo加入も認めている会社員… 月2万円まで
iDeCo(個人型確定拠出年金)は、加入期間によって年金資産の受け取り可能年齢が異なります
・ 10年以上加入なら60歳から
・ 8年以上加入なら61歳から
・ 6年以上加入なら62歳から
・ 4年以上加入なら63歳から
・ 2年以上加入なら64歳から
・ 1か月以上加入なら65歳から
年金資産を受け取ることができます。
iDeCo(個人型確定拠出年金)のメリットとは?
定年近くiDeCo(個人型確定拠出年金)に入るメリットとは何でしょう?
それを考えるとともにiDeCo(個人型確定拠出年金)のメリットをおさらいしましょう。
1. iDeCo掛け金の全額が小規模企業共済等掛金控除となり課税所得を少なくすることができます。
税率の高い高年収の方や子供が成人している等、扶養親族が少ない方は(控除が少ないと課税所得が多くなるので)より節税効果があります。
定年近い場合
50代は年収が高く、控除対象の扶養親族は少ない傾向にあるので、小規模企業共済等掛金控除を受けることによる節税効果は得られやすいでしょう。
平成28年総務省の家計調査速報によれば、2人以上勤労所得者50代世帯の可処分所得(手取り)は平均49万139円で消費支出が平均35万3052円と割とゆとりがあります。
iDeCoは60歳までの加入となります
60歳間際でも会社員(企業年金のない会社)は最高月2万3,000円(年額27万6,000円)までiDeCo(個人型確定拠出年金)の掛け金を支払えてその全額を小規模企業共済等掛金控除にできますので節税になります。
2. iDeCoの運用利益に対しては、原則60歳以降の給付金受け取りまでは、所得税・住民税がかかりません。
iDeCoでなく投資信託等で運用した場合、同じ投資信託でも運用利益には原則20.315%所得税・住民税がかかるのです。
定年近い場合
NISAの投資信託等の運用利益も5年間所得税・住民税がかかりません。
定年間際にiDeCoに加入した場合、加入期間が短く、65歳以降受け取りなので5年は運用利益が非課税なのですが、NISAより投資金額は少なく(NISAは年120万円買い付けられる)なります。
3. 60歳以降給付金を受け取るときも、iDeCoなら一時金を選ぶと退職所得控除、年金を選ぶと公的年金控除が受けられます。
定年近い場合
現在公的年金の受け取り年齢は、62歳(会社員が長い男性の場合)から部分年金、65歳から満額の年金を受けることになっています。
60歳以降定年の会社は増えていますが、給与が少なくなるケースも多いとのことです。
定年間際に加入したiDeCoは積み立てた資産が少ないです。
会社から支給された退職金とiDeCo資産を合計しても退職所得控除(勤続20年×40万+20年超勤続×70万)の1,850万円(35年勤務の場合)まで所得税・住民税がかからないのです。
4. iDeCo(個人型確定拠出年金)の売買手数料は無料なので運用する商品を切り替えたり、運用商品の配分を変更しやすい(スイッチングが無料)です。
定年近い場合
60歳までのiDeCo加入で、運用利益を確定したい場合で運用商品が値上がりした時には、利益を確定し「スイッチング」で安いと思う運用商品に切り替えれば、利益をより増やしやすいでしょう。
iDeCoで金融機関が運用する商品は、インデックス投信やアクティブ投信、10年契約の外国株式運用投資信託、積立傷害保険などがあり、現在様々な金融機関が運用商品を増やしたり、手数料を値下げしています。
5. 給与振り込み口座等の生活費口座で iDeCoの掛け金を支払うよう設定すれば、老後資金はほぼ確実に用意されるでしょう。
定年近い場合
定期預金等、確実だけど利率の低い運用をすると、加入手数料や口座管理手数料、運用指図手数料、資産支払い手数料などがかかります。
なので65歳以降70歳までの受け取り年齢までの手数料が高くなり、元本割れの可能性がとても高くなります。
企業年金連合会の平成27年度の実態調査によれば、企業型確定拠出年金の加入者だと半数以上が「定期預金等元本確保型商品」を選んでいるとのことです。
長期間掛け金を掛けられるのなら、長く節税メリットを受けられますが、iDeCo(個人型確定拠出年金)に定年間際に入る場合は、定期預金や生命保険商品など利率の低い商品は選ばない方が無難でしょう。
iDeCo(個人型確定拠出年金)のデメリット
iDeCo(個人型確定拠出年金)のデメリットは定年近くに加入した人にもデメリットなのでしょうか?
いくつか検討してみましょう。
1. iDeCoの運用管理(金融)機関が破たんする可能性はゼロではありません
iDeCoで積み立てた年金資産を預かる信託銀行が破たんした場合は、iDeCoの年金資産より、保護される預金としては定期預金や決済性預金の方が優先されます(合計1,000万円プラス利息)。
定年近い場合
iDeCo(個人型確定拠出年金)の資産を積み立てている信託銀行とは別の銀行で退職金を受け、双方で1,000万円以内の預金にする、決済性預金に預けるなどすれば、破たんリスクはほぼなくなるでしょう。
念のため iDeCo契約前に運用金融機関や信託銀行の格付けなどは、慎重にチェックした方がいいでしょう。
(格付け投資情報センター)
2. 満額の国民年金保険料を支払えない間はiDeCoの運用資産も増やしちゃダメ!!
iDeCoを掛けるには国民年金または厚生年金または共済年金保険料を満額払ってなければなりません。
例え大黒柱が働けなくなり、国民年金保険料を減額してもらった場合でも、iDeCoの掛け金は手数料引かれてから返金されます。
定年近い場合
20歳から60歳までは国民年金(または厚生年金・共済年金)保険料を払わなければならないのですが、60歳過ぎたら国民年金保険料を払う必要はありません。
例えば59歳に早期退職してiDeCoに加入なら1年間だけ国民年金保険料を満額払えばいいのです。
定年間際のiDeCoの注意点
1. 元本確保型は運用利率が低く手数料が高く、節税メリットも短期間なので選ばない。
60歳以降年金資産受け取り時に元本割れになる可能性もゼロではないのですが、投資信託などでは設定以来2倍以上になっているものもあります。
5%ほど運用益が出ている商品も多いので手数料分は運用利益が上回る可能性が高いと思います。
企業型確定拠出年金では、実際に元本確保の定期預金等ではなく投資信託や株式に投資した人は約30%弱とのことです。
定年近い場合
定年間際にiDeCoに加入するなら、運用利益が出た場合非課税なのでリスクとリターンを取った運用商品にしてみてはいかがでしょうか?
運営管理(金融)機関を良く選び、手数料がどのくらいかかるか、iDeCoの運用商品にどんなものがあるか詳しくチェックしてみましょう。
金融機関によってはどのくらい増えたかわかりやすく開示しているところもありますよ。
(参考:iDeCoナビ)
2. 掛け金は無理なく、少なすぎず多すぎず
最低月5,000円から1,000円単位で原則1年に1回掛け金の変更ができます。
定年近い場合
定年間際に加入するiDeCoは60歳までの期間が短く、見直すこともほとんどできないので、最初から家計から見て適切な掛け金を考えましょう。会社員だと最高で月2万3,000円の掛け金です。
3. 企業型確定拠出年金に入っていて退職したときは6か月以内に手続き忘れずに!
勤務先で企業型確定拠出年金に入っていた場合、退職後について案内が来なくても、6か月以内に手続きをしましょう。
10年以上運用していなければ60歳から企業型確定拠出年金の年金資産はまだ受け取れない可能性が高いです。
運営管理(金融)機関に手続き書類をもらい、6か月以内にiDeCo(個人型確定拠出年金)へ移管しましょう。
年金資産が自動的に国民年金基金連合会で仮預かりとなり、1口座4,000円の手数料がかかるのです。
10年以上企業型確定拠出年金に入っていた場合
60歳から老齢給付金を受け取ることができます。
確定拠出年金の他に退職金が出る場合、合算して退職所得を計算します。勤続年数が例えば38年なら合計2,060万円まで所得税・住民税がかからないので、合計額により一時金で受けるか、年金で受けるか決めましょう。
企業型ではなくiDeCo(個人型確定拠出年金)なら退職しても自身の国民年金保険料やiDeCoの掛け金を支払えば60歳まで続けられます。
4. 50代後半からのiDeCo(個人型確定拠出年金)加入は、NISAとの併用がお勧め
退職後
会社員… 最高月額2万3000円(年額27万6,000円)
なので、老後の運用資金として少ないと感じるなら、NISA(年間120万円買い付け可能)との併用をお勧めします。
5. 絶対損をするのが嫌なら、iDeCo(個人型確定拠出年金)もNISAもやらない選択肢を!
iDeCo(個人型確定拠出年金)に加入すると、定期預金等でも口座管理手数料などがかかります。
利息で回収できる見込みは薄く元本割れの可能性高いし、増えている運用商品は多いのですが、投資信託などで運用して「必ず増える」確証はありません。
やはり短期間より長期間運用の方が一時期損をしていても持ち直したり、掛け金積み立ての効果を受けやすいのです。
感覚的に「損をするかも」と不安な思いがとても強いなら、定年間際になってからiDeCo(個人型確定拠出年金)に入る必要はないでしょう。(執筆者:拝野 洋子)