小泉進次郎議員らが社会保険の一部として「こども保険」を提唱しています。
今のままでは今後、日本の年齢別人口構成はますます高齢者に偏っていくことが確実になっています。
今後の社会保障を担う次世代の担い手、労働力の育成を進めなければいけないのは間違いありません。
現在の社会保障制度
今も子育て拠出金制度があるものの(もとの児童手当拠出金)、拠出金率は平成29年度に値上がりして0.23%。
返金や医療費を含めた社会保険料に比べると額は小さいといえます。
現在の社会保障制度は、現役世代が支払った社会保険料を現在の高齢者に分配しています。
現在の現役世代は将来、次世代の人たちが負担する社会保険料を財源にしなければなりません。(もともとの年金制度は、自分が積み立てた年金財源を将来受け取るように設計されていましたが、今は完全に崩れてしまっています。)
社会保障制度には、公的年金制度や医療費制度、介護保険制度などがあります。
財務省のデータによると日本の社会保障費や医療費負担は先進国と比較しても同等です。
また、提供される医療の質は世界最高水準だといいます。そして、ご存知の通り日本人の平均寿命は世界一です。
少子高齢化により収入源となる現役労働者の割合が減りつつありながら、世界最高水準の医療と長生きする高齢者の負担を支える今の制度は非常にアンバランスだと考えられます。
社会保障制度を維持するには
ではどのようにすれば今後も制度を維持することができるのでしょうか。
例えば、年金制度を今後も維持していくためにはいくつかの条件があります。
まず、年金の支出を抑えることです。すなわち、
・ 年金の支給開始年齢を上げる
・ 年金受給者を減らす
もうひとつは年金財政の収入を増やす事です。
・ 社会保険料を上げる
介護費、医療費などでも似たような構図になります。(ただし、介護費は40歳以上、医療費は若年者も条件を満たせば受給できることがあります。)
高齢者に負担が重い
こう見てみると良く分かることがあります。
実現するための支出削減策は、比較的年齢の高い人たちに、当初約束されていた金額が支給されなくなることを意味します。
ところが、この世代の人たちは投票率も高く、日本の立法府である国会の議員はこの世代に負担を迫る政策を掲げると身を亡ぼす可能性があります。
今後の労働力の大幅増は困難
一方、現役世代の社会保険料を増やす事は、現在でも世界的には標準的水準であることから大幅な値上げは難しい。
2015年の出生率が1.45(人口維持のためには2.08程度必要といわれている)という今の状況では今後も労働人口は減少していくことは避けられません。
かといって、島国である日本はこれまでの歴史から考えても労働力として広く「移民」を受け入れるような文化がありません。
今後、多少増えることがあったとしても状況を劇的に改善できるようなことにはならないでしょう。
労働力を確保するために女性の働き手を増やそうとすると、保育園が足りなくて待機児童が増える。
「こども保険」の目的とハードル
目的
このような状況を打破する方策として、小泉進次郎議員らが提唱したのが「こども保険」です。
質の高い将来の労働力、将来の社会保障の担い手を国を挙げて育成するための財源を確保し、教育の実質無償化など、子育て負担を減らし、少子化傾向に歯止めをかけることが目的です。
僕はそのために消費税が数%上がっても仕方ないと思う。
自分が子育てをしている立場だからということでなく、子供がいない人も将来、確実にその恩恵を受けるはず。
確実に月日が経つごとに状況は悪化していきます。
「こども保険」という名称がどうかはともかく、こういう仕組みを作るのは早ければ早いほど効果が出ます。
ハードル
一方で、今の現状を考えると実現には「政治の仕組み」という高いハードルがあります。
平成27年度の年齢別人口は
46歳以上人口6,417万人
(総務省統計局 平成27年度 年齢各歳別人口による)
です。
参政権が18歳からになっても18~45歳までの人より、46歳から上の人の人数のほうが多いのが日本の人口構造です。
しかも残念なことに選挙権を行使する人の割合も高齢者のほうが圧倒的に高い。
自分の備えは自分自身で!
もし「こども保険」のような仕組みが実現できなかった場合、将来の公的年金や公的医療保険などの受給額、恩恵を少なくするか、社会保険料をもっと重くするかしか方法はなくなります。
今、年金受給者がしている生活と同じ生活は今の50代以下の世代では保証されていないことが良く分かると思います。
自分の将来の生活費や趣味など+αを楽しみながら「楽しく、安心して、自分らしく生きる」、すなわちワンダフルライフを過ごすためには、個々人が時間をかけて備えておく必要もあると思います。
国は助けてくれないでしょう。「何とかなる」では済まされないかもしれません。
一度、じっくり将来のことを考えてみませんか?(執筆者:西山 広高)