「夢のマイホーム」なんて表現が使われることがありますが、マイホームを購入しようと考え始めれば夢も広がることでしょう。
でも最近はとても堅実な方が増えているのか「夢のマイホーム」は欲しいけど、現実的な予算をしっかりと考えていたり、住宅ローンに縛られたくないと考える方も増えているようです。
マイホームが欲しい人も2極化
ご相談を受けていてもマイホーム、特に一戸建てに関してはお客様も大きく二つに分かれるのを感じています。
ひとつは、マイホームにはとことんこだわりたい派
予算設定もこだわりを実現するためには多少の無理も無理とは考えない「折角マイホームを手に入れるのだから…」と考える派です。
言うならば設計事務所や注文建築を得意とする会社でこだわって建てたいとお考えの傾向があります。
もうひとつは、「マイホームは欲しいけれどそこまでマイホームにこだわりはない派」
語弊を恐れずいうと「家が持てればそれで良い」という派です。
どちらかに完全に振り切れている方もいますが、どちらかに寄っている傾向はあります。
最近はいわゆるローコスト住宅といわれる格安のビルダーが元気です。本体価格750万円! などと1,000万円を切る金額の広告などで目を引きます。
仮に本体価格750万円だとしてもそれ以外に水道工事、ガス工事、外構工事や諸費用などが発生するので総額では1,000万円は超えます。
でも注文建築で1,000万円台のしかも前半の金額で建築ができるのなら非常に安いのは間違いありません。
ローコスト住宅がローコストにできるわけ
ローコストをウリにして営業している会社の全てを見てきたわけではありませんが、実際に仕事で関わった範囲で知り得たローコストにできる要因を挙げたいと思います。
(1) 打ち合わせコスト削減
(2) 仕様を固定化・仕入れを共同化
(3) 利益率の設定を下げる
(1) 打ち合わせコスト削減
(1)の打ち合わせコストの削減の際たるは設計の打ち合わせコスト削減です。
こだわり派のお客様なら一からじっくりと打ち合わせをしていきたいと考えているでしょう。
でもじっくり打ち合わせをするとその間の設計士や営業マンの人件費も発生するのでやはり建築コストに跳ね返ります。
とあるローコスト住宅の会社は基本的にプラン集からプランを選択してもらう方式を採用しています。
原則、プラン集からの間取りの変更は不可。色は選べるけど、設備仕様の選択肢も限定しています。
プラン集のプランも使い勝手が悪いプランという訳ではありませんが、細かい点までこだわりたい人には物足りないかもしれません。
設備も安くて仕様の低い物という訳ではありません。そこそこ良い仕様の物が入っています。
分かりやすく言えば、そこそこ仕様の良い建売住宅を自分の希望する場所(土地)に一から建築するようなイメージでしょうか。
プラン集から選ぶならあらかじめ設計図面も用意しておけます。設計士が頭を抱えて、時間をかけて図面を仕上げる必要はありません。
契約から着工までの打ち合わせ回数をできるだけ少なく済むようにシステム化されています。
注文建築と謳っていても「オーダーメード」というよりは「セミオーダー」もしくは「既製品の中から気に入ったものを選択する」という表現が近いように感じます。
人によっては大手のハウスメーカーでも完全な注文建築ではないという方もいます。
メーカーにもよりますが、余程奇抜なデザインなどを望むのでなければ大手ハウスメーカーは自由度が高い方だと僕は思っています。
ローコスト住宅は「既製品と同じもの」を「受注生産」するイメージだと思います。
コスト削減にはもう一つあります
それは住宅展示場の出展コストです。
総合住宅展示場と呼ばれる常設の住宅展示場には出展せずに自前で単独のモデルハウスを用意しているケースがあります。
このモデルハウスも数か月利用したら、建売住宅のようなイメージでそのまま販売してモデルハウスのコストを回収するようにしている会社があります。
回収した資金で新しく土地を仕入れて、次のモデルハウスを建築して、数か月利用したら、また販売して資金回収といったサイクルで複数のモデルハウスを回しながらコストを大きくかけずに営業活動をするという手法です。
さながらサーカスの移動公演のようにモデルハウスの場所はその時によって違うということです。
(2) 仕様を固定化・仕入れを共同化
(2)の仕様の固定化も(1)につながる話ですが、多彩な仕様を用意することで打ち合わせに時間がかかります。
建物本体の仕様は基本的に一本化します。
さらに建材の仕入れも全ての建材ではありませんが、複数の工務店で共同仕入れすることでまとまった量にして、大手に負けない価格で仕入れるという仕組みでローコストを実現している会社があります。
これもあるコンサルタント会社が主導してそういった仕組みを整えているようです。
(3) 利益率の設定を下げる
そして(3)ですが、見積もりの利益率の設定は実際に低めに設定しているように見受けられます。
大手のハウスメーカーの利益率の設定よりも5~10%程度低く設定されているように感じます。
だからこそ僕が知っているローコスト住宅の会社は値引き販売をあまりしないようです。
それは値引きできる余力はあまりない状態でお客様に金額を提示しているということでもあります。
ローコストでも粗悪品ではない
私見ですが、完成した現場を見ると大手のハウスメーカーやこだわりを持ってそれなりの金額で建築をしている工務店などの建物と比べると少し安さを感じる面も否定はできませんが、でも安かろう悪かろうという内容でもないなと感じます。
そこはきちんとローコスト住宅なりにポリシーを持って建築をしています。
例えばローコストでもフラット35Sに標準で対応していたり、性能評価制度の耐震等級は3を取得出来たりします。
長期優良住宅などの認定も受けたければ対応は可能な状態のようです。
ただローコスト住宅の考え方として「良い物を安く提供する」ために無駄なことやものは省くように努力をしています。
そしてこだわり派のお客様には魅力的に見えないように敢えて下品にも見えるほど低価格を前面に出して、そこにニーズがある人を集めています。
ニーズの合わない人が多く集まってしまって、営業マンの時間を無駄に使うことも避けられるからです。
ローコスト住宅の会社が狙っているのは「家が持てれば良い」というこだわり派ではないお客様です。(執筆者:佐藤 陽)