おいしいと評判のレストランへ予約をせず行った時のこと
突然ですが質問です。
あなたはおいしいと評判のレストランへやって来ました。店の前にはすでに人の列ができています。
「どのくらい待ちますか?」と店員さんに尋ねると、「いつもなら、1時間もすれば入れると思います」と言われました。
1時間ならとあなたは列に並びます。
ところが、1時間たってもまだ店には入れません。
列は少し短くなりましたが、前にまだ何組も待っています。もしかすると、さらに1時間以上待たなければならないかもしれません。
さて、この状況であなたは列を離れますか? それとも「ここまで待ったのだからもったいない」と並び続けますか?
「もったいない」の気持ちが損を呼ぶ:サンクコストの過大視
この状況のように、「今までかけた費用や労力がもったいないと感じ、少しでもモトをとろうとする」ことを、経済学では「サンクコストの過大視」と言います。
※サンクコスト(sunk(埋没) cost(費用)) 事業や行為に投下した資金・労力のこと。
心理学では、同じことを「コンコルド効果」と呼んでいます。
超音速旅客機であるコンコルドを作っている時に、「これは商業的に採算が合わないかもしれない」と気づいたものの、すでに投資した時間やお金が「もったいない」からと、赤字をたれ流しながら作り続けてしまったという状況に由来します。
きっと誰しも、この
に陥ったことがあるのではないでしょうか。
陥りがちな「サンクコストの過大視」の例
この「サンクコストの過大視」は、日常のいたるところで生じます。ありがちな例を挙げてみましょう。
・ やり過ぎてゲームに飽きてきたが、せっかく集めたアイテムがもったいないのでつい続けている。
・ 実感できるような効果が出ていないのに、「もう少し続ければ効果が出るかも」とエステに通い続ける。
・ 子どもに才能はなく、やる気もないことが明白なのに、今まで通ったことが無駄になるような気がして、なんとなく習い事を続けさせている。
どうでしょうか。思い当たるような経験がある方も多いのでは?
「サンクコストの過大視」に対応するには、「損切り」の精神が必要
「先行投資の分を取り返したい」という気持ちは誰しもあるものですし、「もったいない」という日本人らしい精神も決して悪いものではありません。
とはいえ、「投資」のつもりが「浪費」になってしまわないよう、なんとなく続けていることが「サンクコストの過大視」に陥っていないかを、時々チェックしてみる必要があります。
「今、先行投資をしていない状況だったとしても、このお金を払うかどうか」を冷静に見極め、必要であれば潔く「損切り」して、次のことに気持ちを切り替えましょう。
「もったいないけれど、これ以上お金や時間をかけるのはもっともったいない」と、冷静に対処できる視点を、常に持ち続けていたいですね。(執筆者:青海 光)