「第二のシリコンバレー」と呼ばれる国「イスラエル」
国土面積2万2,000km2に800万人の人口。
GDPに占める研究開発比率、国民1人当たりの起業率、博士号保有者数、特許数が世界一。
「第二のシリコンバレー」と呼ばれ、ハイテク関連企業を中心に年間600社ものベンチャー企業が生まれる起業大国。イスラエル。
69年目を迎えるこのユダヤ人の国家は建国以来、国内のパレスチナ人や周囲のアラブ人国家との紛争が絶えないというイメージが強い。
しかし、そのイメージの影に隠れるように経済的には最新のテクノロジーを駆使したIT企業の世界有数のホットスポットとなっている。
最先端技術が軍事的な開発から生まれるのは世の習い
よくよく考えるとこれは不思議なことではない。
なぜなら四方を敵対国や非友好的な国と海に囲まれているイスラエルはわずかな軍事的なミスや立ち遅れが国家の存亡につながるので常に最新の軍事的技術を維持していると言って良い。
最先端技術が軍事的な開発から生まれるのは世の習いである。
IT革命の中心的役割を果たしているインターネットももともと米国防総省で開発された技術が民間転用されたものである。
イスラエルは国民皆兵国家で満18歳になった国民は男子で3年、女子で2年の兵役がある。
つまりイスラエル人はその兵役中、若くしてまだ民間には公開されていない最新のIT技術に触れるのが可能であり、また兵役を通じて養われるリーダーシップも起業家精神のタネになっていると言えるかもしれない。
学生が起業しやすいように整備されているイスラエルの教育システム
イスラエルの教育システムも学生が起業しやすいように整備されている。
兵役を終えて進学する大学にはスタートアップ支援のファンドなどが備えられており、起業を目指す学生が比較的容易に資金調達をしやすい。
またマイクロソフトやアップル、Google、Facebookといった世界の名だたるIT起業が常にイスラエルの大学に注目して、有望な学生やビジネスを鵜の目鷹の目で狙っているのも資金的に大きな要素。
実際にこれまでAppleは3Dセンサ技術を開発するPrimeSense(プライムセンス)社、Googleは地図ソフト開発会社のWaze(ウェイズ)社、Facebookはアプリ開発会社のOnavo(オナボ)社というイスラエルのITベンチャー企業をそれぞれ買収している。
特に進んでいる医療分野での技術
医療分野での技術は特に進んでおり、下肢麻痺患者の歩行支援を行う人工知能型ロボットの開発、LEDの光で5万枚の写真を撮るカプセル内視鏡の研究、困難な脊椎や頭部の手術支援ロボットなどが開発されている。
また、車搭載のコンピュータシステムをサイバー攻撃から守るソフトや携帯電話の通信性能をあげるために無用な重複信号を消し去るシステムなどもイスラエル発の技術である。
以下は代表的な新進気鋭のイスラエルのITベンチャービジネス。
イスラエルのITベンチャー企業5社を紹介
SimilarWeb
競合サイトの分析サービス。
競合サイトのアクセス数はどれくらいあるのか、検索エンジンから訪問するユーザーやSNS経由でサイトに訪れるユーザーの割合はどれくらいなのか、どのようなキーワードから流入があるのかなどを調べることができる。
Google Analyticsなど従来の技術ではサイトの管理者がアクセス解析コードをサイトやアプリに挿入しなければ、アクセス解析が行えなかったが、SimilarWebは独自の技術によりサイトのURLやアプリ名をフォームに入力するだけで解析ができる。
Cybereason
サイバー攻撃対策サービス。
サイバー攻撃の防御システムに人工知能を用いることで単純にウイルスを発見・制御するだけでなく、攻撃をしかけてくる敵のパターンを分析しながら新たな対策を立てながら対処できる。
2015年にソフトバンクなどからUSD5,900万を調達。
InfinityAR
現実の世界の一部に仮想世界を反映させる技術であるAR(オーグメンテッドリアリティ)プラットフォームを開発するベンチャー企業。
複雑なセンサー等を用いなくてもカメラが2台とソフトウェアさえあればARコンテンツを生成できることができ、今後市場が広がると期待されているVR(バーチャルリアリティ)やARの市場においてその技術力が評価されおり、日本のサン電子や中国のアリババから合計USD1,800万の出資を受けている。
Vayyar
あらゆる物の中身を透視して、その結果を手持ちのデジタルデバイスで見ることができ3Dセンサー技術を開発しているベンチャー企業。
壁の中にある配管などを透視して壁に穴を開けずに問題部分を把握したり、ガンなどの病気の早期発見に利用できると期待されている。
YouAppi
ビッグデータ解析に人工知能を活用したモバイル広告配信や分析プラットフォーム「OneRun」を提供するベンチャー企業。
3,500以上のモバイルサイト・アプリから得られる膨大なデータを人工知能によって分析し、良質なユーザーと最適なアプリをリアルタイムにマッチングする効果的な広告の配信を実現できる。
200か国で導入実績があり、ソニーやツイッターなど様々な企業が活用している。
最後に
イスラエル本国にはテルアビブ証券取引所があるが、外国人がイスラエルの会社の株式に投資するにはアメリカの市場に上場されている銘柄を購入するのが一般的だろう。
イスラエルの企業に投資したETFには「Ishares Msci Israel Capped Investable Market Industry Fund(EIS)」がある。
個別銘柄については以下のリンクででNasdaqに上場されているイスラエル企業を調べることができるので参考にしてほしい。(執筆者:玉利 将彦)