「公的年金」について
公的年金では厚生年金保険料や国民年金保険料の支払いをしていますが、公的年金は保険だということを認識していますか?
公的年金制度は国の社会保障ですが、長生きリスク(年齢の高齢化や年金財政)に対応するためにあります。
特徴
2. 所得再配分が行われる
3. 運営は政府
年金財政の世界では加入者の「長生き」は、「その分支払いが増えてしまう」リスクと考え、長寿化が急激に進む事でおこる財政リスクとどう向き合うかを考えていかなければいけません。
自助努力である民間保険では、情報の非対称性(個人は自分の寿命に関する細かい情報をある程度持っていますが、保険会社は平均寿命を知るのみで情報量としては個人が多い)もあり国家レベルのリスクには対応しきれないのです。
1. 公的年金の状況
厚生労働省は、年末時点での保険状況や財政状態を毎年発表しています。平成29年3月に平成27年度の全体の状況を、平成28年8月に平成27年度の収支決算を発表しています。
平成22年から27年度の発表資料から図1、2、また資料を元に加工した表を示します。
(1) 被保険者数
・ H27年度の公的年金被保険者数は6,712万人で毎年少しずつ減少しています。
・ 国民年金第1号被保険者数は 1,668万人、第3号被保険者数は915万人で共に減少傾向です。
・ 厚生年金被保険者数(第1~4号)は4,129万人(内第1号3,686万人、第2~4号443万人)で増加傾向にあります。
公的年金被保険者数
(2) 公的年金受給者数
・ H27年度の公的年金受給者数(延人数)は7,158万人で増加傾向。
・ 重複のない公的年金の実受給権者数は4,025万人で増加傾向。
・ 国民年金受給者は3,323万人、厚生年金保険(第1号)受給者数は3,370万人。
2. 財政状況 収支と積立金
公的年金財政は、年金特別会計(国民年金勘定 厚生年金勘定)でまかなわれ、
収入は
・ 国庫負担金
・ 積立金運用
支出は
国民年金勘定
収入
・ 国民年金保険料
・ 国庫負担金
・ 積立金運用収入
支出
・ 基礎年金拠出金等
厚生年金勘定
収入
・ 厚生年金保険料
・ 国庫負担金
・ 積立金運用収入
支出
・ 厚生年金給付
・ 基礎年金拠出金
平成27年度支出は被保険者一元化と年金受給者増で約3兆円増加、その分、積立金が減少しています。
厚生年金から基礎年金へ16兆円規模の勘定編入をしているので、表では考慮しています。
「公的年金」が100年もつシナリオは可能なのか…
公的年金では、国庫負担分がありそのほとんどは赤字国債や消費税がその財源となっています。
団塊世代の受給で、受給者は増加の一途をたどり政府の赤字国債が増えるのと同時に積立金が減っていく構図で、このままの状態では100年持つシナリオ通りにはならない可能性があります。
年金制度が始まった当初の1975年時点
老人世代1人を労働世代7.5人がささえていました。
単純化すると、労働世代が1万/月保険料を払えば老人世代が7.5万円年の給付を受けることができるということです。
1990年
5.1人で1人をささえます。
2010年
2.6人で1人ささえます。
2050年
1.2人で1人をささえる可能性があります。
5年毎の「財政検証」
厚生労働省による財政検証は、5年毎に行う事が義務付けられています。
2016年の財政検証では
・ マクロ経済スライド
・ 物価上昇率
・ 賃金上昇率
などの指標でA~Hまでの条件設定で検証が行われています。
しかし、条件設定がかなり楽観的で多く現状にあっていないとの指摘がなされています。(執筆者:淺井 敏次)