国の財政悪化の影響が自治体の地方債に…
国際フィナンシャルコンサルタントの荒川雄一です。日頃、あまり注目されることが少ない自治体の地方債ですが、ここでも、国の財政悪化の影響が出ています。
自治体の赤字地方債は、「臨時財政対策債(臨財債)」と呼ばれています。
臨財債は、今年度までは3年連続で減少していましたが、総務省によれば、2017年度は増加に転じる見通しとなっています。
今年の地方の予算をまとめた地方財政計画に比べ、試算額が9,000億円増加する見通しだからです。
地方自治体の財政は、行政サービスを行うために必要な費用を算定したうえで、地方税収などの基礎財政収入額を引いて、不足分を補うために、通常、国から「地方交付税」が交付されます。
ただ、昨今、高齢化の進展で、地方の行政サービスは増加傾向にあり、国からの交付税額がなかなか確保できない状況となってきました。
そこで、国は、苦肉の策として、「交付税であとから元利償還金を全額補てんするので、とりあえず、自治体が借金して財源を確保してくれ」という制度を作ったのです。
それが「臨財債」というわけです。
「肩代わり債券」は国の臨時措置
この「国の肩代わり債券」は、2001年に3年間の臨時措置として発行されました。
しかし事実上は、毎年恒常化しているのが実態です。
臨財債には、財源不足分を国と半分ずつ負担する「折半対象」の臨財債と、過去の臨財債を償還するために発行する2つのタイプがあります。
2017年度の試算では、「折半対象」が6,000億円、「償還分」が3,000億円、それぞれ増加する見通しとなっています。
要は、毎年の交付税の不足分を新規に発行するとともに、過去の臨財債の償還(借り換え)のために発行しているため、地方自治体の借金も、増えることはあっても減ることはない状況です。
そして、全国の自治体が発行する臨財債は、2016年度の残高見込みで、約51兆7,000億円にも上ります。
表面上は、自治体の借金ですが、ある意味、「国の隠れ借金」ということができます。
国の肩代わりとはいえ、各自治体の財政が悪化すれば、「地方財政破綻」、「行政サービスの劣化」といった事態も想定されます。
より、個人には、生活に密着した問題といえるのです。(執筆者:荒川 雄一)