確定申告ってどんな手続き?
平成29年2月16日(木)から平成28年分の確定申告が始まっています。
確定申告とは前年1月から12月までの総収入から社会保険料などを引いて所得を計算し、所得に税率をかけて所得税を計算し、源泉徴収された税金や予定納税額などがある場合には過不足を精算する手続です。
会社員だと医療費が多くかかったときや住宅ローンを受け始めのときに確定申告をする印象が強いでしょう。
主に会社員(給与所得者)用のが確定申告書Aで主に自営業者(事業所得者)が使うのが確定申告書Bです。
証券関係の所得は給与所得や事業所得とは別に計算します。
収入と所得
収入とは会社から入ってきた金額そのままをいい、所得は収入から給与所得控除や青色申告控除など必要な差し引きを行ってからの金額になります。
年末調整や確定申告、還付申告で基準となるのは「所得」になります。
(a)所得38万年未満の控除対象配偶者
(b)16歳以上の扶養親族
(c)「給与収入」
(d)給与所得控除後の「給与所得」(速算表で確認可)
(e)健保・厚生年金保険料額
(l)年末調整後の所得税
確定申告しなければならない人はどんな人?
会社員は、会社の年末調整で所得税が還付されたり、足りなければ支払ったりしています。
確定申告は、給与以外で年末調整だけでは税金の調整が終わらない人が中心です。いくつか挙げてみます。
1. 自営業などで利益が出た人。
売り上げから必要経費、青色申告(または白色申告)控除等を引いて事業所得が出たら、確定申告書Bで確定申告手続きしましょう。
2. 公的年金が年400万円超の人。
公的年金からは公的年金控除を引いた金額を雑所得として計算します。所得税がかかるのは国民年金・厚生年金・共済年金・会社からの老齢年金(外国の社会保険に基づくものを含む)です。
遺族年金や障害年金は非課税です。
3. 給与収入が2,000万円を超える人。
年収2000万円以上だと会社で年末調整をすることができないので確定申告を行います。申告書A,B両方使えます。
平成25年から給与所得控除は縮小され、平成28年分は上限が230万円です。下表で年収から給与所得控除を引いた後の「給与所得」がわかります。
4. 給与や公的年金以外で20万円を超える所得がある人。
生命保険の満期一時金なら一時所得、所得補償保険の保険金は雑所得、副業で事業所得がある場合など20万円以上の所得があれば確定申告します。申告書Bを使います。
5. 給与を2か所以上からもらっている人。
平成28年の源泉徴収票は会社分の2枚が必要です。その他の所得(あれば)も合わせて所得20万円以上あれば確定申告します。
給与収入は合算して給与所得を計算します(合算後の給与収入から上記速算表で給与所得を確認)。
6. 同族会社の役員や親族で、給与のほかに貸付金の利子や土地建物の賃貸料などを受け取っている人。
貸付金利子や土地建物の賃貸料が20万円未満でも確定申告義務があります。
7. 株の売買などで売却損が出たのに、特定口座の売却益から所得税が源泉徴収されている人。
証券関係の税金は確定申告書Bを使い、事業所得や給与所得などとは別に課税されます。
同じ1年間の売却損と売却益は差し引きしてから所得税を計算するので、損益通算前の源泉所得税から損益通算後の所得税を差し引いた額が還付されるでしょう。
同年に売却益から引ききれなかった売却損も翌年以降3年間繰り越すことができます。繰り越すための手続きが必要ですので、税理士や税務署に相談しましょう。
2月中旬から3月中旬に行う確定申告、手続きし忘れにご注意を!
税金を払わなければならないのに確定申告をし忘れると「期限後申告」という扱いになり、確定申告等によって納める税金のほかに無申告加算税が課されます。
平成28年分確定申告分の無申告加算税率は
・税務署調査を受ける前に自主的に期限後申告すれば5%
・税務署調査の事前通知を受けてから期限後申告なら10%
・税務署調査通知を受けても 期限後申告しなければ、50万円までは10%、50万円を超える部分は15%。
・平成27年分以前の期限後申告は税額50万円までは15%、50万円超の部分は20%。
また、住宅ローン控除のように税金が戻ってくることが多いケースで期限内に確定申告しなかったときは、「更生の請求」の手続きを行いますので、住所地の税務署に相談しましょう。
義務はないけれど確定申告(また還付申告)すると得する可能性が高い人。
確定申告を「しなければならない」わけではないのですが、確定(還付)申告すると所得税が還付される可能性が高い人もいますので、次に挙げてみます。
1. 会社員で仕事に関する資格など勉強に費用や転勤の転居費用、単身赴任中の帰宅旅費等を費やした人。
給与所得者の特定支出控除として、職務に関する資格取得費や技術・知識を受ける研修費用などは確定申告することができます。申告書Aを使います。
2. 医療費の自己負担が10万円(または所得金額5%)以上かかった人
病院での診察代、薬代、風邪などを治すための市販薬も入れられるのでレシートや領収書を添付して確定申告しましょう。
3. 地震など自然災害や盗難などで被害を被った時
本人またはその年の総所得等が38万円以下の生計同一の配偶者や親族の資産が自然災害、火災、盗難、害虫被害などで損害を受けた場合、雑損控除が使えます。
雑損控除は、「損害金額マイナス所得の10分の1」「災害関連支出マイナス5万円」どちらか多い額です。
4. 自営業で収益がでない(または損失がでた)など税金を多く払い過ぎた人
青色申告の届け出をしてあれば、損失の翌年控除が3年使えますが「純損失の繰り戻しによる所得税の還付請求書」の提出が確定申告ととも必要です。
事業で受け取る報酬は10%の所得税が差し引かれて入金されていることが多いのです。
例えば事業収入から青色申告控除65万円、基礎控除、生命保険料控除、社会保険料控除などを引くと税率5%の所得だったとします。その場合、確定申告をすると差額5%分の源泉所得税が還付されます。
5. 派遣などで交通費込のお給料をもらっている場合。
給与所得者の特定支出控除として通勤費が認められます。毎月交通費込の給料に対して所得税が差し引かれているなら、確定申告をすれば交通費総額×所得税率分の所得税が還付されるでしょう。
6. 年末に扶養家族が増えた場合。
年末調整が終わった後に平成28年12月までに子供や控除対象配偶者ができたり、扶養家族が増えたら確定申告しておきましょう。
7. 住宅ローンを組んで、家を購入した最初の年。
住宅の床面積が50㎡以上(1/2以上の部分を自己の居住用)の新築住宅、または築20年(マンションなど耐火建築物25年)以下の中古住宅を10年以上1000万円以上の住宅ローンを組んで購入した最初の年等は確定申告が必要です。
8. 住宅ローン控除の控除表を入れる
確定申告と還付申告
「確定申告しなければならない」のにしなかった場合、また「計算を間違えた」など、「修正」が必要なときは、1年以内に「修正申告」しなくてはなりません。
1カ所から給与をもらっている人の医療費控除や住宅ローン控除、寄付金控除等の手続きのように還付申告なら2月中旬から3月中旬と言わず、他の時期でも手続きができます。
平成28年分については、平成29年1月1日から平成33年12月31日までの5年間申告することができます。また、還付申告は漏れても追徴課税の心配はいりません。
収入が給与所得1カ所の方は、還付申告である可能性が高いので税務署が込み合う時期を避けて手続きすることもできます。(執筆者:拝野 洋子)