割増賃金には、一般的な残業代(時間外労働に対して支払われる割増賃金)と言われるもののほかに、休日労働に対して支払われる割増賃金と、深夜労働に対して支払われる割増賃金があります。
休日労働の割増賃金について、勘違いをされている方も多く休日労働に対する割増賃金について解説をしたいと思います。
割増賃金の種類
労働基準法では、原則として1日8時間、1週40時間を法定労働時間と定めています。
(一定の小規模事業所にあっては、特例として週法定労働時間を44時間と定めています。また、変形労働時間制など特殊な場合は異なります。)
そして、それを超えた場合は、割増賃金の支払いが必要となります。
しかし、労働基準法では原則として、法定労働時間を超えて労働(残業)をさせることを禁止しています。
ただ、会社は過半数労働組合(過半数労働組合がない場合は過半数代表者)と労使協定を締結し、労働基準監督署に届出た場合は、法定労働時間を超えて労働(残業)させることができます。(これを「時間外労働」といいます。)
時間外労働には限度が定められており、原則として1か月45時間、1年360時間を超えないようになっています。
割増賃金にはこの「時間外労働」に対するもののほか、「休日労働」に対するものと「深夜労働」に対するものがあります。
割増賃金率
割増賃金率は以下のようになっています。
「休日労働」:割増率 35%以上
「深夜労働(22時から翌5時まで)」:割増率 25%以上
また、法定労働時間を超えた「時間外労働」をしている時に、22時を超えた(深夜労働)場合は、「時間外労働」25%以上 +「深夜労働」25%以上 となり、合算され割増率は50%以上となります。
休日の種類は2種類あります
現在、働いている職場では「休日」と言えば、会社カレンダーなどですべて休日とされていると思います。
しかし、労働基準法上では、休日は「法定休日」と「法定外休日」の2種類があります。
(1)「法定休日」とは
労働基準法においては、原則として週1日又は4週に4日以上の休日を与えなければいけません。このように労働者の方に、最低限与えなければならない休日を「法定休日」と言います。
週1日(例えば日曜日)又は4週に4日の休日は、法定休日となります。逆に言えば、「法定休日」は原則として週1回のみと考えてよいでしょう。
(2) 「法定外休日」とは
労働基準法が定めている「法定休日」を上回る休日部分が「法定外休日」となります。
多くの会社が週休2日制だと思いますが、この週休2日制の中には、「法定休日」部分と「法定外休日」部分があるということになります。
「法定休日」は、就業規則などで定められていると思いますので確認をしてみると良いでしょう。
それぞれの休日の割増率は?
休日といっても「法定休日」と「法定外休日」の2種類ある話をさせていただきましたが、それでは割増賃金率はどうなるのでしょうか。
(1)「法定休日」の割増率
「法定休日」に働いた場合は、労働基準法で定めている「休日労働」となり休日労働の割増率(35%以上)となります。
(2) 「法定外休日」の割増率
「法定外休日」に働いた場合は、労働基準法で定めている「休日労働」にあたらず特に定めがないため休日労働の割増率(35%以上)の適用は受けません。
このことから、「法定外休日」の働いた時間については、原則として、通常に支払われる賃金でよいことになります。
しかしながら、「法定外休日」には、「時間外労働」の概念は適用されることになり、「法定外休日」の働いた時間が、1日8時間、週40時間を超える場合は、「時間外労働」となり時間外労働に対する割増賃金(25%以上)となります。
1日の所定労働時間が、午前9時から午後6時(休憩1時間)の8時間労働の会社
(1) 月曜日から金曜日まで40時間働き、土曜日に出勤し8時間働いた場合
→土曜日は「法定休日」ではないので「休日労働(割増率35%以上)」とはなりません。
しかし、1週40時間を超えているので、「時間外労働」となり、「時間外労働(割増率25%以上)となります。
(2) 月曜日から金曜日まで40時間働き、土曜日は休み、日曜日に出勤し8時間働いた場合
→日曜日は「法定休日」であるため「休日労働(割増率35%以上)」となります。
このように、休日により割増賃金率が違いますが、就業規則などにより「法定外休日」にも「休日労働」と同じの割増賃金を支払うことを規定し、支払うことは構いません。(執筆者:高橋 豊)