8年ぶりの減産合意で
OPEC総会で2008年以来8年ぶりの減産合意となりました。非OPECのロシアも減産に応じるようで、原油価格は上昇しました。
加盟国の減産規模をめぐり対立していましたが、OPECの盟主サウジアラビアが決裂回避のため最終局面で譲歩し、減産に合意しました。
OPEC全体の生産量を10月の約3,364万バレルを基準にし、日量120万バレル程度を減産します。
9月の臨時総会では生産量の上限を日量計3,250万~3,300万バレルとすることで合意していましたが、この日の決定によってこの合意は達成される見通しとなりました。
OPECの協調減産には、ロシアなどの非OPEC産油国も協力する構えのようです。
産油国の財政状態は疲弊している
それだけ産油国の財政状態が、ここのところの原油安で、相当疲弊していることが予想されます。
減産は来年1月からで、実施期間は6か月とし、延長も検討するようです。
原油価格は、OPEC総会を境に上昇し、米長期金利も上昇しました。
世界景気減速により、1バレル100ドルを超えていた原油価格は50ドルを下回る展開が続いていました。
原油価格が上昇してくることで、投資家はリスク・オンの流れに傾きだすことになりそうです。
原油価格決定メカニズム、需給バランス
原油価格は需給、需要と供給のバランスで決まります。原油を供給する側が供給の蛇口を緩めるか閉めるかで、原油価格は決まります。
今回のOPECの減産は、まさに、蛇口を閉めることになります。
原油の需要は、景気と大きな関係があります。景気が良くなれば、産業活動が盛んとなり、原油消費量が増え、原油を買う動きが出てきます。当然、需要も伸びますね。
中国経済の状況が、原油市場にも影響を及ぼす
今では、世界景気に大きな影響を与えるのが中国景気です。中国経済の状況が、原油市場にも影響を及ぼすと言えます。
リーマンショック後、世界経済は大きく減速し、景気減速により、需要側の原油ニーズは細り、原油価格は下落しました。
1バレル100ドルを超えていたものが50ドルを割り切るまで下落しました。
ここまで大きく下落したのは、景気減速による需要側の事情に加え、供給側が蛇口を閉めなかったことにもよります。
シェールオイルの登場で、今までの産油国であるOPEC側が、世界のシェア維持のために、需要側の原油ニーズが細っているにもかかわらず、蛇口を閉めなかったのです。
今回のOPECによる減産合意は、原油価格長期低迷により各国の財政が持たなくなったことによります。さすがに耐えられなくなったのですね。
原油価格が上昇するとどうなるのでしょう。
原油価格が上がると、モノの値段は上がりやすくなります。物価高が連想され、インフレをイメージされやすくなりますから、金利は低下し、株価は上がりやすくなります。
ただ、原油価格とドルは負の相関関係にあります。ドル高で原油安、ドル安で原油高という関係です。ドルと金価格との関係に似ていますね。
原油価格が上がれば、株価が上がりやすくなります。リスク・オンが意識されるのです。逆に原油価格低迷は、リスク・オフが付きまとうわけです。
原油価格が上がることによりモノの値段が上がることのほうが懸念される
しかし今回は、供給側の事情で蛇口を閉めることによる価格上昇で、需要の伸びが牽引しているわけではありません。
それゆえ、原油価格が上昇したからと言って、リスク・オンのムードが大きく高まるとは限らず、むしろ、原油価格が上がることによりモノの値段が上がることのほうが懸念されるのかもしれませんね。
また、原油価格が上がると、原油生産会社の財務も改善されます。
いままで止まっていたシェールオイルの会社が稼働しだすと、OPEC側が蛇口を閉めても、原油価格は大きくは上昇しないことが考えられます。
まさに需給のバランスです。
限定的である原油価格の上値
つまり、原油価格の上値は限定的であることが予想されます。
原油価格が上がると、生産過程におけるコストが上がります。燃料費が上がり、輸送コストが上がります。
ガソリン価格が上がることは、容易に想像できますね。暖房にも影響があるかもしれません。
日銀にとっては、物価目標を実現しやすくなります。黒田総裁にとっては、トランプ様様であり、OPEC様様なのでしょう。
インフレとは物価が上がることです。
私たち庶民にとっては、マーケットのことはともかく、原油価格が安く、円高で、デフレのほうが、生活がしやすいのでしょうけどね。(執筆者:原 彰宏)