『週刊税務通信』という専門雑誌にネット販売の副業を確定申告していない記事が掲載されていました。概要は次の通りです。
・ 国税当局の内部資料などからネット販売で多額の儲けがある情報を入手する
・ 本人は勤務先からの給与だけが収入源と主張する
・ 国税当局は本人の口座を調べて多額の入金があることを確認する
・ 本人がネット販売の入金ではないと偽装したことが明らかになる
結果的に重加算税を含む追徴課税は5年分で約1,500万円です。重加算税とは国税当局が脱税と判断したことを意味します。
「副業の確定申告が不要なのは所得金額が20万円以下である」
上記のネット販売の副業のケースから、単発で出版などの副収入を得たサラリーマンの中には確定申告をしなければいけないと思われるかもしれません。
しかし現実は違います。所得税法第121条で、次の条件を満たせば確定申告は不要だと定められています。
確定申告が不要になる条件
・ おもな収入源が会社からの給与であること
・ 給与の年収が2,000万円以下であること
・ 副業の所得金額(「所得金額」 =「総収入金額」-「必要経費」)が20万円以下であること
「総収入金額」… 副業で得た収入
「必要経費」… 副業で収入を得るために必要な費用
この確定申告を不要にするための肝は、いかに必要経費を計上するのかがポイントといえます。総収入金額は既に確定しているからです。
「必要経費を計上するための勘どころ」
それでは、どう必要経費に計上すればよいのでしょうか。
1. 必要経費になりそうな項目を拾い出すこと
・ 地代家賃(自宅、月極駐車場、レンタルオフィスなど)
・ 水道光熱費(電気代)
・ 通信費(電話、携帯電話、インターネット接続代など)
・ パソコン代
・ 文房具やコピー用紙などの消耗品
・ 移動するための交通費・ガソリン代
・ マイカー・建物などの購入代金が10万円以上の固定資産を副業に使用した場合の減価償却費
減価償却とは
税法で定めた固定資産の使用可能期間(法定耐用年数)により、複数年に分割して必要経費に落とす方法です。たとえば、120万円のマイカーで法定耐用年数が6年の場合、減価償却費は次の通りになります。
2. 事業割合を算出すること
自宅をオフィス代わりに使用した場合
水道光熱費のように副業とプライベート用に明確に分けられない費用に対して、事業割合分だけが必要経費に落とせます。
事業割合については、項目によってケースバイケースです。1度、最寄りの税務署の個人課税部門に相談することをオススメします。担当官から見解を聞くことができるでしょう。
このようにサラリーマンが確定申告する必要のない条件は副業で得た収入が20万円以下ではなく、あくまでも必要経費を差し引いた所得金額です。
所得金額が20万円以下でも住民税の申告は必要である
この特例制度は所得税法だけであり、住民税には当てはまりません。
つまり、税務署に対する確定申告が免除されても、市区町村の課税課には申告する義務があります。注意しましょう。(執筆者:阿部 正仁)