

秋の彼岸に実家へ戻ると、親の暮らしぶりが目に入ります。近くに住む子が病院の付き添いや通帳の管理を引き受けている家は珍しくありません。その負担は、相続のときに取り戻せるのでしょうか。民法には寄与分という仕組みがありますが、言える人も、言える期限も決まっています。相続が起きてからではなく、いま確かめておきましょう。
母を介護した子が、遺産分割の席で言えなかったこと
「10年近く一緒に暮らして、通院も入退院の手続も全部やってきました」。実家で母と同居していた50代の子は、遺産分割の話し合いでそう切り出せずに終わりました。離れて暮らす兄弟から、同居していたのだから当然だと受け取られるのが分かっていたためです。
介護の負担は数字に残りません。だからこそ、どういう場合に法律が寄与として認めるのかを先に知っておく価値があります。
言えるのは相続人か、そうでないかで分かれる
民法は、被相続人の事業に関する労務の提供や財産上の給付、療養看護その他の方法で、被相続人の財産の維持または増加について特別の寄与をした共同相続人に、寄与分を認めています。まず相続人の協議で決め、協議が調わないときや協議ができないときは、家庭裁判所が寄与の時期、方法、程度、相続財産の額その他一切の事情を考慮して定めます。
相続人ではない親族には、別の入口があります。

特別寄与料は相続人に対して金銭を請求するもので、対象は無償の労務の提供に限られます。財産を出しただけでは当てはまりません。
10年を過ぎると、そもそも土俵に乗らない
見落とされやすいのが期限です。相続開始の時から10年を経過した後にする遺産の分割には、寄与分と特別受益の規定は適用されません。遺言で指定がなければ法定相続分で分けることになります。
例外は二つです。10年を経過する前に相続人が家庭裁判所へ遺産分割を請求したとき、そして10年の期間の満了前6か月以内に請求できないやむを得ない事由があり、その事由が消滅してから6か月を経過する前に請求したときです。
ただし、相続人全員が具体的相続分で分けることに合意すれば、10年を過ぎても従来どおりの分け方はできます。
この規定は令和5年4月1日に施行され、施行日前に始まった相続にも及びます。ただし経過措置があり、法務省の解説では令和10年3月31日の経過時が基準になる類型が示されています。古い相続を抱えたままの家は、残り時間が限られています。
話し合いのうちに形にする
寄与分は、家庭裁判所でも単独では扱われません。調停が不成立になると審判に移りますが、遺産分割審判の申立てをしないと不適法として却下されます。申立てには申立人1人につき収入印紙1,200円分と連絡用の郵便切手が必要で、申立人以外の共同相続人全員が相手方になります。裁判所へ持ち込むほど、家族の関係は固くなります。介護の記録や立て替えた費用の領収書を残し、元気なうちに家族で話しておいてください。
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