

定年の日が近づくと、この先も同じ職場にいられるのかが急に気になります。高年齢者雇用安定法は、65歳までの雇用確保を会社の義務とし、70歳までの就業確保は努力義務として、求める重さを分けています。どちらの線の内側にいるかで、打てる手は変わります。定年後の働き方は、会社まかせで決まるものではありません。
定年の日を境に嘱託へ移った女性のとまどい
「このまま、いつまで働けるのでしょうか。」定年の日に花束を受け取り、翌週から嘱託で同じ職場に戻った女性は、契約書の期間の欄を見てそうつぶやきました。仕事の中身も席も前と変わりません。それでも契約は一年ごとで、次の更新があるとは書かれていません。落ち着かなさの正体は、会社がどこまで引き受ける決まりなのかを知らない点です。
65歳までは義務、その先は努力義務
境目を決めるのは高年齢者雇用安定法です。9条は、65歳未満の定年を定めている会社に、高年齢者雇用確保措置のいずれかを講じなければならないと定めています。どれを選ぶかは会社が決めます。継続雇用制度は、定年を迎えた人が希望したときにその定年後も引き続いて雇用する仕組みで、定年を延ばす場合と違っていったん区切りが入ります。
継続雇用制度では、労使協定で対象者を限る基準を定めていた会社の経過措置が令和7年3月31日で終わりました。令和7年度からは、希望者全員の65歳までの雇用確保が全面的に義務付けられています。
65歳から先は求められ方が変わります。10条の2は、65歳以上70歳未満の定年を定めている会社や、65歳までの継続雇用制度を導入している会社に、65歳から70歳までの就業機会を確保するよう努めなければならないとしています。努力義務なので、どこまで用意するかは会社ごとの判断です。

会社側の報告と働く人側の調査は、別ものとして読む
公的な数字は二とおりあります。会社が国へ出す報告と、働く人に尋ねる調査で、対象も分母も違うので並べて比べられません。
厚生労働省の令和7年高年齢者雇用状況等報告は、常時雇用する労働者が21人以上の企業237,739社の報告をまとめたものです。令和7年6月1日時点で、努力義務である70歳までの就業確保措置を実施済みの企業は34.8%でした。65歳までの雇用確保措置のほうは、実施済みの企業のうち継続雇用制度の導入が最も多くなっています。
働く人側は総務省の令和4年就業構造基本調査です。2022年10月1日現在で、女性の有業率は53.2%でした。有業率は15歳以上の人口に占める有業者の割合で、年齢を区切らない女性全体の数字です。同じ調査には年齢階級別の有業率も載っています。自分の年代の欄を見れば、いまの位置がつかめます。
定年の前に、就業規則と相談先を確かめておく
自分の会社がどの措置を選んでいるかは、就業規則に書いてあります。定年の日を待たず、継続雇用の契約期間や更新の決め方を人事に確かめておけば、条件を聞いてから考える時間が持てます。外に目を向けるなら、ハローワークの生涯現役支援窓口があります。概ね60歳以上の求職者が対象で、在職中でも相談できます。
家の名義変更は自分でも申請できる。ただし売主と買主がそろわないと登記は通らない
