

結婚しておらず、自分に何かあったら財産はどこへ行くのか。この記事は、配偶者も子もいない人に絞って、誰が受け取り、誰もいなければどうなるのかを条文で確かめます。渡したい相手がいるなら、遺言を書くまでが備えです。
両親を亡くし、兄だけが残った50代独身の人の心配
「結婚はしていないし、子どももいません。両親はもう亡くなっていて、いるのは兄だけ。自分に何かあったら、預金や家は誰のものになるんでしょうか」。50代の独身の会社員で、兄とは離れて暮らし、財産の話はしていません。
民法の順位は、子(887条1項)、次に直系尊属、その次が兄弟姉妹です(889条1項)。この人の財産を受け取るのは兄です。

兄が先に亡くなっていれば甥姪へ。甥姪の子までは行かない
気になるのが、兄が先に亡くなっていた場合です。その子である甥や姪が代わりに相続人になります(889条2項)。ただし準用されるのは887条2項だけで、再代襲の定め(887条3項)は含まれず、甥姪の子には移りません。離婚歴があって子がいる人は、独身でも子が相続人です(887条1項)。兄弟姉妹や甥姪が受け取ると、相続税がかかる場合は税額に2割が加算されます(相続税法18条)。
相続人が誰もいなければ、家庭裁判所の手続きを経て国庫へ
兄も甥姪もいない人はどうなるのでしょう。相続人がいるか明らかでないときは、利害関係人か検察官の請求で、亡くなった人の最後の住所地の家庭裁判所が相続財産清算人を選任し、相続人がいるなら名乗り出るよう公告します。この期間は6か月を下らないとされています(952条)。
その期間に相続人が現れなければ、次が特別縁故者です。亡くなった人と生計を同じくしていた人、療養看護に努めた人、その他特別の縁故があった人が請求し、家庭裁判所が相当と認めた場合に、清算後に残った財産の全部または一部が分与されることがあります(958条の2)。請求は公告の期間が満了してから3か月以内で、それでも残った財産は国庫に帰属します(959条)。
渡したい相手がいるなら遺言。兄弟姉妹が相続人なら遺留分の請求はない
兄ではなく世話になった人や団体に残したいなら、遺言で決めておく方法があります。遺言では相続人以外にも財産を渡せます(964条)。遺留分を持つのは兄弟姉妹以外の相続人なので(1042条)、相続人が兄弟姉妹だけの人は、遺言で別の相手に渡すと決めても、兄弟姉妹から遺留分の請求はありません。父母や祖父母などの直系尊属が相続人になる場合は、直系尊属に遺留分があります。
公正証書遺言なら、証人の立会いのもと公証人に遺言の内容を伝えて作り(969条)、原本は公証役場(電磁的記録で作成された原本の場合は日本公証人連合会が運営するシステム)に保管されます。作成には相続人との続柄が分かる戸籍謄本や除籍謄本が要り、相続人を戸籍で確かめる作業が第一歩です。
相続人を戸籍で確かめ、渡したい相手を決めるところから
配偶者も子もいない人の財産は父母や祖父母などの直系尊属、次に兄弟姉妹か甥姪へ渡り、誰もいなければ国庫に入ります。まずは相続人を戸籍で確かめ、その相手でよいのかを決めておきましょう。渡したい相手がいるなら、公証役場に相談して遺言の形にしておくと、行き先を自分で決められます。
