
SNSで誰もが自由に発信できる現代では、お店や企業、個人に対する不満や批判を投稿するのは日常的なことかもしれません。しかし、安易な投稿が名誉毀損などの法的問題になる可能性もあるため、SNSの利用にあたっては十分な法律知識を備えておきたいところです。
この記事では、SNSでの発言に関する法律上の取り扱いや対処法を、弁護士が解説します。

名誉毀損とは
SNSで投稿される批判的な表現は、名誉毀損の問題になることが非常に多く見られます。法律的には、以下の条件を満たした場合に名誉毀損に当たるとされています。
・不特定多数の人に対して発信すること
・具体的な事実を発信すること
・特定の人の社会的評価を下げること
SNSは、不特定多数の人に対して発信することが通常であるため、具体的な事実を発信し、特定の人の社会からの評価を低下させれば、名誉毀損に当たる可能性があります。
名誉毀損の境界線と具体例

SNSで悪口を投稿した場合、名誉毀損の境界線として最も重要なポイントは、具体的な事実が指摘されているかどうか、という点になりやすいです。単なる感想や感情のみでなく、起きた出来事や人の行動など、事実を指摘している場合には、内容が相手の社会的評価を下げる限り、名誉毀損に当たる可能性が高くなります。
具体例としては、以下のようなものが考えられます。
「(飲食店)でゴキブリを見た。二度と行かない」
飲食店に不衛生な印象を与えて社会的評価を下げる事実
「(病院)の診察が雑で、しかも誤診だった」
医師の信用や専門性に疑問を抱かせる事実
「(不動産会社)の担当者が、説明しないまま無理矢理契約させようとした」
企業の信頼や業務内容にマイナスイメージが生じやすい事実
一方、「感じが悪い」「対応が最悪だった」「むかつく」など、具体的な事実を指摘せず感想や気持ちだけを発信する場合には、名誉毀損には該当しません。
名誉棄損に当たらない例外的なケース
具体的な事実を発信して相手の社会的な評価を低下させた場合、その投稿は名誉毀損に当たることが通常ですが、例外的に名誉棄損に当たらないケースもあり得ます。それは、以下の条件を満たす場合です。
・公共の利害に関する発信であること
・公共のために発信したこと
・発信内容が事実であること
具体例としては、悪質な詐欺やぼったくりなどに遭遇した場合、その内容を広く発信することで他の被害者が生まれないようにするケースなどが挙げられます。この場合、犯罪被害者をなくすという公共の利益のために真実を発信しているため、名誉棄損に当たらない条件を満たすことになるでしょう。
名誉毀損以外の法的問題
具体的な事実を指摘しない発信は、名誉毀損には該当しません。しかし、犯罪行為や違法行為に当たり、損害賠償を請求される可能性も否定できない点には注意することが望ましいでしょう。
具体的には、以下のような法的問題があり得ます。
侮辱罪
具体的な事実を指摘しなくても、相手の社会的評価を下げる発信をした場合、侮辱罪という犯罪に当たる可能性があります。
侮辱罪は、インターネット上での悪質な発信への対策の一環として令和4年に厳罰化されてもおり、SNS上のやり取りについて問題になりやすい犯罪類型です。
業務妨害罪
SNSでの発信が、相手の営業に対する妨害に当たる場合には、業務妨害罪が成立する可能性もあります。悪質な不買運動や抗議活動、警察への通報を促す発信など、業務への具体的な支障が生じる投稿については問題になり得るでしょう。
プライバシーの侵害
投稿の中で相手の個人情報を暴露したり、勝手に写真を載せたりした場合には、プライバシー権の侵害となる可能性があり得ます。直ちに犯罪となる可能性は低いですが、相手の精神的苦痛などに対して損害賠償を支払う義務が生じるケースも考えられます。
最後に
SNSは誰でも気軽に意見を発信できる便利なツールですが、その一方、書き方一つで名誉毀損に当たる可能性もあります。また、不満や怒りの感情を表現したいときもありますが、その怒りや不満が正当なものであっても、伝え方を間違えると侮辱罪や業務妨害罪、プライバシー侵害など、様々な法的問題に発展するリスクも否定できません。
SNSが広く浸透した現在だからこそ、正しいリテラシーを持って付き合うことがとても重要になるでしょう。