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マイナ保険証(健康保険証の利用登録を済ませたマイナンバーカード)に原則一本化するため、政府は2024年12月2日に健康保険証を廃止しました。
ただ廃止といっても新規発行や再発行が停止されただけなので、廃止日から最長1年の経過措置期間が終了するまでは、発行済みの健康保険証を使っても良いのです。
またマイナンバーカードを取得していなかったり、利用登録を済ませていなかったりして、マイナ保険証を使えない方には、健康保険証と同じように使える資格確認書が交付されます。
資格確認書は経過措置期間の終了までに交付される予定ですが、例えば廃止日の直後に健康保険証を紛失した場合、そのタイミングで手続きすると交付されます。
このように現状では健康保険証や資格確認書も使えるため、マイナ保険証の利用率は低迷し、2024年11月時点で18.52%に過ぎなかったのです。
しかし福岡資麿厚生労働大臣の発表によると、廃止日から1週間のマイナ保険証の利用率は、28.29%まで上昇したようです。
2025年前半・中盤にかけてマイナ保険証は、更に普及していくと推測されますが、次のような理由により後半になると、再び低迷する可能性があるのです。
2種類の電子証明書の用途と相違点
不要という申し出がないかぎり、マイナンバーカードの裏面にあるICチップには、利用者証明用電子証明書と署名用電子証明書という2種類の電子証明書が搭載されます。
前者の利用者証明用電子証明書はマイナポータルへのログイン、コンビニの端末での各種証明書の交付、医療機関での受付などの際に利用します。
例えば医療機関での受付で利用する時は、顔認証付きカードリーダーにマイナ保険証をセットしてから、利用者証明用電子証明書の暗証番号(4桁の数字)を入力します。
ただ暗証番号を覚えていない方もいるので、顔認証付きカードリーダーが撮影した顔写真と、IC チップから読み取った顔写真のデータを照合するという方法もあります。
いずれかの方法で利用者証明用電子証明書を用いた本人確認が完了すると医療機関は、患者の医療費の負担割合などがわかる資格情報を、オンラインで取得するのです。
一方で後者の署名用電子証明書はオンラインでの確定申告、パスポートの更新、転出届の提出、転入届(転居届)を提出するための来庁予約などの際に利用します。
こちらの暗証番号は6~16桁の英数字になるため、利用者証明用電子証明書の暗証番号よりも複雑になります。
また引っ越しや結婚で住所や氏名が変わった場合、利用者証明用電子証明書は引き続き使えますが、署名用電子証明書は失効するため、市区町村役場で再発行する必要があります。
マイナ保険証の追い風になる2025年春の改正点
マイナポータルから手続きすると、マイナンバーカードの電子証明書をスマホに搭載できる、スマホ用電子証明書搭載サービスが2023年5月に開始されました。
利用できるサービスは順次拡大しており、2025年春頃には電子証明書が搭載されたスマホを医療機関に持っていけば、1~3割の自己負担で診療を受けられる予定です。
またスマホ用電子証明書搭載サービスを利用できるのは、現在はAndroidだけになりますが、2025年春頃にはiPhoneにも対応する予定です。
両者の改正が予定通りに実現した場合、2025年前半にマイナ保険証は更に普及するかもしれません。
その理由としてマイナンバーカードの紛失を心配して、外に持ち歩きたくないと思っている方が、これをきっかけにしてマイナ保険証を使い始める可能性があるからです。
2025年春(3月24日)になると、運転免許証の情報が記録されたマイナンバーカード、いわゆるマイナ免許証も開始されます。
ただマイナ免許証に一本化するだけでなく、従来の運転免許証を使っても良いし、マイナ免許証と従来の運転免許証を併用しても良いので、選択肢は3つあるのです。
このタイミングでマイナ免許証に一本化し、従来の運転免許証を止めた方は、外出時にマイナンバーカードを携帯するため、マイナ保険証を利用する機会が増えると思います。
国民健康保険などは2025年中盤に経過措置期間が終了する
会社員などが加入する健康保険は、経過措置期間が1年という場合が多いため、原則として2025年12月1日まで健康保険証を使えます。
一方で自営業者などが加入する国民健康保険は、2025年7月~11月頃に経過措置期間が終了するため、ここから健康保険証を使えなくなります。
健康保険証の表面に記載されている有効期限が、経過措置期間が終了する日になるため、健康保険証を見れば具体的な日付がわかると思います。
このタイミングで健康保険証を使えなくなったら、資格確認書を持っている方以外はマイナ保険証を使う必要があるため、2025年中盤にマイナ保険証が普及するのです。
75歳以上の方などが加入する後期高齢者医療は、原則として2025年7月に経過措置期間が終了し、ここからは国民健康保険と同様の取り扱いになります。
ただ高齢者の方は市区町村役場などで申請すると、マイナ保険証を使える方にも資格確認書が交付される制度があるため、必ずしもマイナ保険証を使わなくても良いのです。
マイナ保険証の利用率が再び低迷する理由は電子証明書
マイナンバーカード本体と2種類の電子証明書には、次のような有効期限があるため、更新手続きが必要になります。
【マイナンバーカード本体】
発行日から10回目の誕生日(18歳未満は5回目の誕生日)
【2種類の電子証明書】
年齢を問わず発行日から5回目の誕生日
総務省が作成した資料によると、2025年度に電子証明書の有効期限を迎える方は、約2,768万人 (2024年度は約1,076万人)もいるようです。
政府は新型コロナの感染拡大が始まったばかりの2020年4月に、1人10万円の特別定額給付金を支給すると決めました。
またマイナンバーカードを使ってオンラインで手続きすると、郵送よりも早く振り込まれたので、2020年4月辺りにマイナンバーカードを取得した方が多かったのです。
2025年度に電子証明書の有効期限を迎える方が、前年度より約2.6倍に増える理由のひとつは、ここから5年が経過するからのようです。
有効期限の2~3か月前にはJ-LIS(地方公共団体情報システム機構)から、更新手続きに必要な書類が送付されます。
マイナンバーカード本体の更新手続きは、スマホやパソコン、郵送、街中の証明用写真機などの複数の手段で実施できます。
一方で電子証明書の更新手続きは、本人または代理人が市区町村役場などに足を運び、対面で実施する必要があるため、平日は仕事という方は負担になるのです。
電子証明書の更新手続きを実施しないで、有効期限が属する月の月末から3か月が経過すると、マイナ保険証は使えなくなります。
ただマイナ保険証を使えなくなった方には、申請しなくても資格確認書が交付される予定なので、医療費の自己負担は増えません。
そのため仕事などで電子証明書の更新が難しい方や、マイナ保険証にメリットを感じなかった方は、更新しないで資格確認書に切り替える可能性があります。
総務省の資料や特別定額給付金の支給時期から推測すると、切り替えが始まるのは2025年後半になるため、この辺りからマイナ保険証の利用率は再び低迷すると思うのです。