紀州のドン・ファンもおふたりさま(子供のいない夫婦)の相続でした。
紀州のドン・ファンこと野崎幸助さんには子供がいませんでした。
子供がいない野崎家の場合、配偶者(がいれば)である早貴さんおよび野崎幸助さんの「きょうだい」も法定相続人となります。
本来、第二順位の、直系尊属(両親、祖父母等)が相続人となりますが、幸助さんの場合、直系尊属は、すでにお亡くなりになっているため、第三順位である、きょうだい(きょうだいが既に亡くなっている場合は、おい・めいまで)が相続人となったわけです。
おふたりさまの相続でポイントは、たとえ遺産が夫婦ふたりで築いた財産であっても、残された配偶者が、当然と遺産をすべて取得することはできないのです。
相続人の欠格とは
民法891条にて、相続人が故意に被相続人やほかの相続人を死亡するに至らせ、又は至らせようとしたために、刑に処せられた者は、「相続人の欠格事由」となり、相続人から除かれるとあります。
早貴さんは、「相続人の欠格」の疑いがあり、和歌山地方裁判所では無罪(令和6年12月12日)となりましたが、令和6年12月24日に控訴しており確定していません。
裁判の行方にて、相続人も変わる可能性があるのです。
配偶者であった期間と相続
相続人の欠格に当たらない場合、相続発生時の配偶者は、相続人となります。
言い換えれば、相続発生直前に離婚していれば、婚姻期間には関係なく相続権はありませんし、直前に婚姻していれば、相続人となれるのです。
事実婚では、相続人となる事ができません。
戸籍上の配偶者であることが条件となります。
故人のきょうだいと配偶者の関係は難しい
当方は、長年、会計事務所で相続実務を担当していました。
そこで知ったのが、「遺産分割でもめるのは、子供のいない方の相続」が、意外に多いことでした。
配偶者にしてみれば、夫婦で築いた遺産(のケースが多い)について、自身の血族ではなく、相手方の親やきょうだいと話し合いを行うことに抵抗があるかもしれません。
夫婦に子供がいれば、相続人とならない人なのです。
もちろん、きょうだいの方々が、気持ちよく放棄されたケースもあります。
故人のきょうだいと配偶者の関係は難しいことが多かったのも現実です。
遺言書があれば解決
子どものいない夫婦の場合、「配偶者に全財産を相続させる」と公正証書遺言で書いておけば(故人に両親等亡くなっている場合)、その通りになります。
きょうだい・おいめいには遺留分もなく、遺留分侵害額請求ができません。
幸助さんの場合、遺言書はありましたが、自筆証書遺言だった為、「本当に本人が書いたものか」でも争われております。
この問題は、公正証書遺言(公証人が作成した遺言)であれば、無効になる可能性はほとんどなくなります。
市へ寄付をするメリット
幸助さんが書いたとされる遺言書は、「全財産を田辺市に寄付する」という内容でした。
遺産を国、地方公共団体等へ寄付する場合、相続税の対象としない特例があります。
子供のいない夫婦の場合、夫(妻)が亡くなった時は、残された妻(夫)に相続させる(一次相続)としても次のおひとりさまとなった相続(二次相続)では、国、地方公共団体等に寄付するのも要検討となるでしょう。
遺言書を書いておけば、「自身の思い」を社会貢献できるのです。
ふるさと納税の恩恵はあるのか?
市への寄付をすれば、相続税の節税とふるさと納税の恩恵が受けられないかと相談されたことがあります。
相続で取得した財産を市へ寄付するというのは、相続人は、寄付したその分の遺産はもらえないという事実(その部分には税金がかからない)をふまえた上で、相続税は、取得した方が、取得した財産額に応じて相続税を払うことになります。
ふるさと納税は、節税というより、返礼品がプラスされる楽しみがある訳です。
寄付額が還付される上限額は、遺産ではなく、所得が多い相続人ほど高くなるため、所得の多い相続人が、相続で取得した財産を寄付すなら国ではなく市へ寄付するのも選択肢にありかもしれません。
ふるさと納税は、取得した相続人が寄付するのが条件で、今回のように遺言にて遺贈するのは適用できませんので注意が必要です。
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