所得税の社会保険料控除や生命保険料控除は、支払った金額に応じて差し引くことができる所得控除ですが、家族の社会保険料等を支払った場合には、それらの金額も所得控除の計算に含めることができます。
今回は、社会保険料控除・生命保険料控除の対象になる支出と、控除額を計算する際の注意点について解説します。
社会保険料控除の対象になる支出の範囲
社会保険料控除は、支払った社会保険料に応じて差し引くことができる所得控除です。
納税者自身の社会保険料だけでなく、生計を一にする配偶者や親族が負担すべき社会保険料を代わりに支払っていた金額も控除対象です。
「生計を一にする」とは、生活の財布が一緒になっていることをいいます。
家族が同じ家屋で起居しているときは、生活の財布が別々で、独立した生活を営んでいると明らかに認められる場合を除き、「生計を一にする」に該当します。
また、別居している親族でも、仕送りなどをしている子どもなどは生計を一にする親族となるため、同居の有無だけで判断しないよう注意してください。
生命保険料控除の対象になる支出の範囲
生命保険料控除は、納税者が生命保険料・介護医療保険料・個人年金保険料を支払った場合、支払った保険料に応じた金額を差し引くことができる所得控除です。
生命保険料控除は上限が定められており、社会保険料とは違い、支払った保険料がそのまま控除額にならない場合があります。
生命保険料控除の対象となる生命保険契約等は、一定の生命保険契約等のうち、保険金等の受取人のすべてが保険料を支払った人または配偶者、その他の親族でなければいけません。
一方で、保険契約者の名義については生命保険料控除の要件となっていないため、配偶者名義の生命保険であったとしても、保険料を納税者が支払っている場合は、納税者の生命保険料控除の対象になります。
家族が自分で支払っている保険料は対象外
社会保険料控除や生命保険料控除の対象となるのは、確定申告を行う納税者自身が支払っている保険料に限られます。
家族が自分で社会保険料や生命保険料を支払っている場合、それらの金額は支払った人の社会保険料控除・生命保険料控除の対象となるので、納税者の所得控除の計算に含めることはできません。
また、家族の社会保険料が給与や年金から天引き(特別徴収)されているときは、家族が社会保険料を支払っていると判断されるため、納税者の社会保険料控除の対象から外れます。
還付申告の手続き可能期間は5年
還付申告書は、対象年分の翌年1月1日から5年間提出できます。
過年分において、社会保険料控除や生命保険料控除の計上漏れがあったときは、申告手続きをして税金の還付を受けられることもあります。
期限後に還付申告書を提出したとしても、戻ってくる税金が減ることはありません。
ただし、還付請求の起算日から5年が経過すると、所得税の還付を受けられなくなります。
令和元年分の所得税の還付申告が行える期間は、令和2年1月1日から令和6年12月31日までです。
令和7年になると令和元年分の税金の還付は受けられなくなりますので、該当する方は取り急ぎ申告手続きを行ってください。
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