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2025年は60歳以降の年収の壁(50万円、158万円、180万円)が注目点


2025年には、60歳以降の日本の年収の壁(50万円、158万円、180万円)が注目されています。これらの壁は、受給する年金の金額や税制、社会保険の扶養制度に影響を与えるため、特に関心が寄せられています。50万円の壁は、厚生年金の特別支給の支給停止の基準であり、これを超えると年金の一部が停止される可能性があります。158万円の壁は、老齢年金に対する所得税が課される基準で、大多数の高齢者の年金が非課税になるポイントです。180万円の壁は、60歳以上が社会保険の扶養から外れる際の年収基準で、これを超えると自身で保険料を負担する必要があります。政府はこれらの壁を見直す可能性があり、社会保障政策の大きな転機となるかもしれません。特に、国民民主党が103万円の壁を178万円に引き上げる提案がされる中、2025年はこれらの法案の行方に注目が集まっています。

2025年は60歳以降の年収の壁(50万円、158万円、180万円)が注目点


50万円、158万円、180万円の壁

2024年10月27日の衆議院総選挙で躍進した国民民主党の、103万円の壁を178万円に引き上げする案が、同年11月頃から話題になっています。

与党と国民民主党の協議は継続しているため、2025年も引き続き注目を集めると思います。

個人的には次のような60歳以降の年収の壁(50万円、158万円、180万円)も、2025年に注目を集めると予想するのです。

60歳以降に受給できる3種類の老齢年金

公的年金(国民年金、厚生年金保険)の保険料を納付した期間や、免除を受けた期間などの合計が原則10年以上あると、国民年金から支給される老齢基礎年金の受給資格を満たします。

また老齢基礎年金の受給資格を満たしたうえで、厚生年金保険に加入した期間が1月以上あると、厚生年金保険から支給される老齢厚生年金の受給資格を満たします。

これらの老齢年金を受給できるのは65歳からになりますが、生年月日や性別によっては経過措置で62~64歳から、老齢厚生年金を受給できる方がいるのです。

65歳になる前に支給される老齢厚生年金は、特別支給の老齢厚生年金と呼ばれています。

また特別支給の老齢厚生年金を受給するには、老齢基礎年金の受給資格を満たしたうえで、厚生年金保険に加入した期間が1年以上必要になります。

年金の支給停止が始まる「50万円の壁」

60歳から70歳までの間に厚生年金保険に加入していると、老齢厚生年金(特別支給の老齢厚生年金)の全部または一部が、支給停止になる場合があります。

加給年金(老齢厚生年金に加算される家族手当)や、老齢基礎年金は支給停止になりませんが、老齢厚生年金の全部が支給停止になると、加給年金も支給停止になります。

厚生年金保険に加入する上限年齢は70歳ですが、これ以降も厚生年金保険の適用事業所で働いていると、引き続き支給停止の対象になる場合があります。

年金の支給停止が始まる目安は、「老齢厚生年金(特別支給の老齢厚生年金)÷12」と「月給+その月以前1年間の賞与÷12」の合計が、50万円を超える場合です。

支給停止を回避するために就業時間を抑制する方がいるため、50万円も年収の壁の一種になるのです。

厚生労働省が2025年の年金改正に向けて、2024年11月下旬に社会保障審議会(厚生労働大臣の諮問機関)に提示した案は、次のような3つになります。

(1)年金を支給停止する制度を撤廃

(2)50万円という基準額を71万円に引き上げ

(3)50万円という基準額を62万円に引き上げ

いずれの案が実現するのかで60歳以降の働き方が変わるため、2025年の注目点になると思います。

なお60歳以降に受け取る予定の給与を入力すると、支給停止になる老齢厚生年金(特別支給の老齢厚生年金)を試算できる機能が、ねんきんネットに搭載されています。

老齢年金に所得税が課税される「158万円の壁」

会社員として働く方(パートやアルバイトなども含む)は、給与に課税される所得税を計算する時に、概算の必要経費である給与所得控除を差し引けます。

給与所得控除は年収の金額によって変わりますが、年収が少なくても最低額の55万円は差し引けます

また一部の高所得者以外は48万円の基礎控除も差し引けるため、年収を両者の合計である103万円(55万円+48万円)以下に抑えると、課税所得はゼロになります。

これにより当人が所得税を課税されないだけでなく、その方を扶養する配偶者(親)が、配偶者控除(扶養控除)を受けられる可能性があるのです。

公的年金のうち障害年金と遺族年金は非課税ですが、老齢年金は給与と同じように所得税が課税されます。

ただ老齢年金に課税される所得税を計算する時には、年間の老齢年金の合計から、公的年金等控除(65歳を境にして金額が変わる)と基礎控除を差し引けます

そのため収入が年金だけの方は、年間の老齢年金の合計が次のような金額以下であれば、所得税は課税されません。

・65歳未満:108万円(公的年金等控除60万円+基礎控除48万円)

・65歳以上:158万円(公的年金等控除110万円+基礎控除48万円)

国民民主党の案は給与所得控除や基礎控除の金額を増やして、103万円の壁を178万円に引き上げするというものです。

例えば基礎控除を48万円から123万円に増やして、178万円に引き上げした場合、65歳以上の方は年間の老齢年金の合計が次のような金額以下であれば、所得税は課税されません

・233万円(公的年金等控除110万円+基礎控除123万円)

一方で給与所得控除だけを増やした場合には、収入が年金だけの方には影響がないため、どのような結論になるのかは2025年の注目点だと思います。

60歳以上が社会保険の扶養から外れる「180万円の壁」

国民健康保険や75歳以上の方が加入する後期高齢者医療には、扶養という制度がありません。

それに対して会社員などが加入する社会保険(健康保険、厚生年金保険)には、所定の親族が扶養に入れる制度があります。

社会保険の扶養に入った方は健康保険の保険料を納付しなくても、2~3割の自己負担で診療を受けられたり、出産した時に一時金を受給できたりするのです。

また20歳以上60歳未満の配偶者が社会保険の扶養に入ると、国民年金の保険料を納付しなくても、納付したという取り扱いになります。

社会保険の扶養に入るためには、いくつかの要件を満たす必要がありますが、多くの方に知られているのは年収130万円未満という、いわゆる130万円の壁です。

ただ60歳以上の方や障害年金を受給できる程度の障害状態の方は、年収要件が180万円未満になるため、該当する方は180万円の壁の方が重要なのです。

130万円の壁を超えて社会保険の扶養から外れると、国民健康保険や国民年金の保険料を自分で負担する場合が多いのです。

そのため103万円の壁が引き上げされ、年収178万円まで働けるようになっても、130万円の壁を超えないように就業時間を抑制する方がいると思います。

こういった状態にならないようにするため、130万円の壁を廃止して年収にかかわらず保険料の負担を求める案があります。

ただ60歳未満の方も60歳以上の方と同じように、年収要件を180万円未満にすれば、就業時間の抑制は起きにくいので、廃止だけが解決策ではないのです。

後者の案が議論されない理由は、社会保険の扶養に入れる方が増えると、健康保険を運営する健康保険組合などの、財政的な負担が増えるからだと推測します。

いずれにしろ130万円の壁が見直しされると、それと連動して180万円の壁も見直しされる可能性があるため、2025年の注目点だと思います。

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