投資信託(投信)は、手軽な投資先として利用されている方は多いと思います。
一方、投信の販売会社の情報開示はまだまだ不十分なため、金融庁は開示を促進すべくファンド運用実績などを公表しています。
公表データをもとにリターン、シャープレシオ、コストの相関関係を解説します。
投資信託のリターン、コスト、シャープレシオ
金融庁は、金融事業者(投信の販売会社)の「顧客本位の業務運営」に向けた取組みの一環(注1)で金融事業者の重要業績評価指標(KPI(注2))の調査結果やKPIの5年間実績(2018~2022年ファンドごとのリターン、コスト、シャープレシオ)を公表し目標達成を促しています。
注1)金融庁は、金融事業者の「顧客本位の業務運営」のさらなる浸透・定着に向けた取組みの一環で、「金融事業者リスト」や「投資信託の共通KPIに関する分析」を公表しています。リスクやコストに見あったリターンが長期的に得られているかを公表して投資家が金融事業者を選べる様にしています。
注2)KPI:「Key Performance Indicator」の略で、組織の目標を達成するための重要な業績評価の指標を意味し、達成状況を定点観測し数値で示します。
リターン、コスト(販売手数料の1/5+信託報酬)、リスク、シャープレシオなどを取り上げています。
※金融庁発表資料からデータを筆者加工
<表1>公表している投資信託の数
株、債券、REIT、バランス型など国内、先進国、新興国、グローバルなど合計約830のファンドデータ
(1) リターンとシャープレシオファンド別の傾向をグラフ化
<グラフ1>全データ2022年
<グラフ2>全データ資産クラス毎の年間平均値5年間2018~2022年
ファンド別でリターンとシャープレシオの相関が認められ、リターンの傾向が分かります。
株>REIT・バランス>債券
<グラフ3>株はリターンの幅が広くマイナスもある
<グラフ4>債券はシャープレシオの幅が広く、リターンは少な目
<グラフ5>REIT、バランス型のリターン幅は安定しているが、少な目
(2) ファンド別のリターン経年推移資産クラス毎の平均値
2022年年度の結果は
先進国株>国内REIT>グローバル株>海外REIT>国内株、新興国株、バランス型>債券(先進国>グローバル>国内≒新興国)
【年度別リターントップ】
2022・21年:先進国株
2020年:国内株、グローバル株
2019年:国内株
2018年:グローバル債券
<グラフ6全データのリターン2018~22年>経年推移をみると変動大きい。
<グラフ7株>はリターン多いが変動も大きい
<グラフ8債券>は2%程度で安定
<グラフ9 REIT バランス>は4%程度で推移
信託報酬とリターンの関係
<グラフ10>全データ2022年の結果
信託報酬とリターンはあまり関係なくファンドの性質や市場の動きに影響を受けている様です。
シャープレシオ
・シャープレシオはファンドの運用効率を見る指標として広く利用されていて、一定期間の運用で「リスクに対してどれだけ効率的に収益をあげたか」を数値で表します。
シャープレシオ=リターン(一定期間の収益-無リスク収益)÷リスク(標準偏差)
・ファンドが同じリターンの場合どちらが効率的に運用しているかを判定でき、シャープレシオの大の方が効率が良い。
A:リターン5%リスク10%シャープレシオ0.5
B:リターン5%リスク 5% シャープレシオ1 Bが効率的に運用していると言えます。
・同期間で比較計算期間で値は変動しますので、同期間のシャープレシオ1年、3年、5年などで比較します。
・同じカテゴリーで比較株式、債券などリスクとリターンの傾向が異なりますので、同じカテゴリーで比べます。
・自分の考えに合ったファンドを選ぶ
ファンドの選択で大切なのは、自分が期待するリターンと、どの位のリスクがとれるのか、敢えてとったリスクに対して納得できるリターンがあるのかを考えることです。
シャープレシオが高くリターンが大きい株式ファンドを検討する場合、「高いリスクは取りたくない」と考えるならこの株式ファンドの選択は適切ではないでしょう。
・シャープレシオは、あくまで過去の成績です。過去の成績が良くても、将来も必ずしも良いとは限りません。
投信のコストかかるコストは5種類
(1)「購入時手数料」
(2)「運用管理費用(信託報酬)」
(3)「監査報酬」
(4)「売買委託手数料」
(5)「信託財産留保額」
(1)「購入時手数料」
購入時販売会社に支払いますが、「ノーロード投資信託」や「新NISAのつみたて投資枠(ノーロード対象)」で無料です。
成長投資枠や通常の課税投資で投信を購入時は「購入時手数料」がかかりますが、全て無料のネット系会社もあります。
(2)「運用管理費用(信託報酬)」
運用期間中は信託財産から間接的に「運用管理費用」が差し引かれます。運用管理にかかる費用などをまかない、運用指示を出す運用会社・販売する会社・信託財産を管理、運用する信託銀行の3者で配分します。
信託財産の純資産総額×年率%で算出します。
信託報酬は日々差し引かれ、例えば「信託財産(100万円)×信託報酬 (0.5%)×消費税 (1.1)÷365日」=約15円年間5,500円です。
「新NISAのつみたて投資枠、成長投資枠」のいずれも、ファンドを保有している間、信託報酬は必要ですが「つみたて投資枠」の信託報酬は一定水準以下と定められています
インデックスファンドの場合、国内資産は0.5%以下(税抜)、海外資産は0.75%以下(税抜)
アクティブファンドの場合、国内資産は1%以下(税抜)、海外資産は1.5%以下(税抜)
(3)「監査報酬」
監査法人などからの監査を受ける必要があり、その監査に要する費用で間接的に徴収されています。
(4)「売買委託手数料」
投信が投資する株式などを売買する際に発生する費用で、発生の都度、間接的に徴収されます。
運用の結果発生する費用のため、事前には分かりません。
(5)「信託財産留保額」
換金時にかかるファンドもあります。
投資信託の解約時費用で、換金時にさまざまな費用がかかり解約する人が一部負担します。新NISAの投資信託は、信託財産留保額について規定はありませんが、無料で設定されているファンドもあります。
どのような費用負担があるか知ることは、とても重要で、しっかり確認したいところです。目論見書等で確認できますが、なかなか内訳などは分かりにくいので、金融庁も開示の促進をしているのは上述の通りです。
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