今回は株の相続をテーマにお伝えします。
株式といっても、証券取引所に上場していない企業の株式(非上場)の話ではありません。
市場で売買ができる、上場株式の方の話です。
売却時のタイミングで大きく変わる株式の評価
現在、株式が乱高下しています。
遺産分割をした時の株式評価額が、分割時より売却時にたまたま上がっていれば、株式を取得した人はホクホクです。
反対に相続で取得後、その株がたまたま暴落していれば、自分の選択を大いに悔やむことになります。
つまり株式は実際の売却のタイミングで評価が大きく変わるのです。
相続税評価とは
相続税の申告上の株式の評価は、
相続発生時(死亡時)の終値
その月の月平均額
前月の月平均額
前々月の月平均額
のうち、1番安い金額にて評価して、相続税額を算出することになります。
よって株式を取得した相続人が納税のため株式を売却しようとした場合、その株式が相続税評価額より下落していていれば、当然ながら相続税の評価額より、実際の手取り金額は減少することになります。
ただし、あくまで相続税の税金の話です。
株式が相続発生時より下落したら
相続税の申告書の評価より、納税時(10か月以内)に大きく下落していたら、上場株を物納する方法はあります。
物納する場合、株式の評価は相続税評価基準で計算されますので、下落時のマイナスを避けられます。
ただし、物納するには、「延納によっても金銭で納付することを困難とする・・・」等の条件があり、株式を取得する相続人が納税分の預金も取得する場合は、物納は困難かもしれません。
事前に税務署、税理士と相談のうえ検討するのをおすすめします。
売却時には手数料と税金もかかる
故人が株式の保有を証券会社で「特定口座で、源泉徴収あり」にて所有していれば、相続人も口座開設をして、特定口座に移すことは可能です。
さらに「源泉徴収あり」としておけば確定申告も不要で、税金の精算もやってくれます。
税金は、
売却金額から取得費と売買手数料を控除した金額に所得税(復興特別所得税含む)15.315%に、住民税は5%かかります。
株式の取得価格(相続時でなく、故人の購入時)が証券会社等で判明していればいいのですが、不明であれば、売却価格の5%が取得価格になります。
取得価格が分かるかどうかも手取り額に大きくかかわります。
そして、証券会社へ売買の手数料がかかります。
NISA口座だったら
今、話題の非課税となるNISA口座を故人が所有している場合、相続で引き継ぐことはできるでしょうか。
残念ですが、NISA口座を相続人が引き継ぐことはできません。
つまり亡くなった日以降は配当金も課税されることになります。
ただし、課税口座となる特定口座・一般口座に移すことは可能です。また、NISA口座を相続で引き継いだ場合の取得価格は、相続発生時の価格となります。
相続で、もらうのは株か預金のどちらがお得?
きょうだいで平等に分けたいと考えた場合、預金なら解約をどの時点で行ってもほとんど差は出ませんが、株式の場合はどの時点を基準にするかで評価に大きな差が出ます。
また、先祖代々所有している資産株の場合は、取得価格が不明なことが多く、売却金額の5%となるため実質手取りは、
1-(1-0.05)×0.2315=0.78(手数料は考慮していません)
となります。
とはいえ、預金を取得希望される他の相続人に、下落時のリスクの話をしたら遺産分割はまとまりません。
株を取得するとは、リスクのあるものを取得するということです。自分が損しないことばかり考えるのでなく、他の相続人の立場に寄り添って、考えてみるのも大事です。
他の相続人と比較するのが、一番もめる原因です。
少なくとも、株の相続は、資産がマイナスになる事はまずありません。残してくれた親に感謝です。