2024年12月2日に健康保険証は廃止されますが、実際に使えなくなるのは、ここから最長1年の猶予期間を過ぎた後です。
政府が健康保険証を廃止するのは、マイナ保険証(健康保険証として利用するための登録を済ませたマイナンバーカード)を普及させたいというのが、理由のひとつと推測されます。
ただ国民から怒りや不安の声があがったので、その声に応えるためにマイナ保険証の改良を重ねました。
またマイナ保険証の使い方も改良を重ねたのですが、結果としては次のように健康保険証が廃止された後の選択肢が多すぎて複雑になったので、新たな問題点だと思います。
マイナンバーカードを持っていても資格確認書が交付される
マイナンバーカードの交付状況を示す統計としては、「有効申請受付数(累計)、交付枚数(累計)、保有枚数」の3つがあります。
この中の3番目にある保有枚数は、交付枚数から死亡や有効期限切れなどによる廃止分を差し引いて算出するため、もっとも実態に近いと言われているのです。
また2024年7月末時点の保有枚数は約9,308万枚のため、人口に対する割合は約74.5%に達します。
そうなると猶予期間を過ぎた後は、約7割の方がマイナ保険証を使い、約3割の方が健康保険証の代わりに交付される資格確認書を使いそうです。
しかし実際にはマイナ保険証を使う方がもっと減って、資格確認書を使う方がもっと増えると推測します。
その理由としてはマイナンバーカードを持っていても、健康保険証として利用するための登録を済ませていない場合、そのカードはマイナ保険証として使えません。
また登録を済ませていないなどの理由で、マイナ保険証を使えない方にも資格確認書が交付されるからです。
猶予期間を過ぎた後の主な3つの選択肢
マイナンバーカードを持っていても、そのカードがマイナ保険証として使えない方にも資格確認書が交付されるため、猶予期間を過ぎた後は次のような3つに分かれると思います。
(1) マイナンバーカードを持っているのでマイナ保険証を使う
(2) マイナンバーカードを持っていないので資格確認書を使う
(3) マイナンバーカードを持っていても資格確認書を使う
多くの方は (1) か (2) だと思いますが、健康保険証として利用するための登録をしない、または近日中に開始予定の登録の解除申請を利用して、(3) を選ぶ方がいるかもしれません。
その理由としてはマイナンバーカードを持ち歩くと、紛失するリスクが高まるからです。
もしマイナンバーカードを紛失した場合、再交付の手続きを実施しますが、再交付を待っている間に診療を受けたい方にも、資格確認書が交付されるようです。
ただ政府としては特急発行・交付の仕組みにより、最短5日でのマイナンバーカードの再交付を実現する見込みなので、資格確認書は必要ないのかもしれません。
暗証番号の設定が不要なカードは使える場面が少ない
医療機関の窓口に設置してある、顔認証付きカードリーダーに入力する電子証明書の暗証番号を覚えるのが、負担になる高齢者の方がいます。
また入居者のマイナ保険証を預かった高齢者施設や障害者施設では、暗証番号を漏洩しないように管理する必要があるため、大きな負担になります。
そのため政府は2023年12月から、暗証番号の設定が不要なマイナンバーカードの新規発行・切り替えを可能にしたので、次のような選択肢も利用できるのです。
(4) 暗証番号の設定が不要なマイナ保険証を使う
ただ暗証番号の設定が不要なカードは、コンビニの端末で住民票などを取得できなかったり、マイナポータルにログインできなかったりするのです。
また高齢者施設や障害者施設では、マイナ保険証を預かるよりも資格確認書を預かった方が、おそらく負担が少ないと思います。
そのため施設によっては (4) よりも (3) の方を、入居者に求める可能性があるのです。
マイナ保険証を使えない時に本来の割合にする手段
何らかの理由でマイナ保険証を使えない時に、医療費の自己負担を10割から本来の割合にする手段として、厚生労働省は次のような2つを示しています。
(5) マイナポータルの健康保険証の資格情報を提示する
(6) 被保険者資格申立書を可能な限り記入して提出する
前者のマイナポータルとは政府が運営するウェブサイトであり、マイナンバーカードを使ってログインすると、オンラインで行政関係の手続きなどができます。
また患者が自分のスマホでマイナポータルにログインし、その中の健康保険証の資格情報が表示された画面をマイナ保険証と一緒に提示すると、自己負担は本来の割合になります。
事前に健康保険証の資格情報をPDFファイルでダウンロードし、それが表示されたスマホの画面をマイナ保険証と一緒に提示しても良いので、(5) は2つに分かれるのです。
後者の申立書は医療機関から渡されますが、インターネットで検索すると簡単に見つかるため、印刷して事前に記入しておけば、本来の割合で診療を受けやすくなります。
また再診の医療機関の場合、資格情報に変更がないことを患者に口頭で確認し、申立書に記入すべき情報を医療機関が把握しているのなら、申立書の記入と提出を省けます。
いずれの手段を利用するのかは状況によって変わりますが、厚生労働省としては (5) を優先して欲しいようです。
マイナ保険証を使えない時の新たな手段
健康保険証として利用するための登録を済ませ、マイナ保険証を使える方には、資格情報のお知らせという書類が送付、または勤務先から配布される予定です。
何らかの理由でマイナ保険証を使えない時に、この書類をマイナ保険証と一緒に提示すると、自己負担は本来の割合になります。
そのため将来的には次のような手段も加わりますが、 (5) ~(7) はマイナ保険証を使えない時の手段なので、どれを使うのかで迷うケースは少ないと思います。
(7) 資格情報のお知らせを提示する
ただマイナ保険証の利用者が急速に増えていくと、システム障害が起きやすくなるので、どれを使うのかで迷うケースが当面は増えるかもしれません。
今後の問題になりそうなマイナンバーカードの紛失
韓国では1968年という早い時期から、日本のマイナンバーカードに当たる住民登録証が始まり、17歳以上の国民は交付を受ける義務があります。
インターネットで調べてみたら、約40%の国民は住民登録証を10年間のうちに1回以上紛失し、再交付件数は10年間で1,650万件に上るというデータを見つけました。
日本でも同じような状況になる可能性があるため、健康保険証の廃止後に何を使うのかは、紛失も考慮して決めた方が良いのです。
マイナンバーカードの電子証明書の機能をスマホに搭載できる、スマホ用電子証明書搭載サービスがあります。
これを利用すると将来的には、医療機関にスマホだけを持っていけば本来の割合で診療を受けられるため、次のような選択肢も加わるのです。
(8) スマホをマイナ保険証の代わりに使う
またマイナンバーカードを持ち歩かなければ、紛失するリスクを下げられるだけでなく、スマホはマイナンバーカードよりも紛失した時に探しやすいです。