2024年8月5日、日経平均株価が過去最大の下げ幅を記録するなど、8月の株式市場は大きく荒れています。
売却した株式の価額が購入時の価額を下回った場合、売却損失(譲渡損失)が発生したことになりますが、税務上では売却損失に対して救済措置が設けられています。
本記事では、株式の売却損失が発生した際の救済措置制度の概要と、制度を適用する際の注意点について解説します。
上場株式等の売却損失は損益通算・繰越控除ができる
金融商品取引業者等を通じて売却した上場株式等の損失金額は、他の上場株式等から生じた売却利益や、申告分離課税を選択した「上場株式等に係る配当所得等の金額」と損益通算ができます。
譲渡所得税は売却利益に対して課される税金なので、損益通算で利益の額が小さくなれば、課される税額は減りますし、配当所得も損益通算をすることで所得金額を抑えられます。
同年中に損益通算しきれなかった損失額が残った場合、翌年以後の上場株式等に係る譲渡所得や、上場株式等に係る配当所得から繰越控除ができます。
繰越期間は最大3年となっていますので、残った損失額を翌年以後の利益と相殺することも可能です。
損益通算・繰越控除を適用するためには確定申告が必須
上場株式等の売却損失の損益通算および繰越控除をする場合、必ず確定申告手続きをしなければなりません。
確定申告書に損益通算を適用する旨を記載し、必要書類を揃えて申告しないと、損益通算は適用されないので注意してください。
上場株式等に係る売却損失を繰越控除する際も同様で、損失額を繰り越す旨を記載した申告書および必要書類の提出が必要です。
また、損失額を繰り越した翌年に上場株式等の譲渡がなかったとしても、売却損失をその翌年に繰り越すためには申告をしなければなりません。
損益通算および繰越控除が適用できないケース
損益通算および繰越控除の対象となるのは、金融商品取引業者等を通じて売却した上場株式等から生じた売却損失です。
上場していない株式(一般株式等)の売却損失は、上場株式等から生じた譲渡利益との損益通算は認められておらず、繰り越した損失額を一般株式等に係る譲渡所得等の金額から控除することもできません。
上場株式等を売却した場合でも、相対取引などにより生じた売却損失は損益通算および繰越控除の対象外です。
また、NISAは売却した際の利益等が非課税になる制度ですが、NISA口座内の上場株式等を譲渡したことで生じた売却損失は無かったものとみなされるため、損益通算および繰越控除の対象から除かれます。
確定申告手続きをする際の注意点
特定口座の「源泉徴収あり」を選択している方は、証券会社等が売却利益に対する税金を天引きするため、原則株式の売却損益の申告は不要ですが、損益通算や繰越控除を適用する場合は申告が必要となります。
「源泉徴収あり」の特定口座の内容を確定申告書に記載しなかった場合、修正申告や更正の請求において、その特定口座の内容を申告書等に含めることはできません。
そのため、損益通算を適用する際は当初申告において株式売買の内容を記載した上で、申告手続きを行ってください。
オリンピックメダリストが受け取る報奨金は税金を取られるって本当?