都市部のマンション需要の高まりを受け、不動産価格の高騰が止まりません。なんと、東京23区の新築マンションの平均価格は1億円を超えています。
私はファイナンシャル・プランナーとして、住宅ローンのアドバイスを行うなか、40代の子育て世帯から金利はこの先どうなるのか相談を受けるケースが増えています。
将来の金利が上昇した場合にどう備えるか。
住宅ローン金利の現況を踏まえ、今すぐ借換えや繰上返済をしなくてもよい方法を紹介します。
参照:株式会社不動産経済研究所「首都圏 新築分譲マンション市場動向 2024年5月」
「住宅ローン」みんなどう借りているの?
住宅金融支援機構が行った2024年4月調査では、住宅ローンの借入金利は「0.5%以下」が最も多い結果となっています。
住宅ローンの金利タイプ「変動型」8割
返済期間:30年超~35年以下
が最も多く、金利上昇リスクを抱えている状況です。
参照:住宅金融支援機構「住宅ローン利用者の実態調査(2024年4月調査)」
「将来の金利」みんなどう思っているの?
住宅金融支援機構による2024年4月の調査において、今後1年間の住宅ローン金利の見通しについて「現状よりも上昇する」と住宅ローン利用者の約5割が回答しています。
「変動型」利用者の約2割は「見当がつかない、わからない」と回答しています。
将来の金利が上がると予測しながらも、対策を打ち切れていない実態が見えてきます。
参照:住宅金融支援機構「住宅ローン利用者の実態調査(2024年4月調査)」※一部筆者が編集
金利上昇に備える3つのステップ
金利が上昇した場合に備え、どのような対策が打てるかを3つのステップでお伝えします。
結論からいうと、資産の合計や金利が1%上がった場合の返済額を知ることで、すぐに借換えや繰上返済をせず、現在の返済額のまま様子を見ることができます。
ステップ1:住宅ローンと資産どちらが大きいか?
住宅ローンと資産のどちらの残高が大きいか確認しましょう。
資産とは、現金や預金とをはじめ、新NISAで運用している株式や投資信託などを指します。
資産がいくらあるかを知るためには、家計簿アプリがおすすめです。
家計簿アプリ「マネーフォワード」では、資産ボタンを押すだけで、資産の合計と内訳が円グラフでわかります。
【住宅ローンの残高を銀行に確認】
住宅金融支援機構から借りている場合は「住・My Note」のサイトから、住宅ローン残高を確認できます。
資産の合計と住宅ローン残高がわかったら、どちらが大きいか比較します。
住宅ローンの全額または一部を繰上返済することもできますが、お子さまへの教育資金などが不足しないよう注意してください。
ステップ2:返済額が増えた場合のシミュレーション
金利の上昇によって返済額が増えた場合のシミュレーションをしてみましょう。
返済額をサクッと計算したい場合、金融庁の「借金シミュレーター」がおすすめです。「借金シミュレーター」から「家」を選択し、借入金額、金利、分割回数を入力するだけで、毎月の返済額がわかります。
【例】
現在の借入残高2,000万円
残りの返済期間20年(240ケ月)
借入金利0.5%
毎月の返済額は87,000円
金利が1%上昇したと仮定して借入金利を1.5%にした場合には、毎月の返済額は96,000円になります。
このように返済額が約1万円増えても、返済に困らなければ、様子を見る選択ができます。
返済が困る場合は、ステップ3で返済資金をつくるに進みます。
【毎月の返済額(住宅ローン残高2,000万円、返済期間20年)】
A 現在(0.5%) | B 将来(1.5%) | 差額(B-A) |
87,000円 | 96,000円 | +約1万円 ←様子を見る?対策を打つ? |
ステップ3:返済資金をつくる
住宅ローンが返済できることを確認します。
自力で返済資金をつくる場合、効果が持続するのは固定費の削減です。
不要な保険やサブスクなどの固定費を解約することによって、返済するお金の余力を生むことができます。
自力以外で返済資金をつくる手段として、親からの贈与があります。
毎年110万円までは贈与税が非課税になります。
将来、相続税がかかることが予測できる場合は、計画的な贈与も一考の価値があります。
参照:国税庁「贈与税」
3ステップが不安や問題解消につながる
近ごろの住宅価格の高騰に加え、将来の金利上昇まで考えると不安は尽きないと思います。
紹介した3つのステップで対策を打つことによって、今すぐ借換えや繰上返済をしなくてもよい場合があります。
判断に迷ったときは、専門家のアドバイスなどの活用も検討してみてください。