驚異的な円安は気になりますが、海外旅行もすっかり回復してきました。
国外に出る際必須になるのが、海外旅行傷害保険です。
クレジットカードにも保険は付帯していますが、補償内容や付加サービスの点からいうと、旅行前に有料の保険商品に入ることをおすすめします。
ですが本記事では、クレジットカードでどこまでできるかを確認します。
保険商品もクレジットカード保険と組み合わせられます。
クレジットカードだけでできる範囲を把握しておくのも、無意味ではありません。
クレジットカード保険は今や利用付帯が主流に
クレジットカードに付帯の海外旅行傷害保険には、自動付帯と利用付帯とがあります。
もともと自動付帯(保険自動適用)であったカード保険が、コロナ禍以降次々と利用付帯(条件付保険適用)に変わっています。
サービス水準が低下したのです。
その結果利用者側からすると、複数のカード保険を組み合わせる難易度が増しています。
利用付帯の保険は事前カード決済が必要
お金を出して保険商品に加入すると、旅行開始日から保険が適用されます。
いっぽうクレジットカード保険の場合、自動で保険適用になる例がどんどん減っています。
・ 自動付帯 … カードを持っているだけで補償が適用される(現在、おおむねプラチナカード以上に付帯)
・ 利用付帯 … 事前に旅行代金をカード決済することで補償が適用される
ゴールドカードの多くも次々利用付帯に切り替わりました。サービスが落ちたわけです。
自動付帯のカードを複数持っている場合、なにもせずにすべてのカードの保険が適用されます。
いっぽう利用付帯のカードの保険を複数合算して適用しようとするなら、カードごとに旅行代金を支払わないといけません。
複数適用の具体的な方法です。
・ カードAでツアー代金を支払う
・ カードBで出発空港までの公共交通機関の料金を支払う
・ (さらに)カードCで、出発空港までの公共交通機関に乗り換える前の交通機関の料金を支払う
すべての利用付帯カードで、カードAの方法で保険適用となります。
いっぽうカードB(さらにC)の方法は楽天カードでは使えません。これは次にご説明します。
なお、条件をそれぞれ満たせば保険金額は重複適用されるのが原則ですが、「死亡・後遺障害」の一時金だけは最も高いものが適用されます(保険商品との間では重複適用)。
利用付帯にも2種類ある
利用付帯のカードにも、保険適用ルールによりおおむね2種類に分かれます。
・ (A) 航空代金やツアー代金を事前にカード決済することが必要なもの
・ (B) 国内出発空港までの公共交通機関の代金をカード決済すればいいもの
カードブランドにより、次のとおりです。
・ Aタイプ … 楽天カード
・ Bタイプ … 大部分のカードはこちらに該当(※必ず事前に調べること)
大多数を占めるBタイプも、すべてのカードで同じルールではありません。
「タクシーはOKだがレンタカーは不可」のカードが多いので気をつけましょう。
アメックス(プロパー)やオリコのように、タクシー不可のカードもあります。
さらに、こんな違いもあります。
1. 公共交通機関のカード決済により、購入時から保険適用(大部分は当日購入で可)
2. 交通系ICカードの支払でも、保険適用のクレジットカードからチャージされていればOK
1については、空港リムジンバスにタッチ決済可能なものが増えてきたのは朗報です。
それから実証実験で京急電鉄(と都営地下鉄浅草線)がタッチ決済を始めるというニュースがあります。
これが始まると、羽田空港に行く際、確実にクレジットカードが使えます。
関空に行く際の南海電鉄ではすでにタッチ決済乗車を実施しています。
ただ、あやふやな事前調査で交通機関を利用し、カード払いできないと大事件です。
2については、三井住友カードがこの方法を明文でOKとしています。
JR大森駅から羽田空港へ、(リムジンバスでない)路線バスが走っていますが、三井住友カードからチャージしたSuicaでバスに乗っても保険適用になるわけです。
ただ、これで「保険が適用になった」と果たして安心できるでしょうか?
それに三井住友カードの場合、「クレジットカードでチャージした証明」「交通系ICで公共交通機関を利用した証明」が保険申請の際に必要です。
そう考えると、証明の容易さにおいて切符購入やタッチ決済のほうが無難ではあるでしょう。
利用付帯カード組み合わせの具体的な例
「三井住友ゴールド(NL)」と「楽天カード」の2枚で実際に保険を組み合わせてみます。
次の方法で保険を重複適用します。
・ 三井住友ゴールド(NL) … JR東日本の駅券売機で成田空港までのJR乗車券を購入
・ 楽天カード … ツアー代金を決済
なお、夫婦二人の旅行を想定しています。
2種類のカードそれぞれについて、夫婦で本会員と家族会員という設定です。
注意点がいろいろあります。
・ どちらのカードにも、家族特約(家族への補償)なし
・ つまり、家族カードの持てない未成年者には保険は適用されない
・ 楽天カード本カード会員が全員分の旅行代金を支払うと、家族カード会員にも保険が適用される
参照:楽天カード
・ 楽天カードは空港までの公共交通機関利用での保険適用ができないので、ツアー代金を支払う
・ 三井住友ゴールド(NL)で空港までの電車賃を、指定券券売機でカード決済する場合、家族会員分もまとめて1人で購入してもOK
参照:三井住友カード
・ 三井住友ゴールド(NL)は、入手の初期状態では海外旅行傷害保険が付いているが、他の無料保険に替えられる。替えていない人が対象
2枚のカードの保険を重複して適用した結果、補償内容はこうなります。
・ 治療費用 … 楽天カード200万円 + 三井住友ゴールド(NL)100万円 = 300万円
・ 賠償責任 … 楽天カード3,000万円 + 三井住友ゴールド(NL)2,500万円 = 5,500万円
三井住友ゴールド(NL)は、一度年間100万円利用を達成すると年会費永年無料です。
年会費無料のカード2枚の組み合わせで、海外での治療費用300万円の補償となるわけで、悪い内容ではありません。
カード保険の適用範囲と補償額
カード付帯保険は無料ですし、旅行のつど入らなくていいのは簡単便利です。
ただしその分、落とし穴もあります。
次の点に気をつけましょう。
・ 家族で行く場合、保険が適用される範囲に注意
・ 補償額(特に海外での医療費)上限に注意
・ キャッシュレス治療は受けられない場合が多い
・ 疾病死亡補償はない
家族に適用される?
家族カード会員については、本カードでの旅行代金決済があれば、適用されることが多いものです。
ただしエポスカードのように、家族カードが最初から存在しないものもあります。
夫婦両方とも本カードを持っているのは普通です。
この場合、配偶者のひとりが旅行代金全体を支払った場合、もうひとりにどの補償があるのかは気をつけましょう。
・ 本カード会員としての補償
・ 家族カード会員としての補償
・ 家族としての補償(家族特約)
特に未成年に注意
高校生未満の子供は、自分のクレジットカードも持てず(18歳ならセゾンカードや楽天カードは可能)、家族カードも持てません。
クレジットカードの保険しかない場合、未成年者に適用されるのは家族特約に基づく補償だけです。
これは(家族特約がついているとして)おおむね家族カードよりも低補償です。
補償額は足りている?
保険の「死亡・後遺障害」の補償の数字を見てもあまり意味はありません。
最も大事なのは、治療のための費用です。
ケガや病気で、実際に現地の医者にかかる場合の支払をカバーできるかどうかです。
この額ですが、クレジットカードの保険の場合、50万~200万程度が主流です。
複数の保険を合算したときの、金額の評価です。
・ 50万円 … 気休めレベル
・ 100万円 … 心配
・ 200万円 … 不足気味(場合によって許容範囲)
・ 300万円 … ひと安心レベル
・ 500万円 … ほぼ安心(プラチナ以上にしかない)
普段日本で、保険証を出して(3割負担)医療費を支払っている際の金額イメージはリセットしたほうがいいでしょう。
円安が進んでいるのでなおさらです。
海外ではなにが起こるかわかりません。
手術が必要で、その費用が1,000万円を超えることもあるのです。
とはいえ保険というもの、必要以上に事故・事件を恐れて対策するのが正解ということでもないので、上記の指標としてみました。
医療費以外では、第三者への損害賠償の額も重要です。
海外では、生活習慣の違いで思わぬ失敗をして、他人に損害を与える可能性があります。
キャッシュレス診療はなし
キャッシュレス診療とは、治療を受ける当人が費用を一時立て替えなくていいということです。
保険商品に入ると、保険会社が現地の医療機関に直接費用を支払ってくれます。
クレジットカードの場合、大部分でいったん建て替える必要があります。
これは大事な要件ですが、普通口座に数百万円いつもあるのなら気にしすぎることはないかもしれません。
保険商品加入がおすすめ(安いプランでいい)
クレジットカード保険の利用方法と、不安な点も見ました。
やはり、安いプランでいいので保険商品には入っておくことを強くおすすめします。
保険商品に入ったときのメリット(安心感)です。
・ 海外での医療費上限は、安価なプランでも500万円。無制限のものが多い
・ 家族補償の範囲が明確で、未成年の子供の同行でも安心
・ キャッシュレス診療に対応
・ 航空機遅延の際の宿泊・食事等の補償にも対応
・ 疾病死亡補償もある
無料であるクレジットカード保険に意味がないというわけではありません。
保険商品に入っておけば、カードの補償額は上乗せとして機能します。
カードのおかげで、安価な保険商品を選べると考えればいいでしょう。
低額の保険商品の医療費補償が500万円で、カード保険が200万円なら、合計700万円の補償額となります。
基本部分を保険商品にしておけばいいのです。
低額の補償の商品にはいろいろありますが、PayPayほけんの海外旅行傷害保険をおすすめします。
PayPayアプリから簡単に入れます。
利用付帯の重複適用の方法はあるが、保険商品にも必ず
ゴールド以下のクレジットカードはおおむね利用付帯になってしまいました。
それでも工夫すれば、複数のカードを合算できます。
とはいうものの、不安を一掃するため、ぜひ保険商品にも加入したいものです。低額でOKです。