今回は、住宅ローンにおける変動金利と固定金利のどちらがよいかを考えます。
「投資」より、借金の返済を急げ! 日銀「マイナス金利解除」で金利が上がる可能性大
住宅ローンとは言わずもがな、マイホームの購入資金を金融機関から借りることです。
日銀は本年3月19日の金融政策決定会合で、マイナス金利政策の解除を発表しました。
住宅ローンの固定金利は上昇に転じています。
そして変動金利も上昇気配です。
まだ上がっていない変動金利を選択するか、以前より少し高い固定金利を選択するか。
大変悩ましい状況です。
私はFPとして、月々の返済が多少高くなっても固定金利をご提案します。
私自身も固定金利にて、住宅ローンを返済しています。
今回はその理由について、申し上げます。
変動金利の現状
2000年以前より、変動金利は現在のような低い状態でした。
参照:フラット35
当時から変動金利を利用していた人は、かなりのメリットがありました。
もしも現在から35年間金利が変わらないとして、変動金利について固定金利と比較しながらシミュレーションします。
住宅ローン比較サイト、モゲチェックを調べると、5月現在の変金利の最安値は0.29%、35年固定金利の最安値は0.95%です。
計算を単純化するため、借入3,500万、変動金利0.3%、固定金利1%、借入期間35年とします。
35年間金利が変動しなければ、月毎返済額の差1万1,244円、その差は472万円です。
変動金利(0.3%)は、月毎返済額が8万7,795円、返済総合計は3,687万円
固定金利(1%)は、月毎返済額が9万9,039円、返送総額は約4,150万円
変動金利を利用し続ければ、472万円得します。
変動金利を勧めない理由
過去変動金利を利用していた方は、かなり「得」をしました。
しかし私はマイホームを購入する方に、今後も変動金利の利用を勧めません。
3つの理由で、考えます。
(1) 今後、変動金利は下がる可能性はほぼない
低金利の変動金利は、今後上がる可能性があっても、下がる可能性はほぼないことです。
よって今後金利負担は増えることあっても、減ることはないと思います。
変動金利を利用して住宅を購入するということは、購入価格が確定しないということ。
現在金融機関は損益度外視で、変動金利を設定しています。
自行に給料振込を設定してもらい、納税・投資・保険・相続・不動産売買などの機会を囲い込むため、優遇金利を長年導入しています。
よって多少はともかく、利息が下がることは現実的にあり得ません。
現在インフレ傾向であり、日銀が「アベノミクス」修正を検討し、金融機関の優遇金利制度が変われば、長期的には変動金利は上昇する可能性が高いです。
(2) 固定金利より多く借りられる可能性があることも
超低金利の変動金利を使えば、固定金利より多く借りられる可能性があることです。
シミュレーションを単純化するため、月毎返済可能額10万、借入期間35年とします。
返済総合計は4,200万です。
変動金利(0.3%)は、借入可能額が3,986万。
固定金利(1%)は、借入返済可能額が3,542万。
低い変動金利を利用することにより、固定金利を利用するより444万多く借りることができます。
元利均等住宅ローンは、金利、借入期間、月毎返済可能額を定めれば借入可能額が算出できます。
借入期間は年齢によって最大35年、月毎返済可能額は属性によってきまるので、金利が低ければ、借入可能額を多くすることができます。
超低金利の変動金利を使った借入可能額は、借主の与信能力を超えています。
厳しく申し上げれば、変動金利を使えば借主(買主・施主)に分不相応な家を手に入れることができます。
ただし、金融機関は変動金利での融資額を算出する際に、貸出金利(ここでは0.3%)でなく、審査金利を採用する場合があります。
審査金利は原則非公開だが3%前後といわれており、上記シミュレーションだと、借入限度額は2,598万程度になります。
住宅金融支援機構が発表した「2023年度 住宅ローン貸出動向調査結果P27」では、審査金利による審査は、38.5%、貸出金利での審査は36.5%、条件によりことなるが24.9%となっています。
(3) 変動金利が上昇したときは、対応策がない
変動金利が上昇したときは、対応策がないことです。
もし変動金利が上昇し、返済額が増えるとします。
金利の上昇を避けるため、固定金利に契約変更すればよりと考える方がいるかもしれません。
しかし実際には、変動金利より固定金利の方が早く上昇します。
また変動金利は固定金利より低いので、変動金利から固定金利への変更は相当の金利上昇になります。
変動金利から固定金利への変更は、月毎返済額が相当上昇します。
返済額の軽減はできません。
購入時の設定を変動金利すれば、よほどの計画や資金がない限り、最後まで変動金利を利用せざるをえません。
125%ルールなどがありますが、住宅ローンを完済するためには、新たな資金が必要です。
今後も低金利が続く保証はない
2000年以後、変動金利にて住宅ローンを組んだ方は、低金利のメリットを享受してきました。
しかしそれは、偶然の結果です。今後も低金利が続く保証はありません。
逆に金利が上昇すれば、増えた返済額を払い続けるか、手持ちの資金で追銭するしかありません。
返済額増大を考えれば、変動金利から固定金利へ変わることも実質上不可能です。
耐えられなくなれば、抵当権が実施され自宅を失うことになります。
自宅を失うかどうかが、その時の経済状況など他者に委ねられています。
なので、私は固定金利での住宅ローンをお勧めします。
マイホームが多少小さくても、交通が多少不便でも、固定金利で購入すれば、少なくても計画以上の費用は必要ありません(固定資産税やリフォーム費用を除く)。
まず固定金利で借入可能額(予算)を作成して、資金計画内(払いきれる金額)の住宅を検討するのが肝要です。
もしハウジングセンターなどを予算作成前に訪問し、買いたい家、建てたい家をえらんでしまう。
高額なマイホーム費用の金作が苦しくなり、変動金利を選択する。
この流れはだめです。はよろしくありません。
「家」は家族のよりどころであり、資金に余裕がなければ「守り」に徹するべきです。
いつ上がるかわからない変動金利より、少しでも安い固定金利を見つけることに注力したほう賢明と考えます。