健康保険、介護保険、厚生年金の保険料の他に給与明細から天引きされるものとして雇用保険料があります。
雇用保険は労災保険とあわせて労働保険と呼ばれますが、給与だけでなく賞与支給時も給与天引きされます。
今回は雇用保険料や制度の活用方法について解説します。
雇用保険料とは
雇用保険制度を運営するにあたっては当然、保険料等で財源を確保することが必要です。
雇用保険料とは、端的には雇用保険の掛金のことを指し、業種ごとに保険料率は異なるものの、労働者と事業主がそれぞれの負担割合に応じて納めるべき義務を負います。
また、労働者目線では毎月支給される給与や賞与が支給される場合においても天引きされますが、当然これは雇用保険加入者のみですので、そもそも雇用保険に加入できない代表取締役や週に20時間を下回る労働契約締結者は天引きされることはありません。
労災保険料とは
雇用保険と同じ労働保険上の制度である労災保険は全額事業主が負担しますので労働者が負担することはありません。
これは制度の歴史を辿ると理解が深まりますが、本来業務上の理由で負傷し疾病を負った場合には事業主によって災害補償の義務があったものの、事業主の経営的な状況によっては当該補償が十分にできないこともあるため、国が事業主に代わって補償をすることとなります。
よって、本来は事業主が保障すべきところを国が事業主に代わって補償するという性質上、労災保険料については全額事業主負担との理解になります。
雇用保険料率の改正
近年、コロナ禍を切り抜けるべく助成金の要件拡大等の影響もあり、雇用保険料率は上昇傾向にありました。
尚、令和5年度は年度の途中で両率が変更されることもあり、実務上も大きな影響がありました。
なお、令和6年4月以後の保険料率は令和5年度と同様ではあるものの、来年度以降は未定です。
雇用保険制度の活用方法
一般的に多くの方が対象となり得るケースは「失業保険」受給時と考えられます。
退職して次の就職先が見つかる間の生活補填として位置付けられ、比較的多くの方に馴染みのある制度と考えられます。
他には育児休業期間中の生活補填として位置付けられる育児休業給付金が挙げられます。
育児休業給付金は失業保険同様に性別不問で受給可能な給付金であり、失業保険同様に非課税給付とされています。
育児休業期間中は法律上、無給であることから、収入が途絶えることが多く、育児休業給付金と配偶者の給与等が生活していくための収入源となるため、重要な意味を持ちます。
他にも家族が要介護状態となり、一定期間仕事を休まざるを得なくなった場合に活用できる介護休業給付金制度もあります。
この制度も育児休業給付金同様に介護休業期間中は法律上無給であることから、収入が途絶えることが多く、介護休業給付金は生活していくための収入源となるため、重要な意味を持ちます。
介護休業は育児休業より短い93日ではありますが、最大3分割が可能ですので、家族と相談しながら計画的に取得し、介護休業給付金についても賢く活用したいものです。
再就職時のお祝い金
失業保険が一定期間以上残った状態で再就職した場合に「お祝い金」の位置づけとして再就職手当が給付対象となり得ます。
失業保険を残した状態で再就職するとせっかく得た失業保険の受給権の権利がもったいないとの考えになってしまう気持ちにもなりますが、それでは本末転倒ですので、このような制度も設けられています。
ハローワーク等では相談もできます
雇用保険制度は失業保険以外にも多くの制度が設けられているものの、一般的には失業保険以外はイメージが湧かないという声も少なくありませんが、ハローワーク等では相談もできますので、自身の置かれた状況を踏まえて相談してみることも有用です。