節税などを理由に、生前贈与をするか迷っている方もいるかもしれませんが、何となく贈与するのは少々もったいないです。
贈与財産の種類や金額は、贈与した際の影響を理解すれば自ずと定まりますので、今回は生前贈与で損をしないために知っておくべきポイントを5つご紹介します。
1. そもそも生前贈与は何のためにやるのか
生前贈与とは、生前に財産を無償で渡すことをいいます。
贈与者が亡くなった際に効力を発揮する贈与(死因贈与)も存在しますが、一般的に「贈与」の表現を用いる場合、生前贈与を指すことが多いです。
財産を渡す人は「贈与者」、
財産をもらう人は「受贈者」といい、
贈与は両者の同意の下で行います。
贈与で渡す財産の種類に制限はありませんので、お金だけでなく、車などの動産や債券などを贈与することも可能です。
2. 生前贈与を行う主な理由
生前贈与が行われる主な理由は、
受贈者に財産を自由に使わせる目的と、
相続税を節税する目的
があります。
たとえば、小さいお子さんは自身でお金を得る手段がないので、子や孫が玩具などを自由に購入できるようにする目的で、親や祖父母はお年玉を渡します。
一方、相続税は被相続人(亡くなった人)の相続が開始した時点の財産に対して課される税金です。
被相続人の所有財産が少なければ、相続税として支払う金額は小さくなりますので、節税をする目的で相続人等に前もって財産を移動させるケースもあります。
3. 生前贈与は贈与税の対象になる
贈与税は贈与により財産を取得した際に課される税金であり、贈与金額が一定以上となった場合、受贈者が贈与税の申告・納税手続きをしなければなりません。
生前贈与は基本的に贈与税の課税対象となるため、何も考えずに多額の財産を贈与してしまうと、思わぬ税負担が強いられる可能性があります。
ただし、贈与税には110万円の基礎控除額が設けられていますので、お年玉や誕生日プレゼントの贈与を受けたとしても少額であれば贈与税は課されませんし、贈与税の申告手続きも不要です。
4. 生前贈与の節税効果は人によって大きく異なる
贈与税は110万円までなら非課税であることから、毎年少しずつ贈与することで相続税の課税対象財産を減らす方法もありますが、相続税は相続財産が相続税の基礎控除額以内であれば税負担は発生しませんし、申告手続きをする必要もありません。
<相続税の基礎控除額の計算式>
3,000万円+600万円×法定相続人の数=相続税の基礎控除額
相続財産が多い方は生前贈与をすることで相続税を節税することができますが、相続財産がそこまで多くない方は、相続税の節税目的で生前贈与を行うメリットは少ないです。
たとえば相続人が3人のご家庭であれば、基礎控除額は4,800万円ありますので、相続財産が4,800万円以内に収まるなら相続税の支払いは生じません。
5. 贈与金額が大きい場合は特例制度の活用も検討すること
贈与税の税率は、課税価格が大きくなるほど上がりますので、多額の贈与を受ける際は特例制度の活用も検討してください。
贈与税の代表的な特例制度としては、夫婦間で自宅の名義変更や購入資金の贈与をする場合、最大2,000万円まで非課税になる「おしどり贈与の特例」があります。
子や孫に対して贈与するケースでは、新居の購入資金や教育資金、子育て資金に対しての特例制度などを適用できますし、特例制度を上手く活用できれば贈与金額が1,000万円を超えたとしても贈与税を支払わずに済みます。
なお、特例制度は確定申告等で適用する旨の申請が必須となりますので、大きな金額を贈与する際は、事前に活用できそうな特例制度と適用要件を確認してください。