大学生となれば学業の合間にアルバイトをすることが多く、場合によってはそのままその「職場」に就職するということも考えられます。
このような場合、雇用保険はどのように扱われるのでしょうか。
今回は卒業後も引き続き働く場合の公的保険について解説します。
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雇用保険上の考え方
「失業保険」で知られる雇用保険ですが、原則として1週間の所定労働時間が20時間未満の場合は適用除外となります。
また、「昼間学生」の場合、就労ではなく、もはや学業が本分であることからも同じく適用除外となります。
ただし、昼間学生ではなく、大学の夜間学部の場合は被保険者となり得ます。
イレギュラーケースとしては、昼間学生であっても卒業見込み証明書を有する者であり、卒業前に就職し、卒業後も引き続き当該事業に勤務する予定の者(卒業前に内定を出されておりそのまま就職するケース等)や休学中の者に該当するのであれば、被保険者になり得ます。
注意点として、内定を受けており、そのまま働き続けるからといって画一的に雇用保険加入対象と言うわけではありません。
それはそもそも所定労働時間が週20時間未満であれば、労働時間の部分で雇用保険加入要件を満たしませんので、所定労働時間の変更を行わなければ対象にはなりません。
また、この「週20時間」に関しては契約上と実際の勤務状況に乖離があることも少なくありません。
この場合、乖離していることに合理的な理由がない場合は実際の勤務状況によって判断されることがあります。
実務上の留意点
もちろん雇用保険に加入することで万が一、失業状態となった場合に失業保険によって一定期間、再就職活動中の生活補填を得られる等の安心感を得ることができます。
他方、毎月保険料が給与天引きされるだけでなく、保険料は会社負担もあり、労働者負担と会社負担では後者の方が負担割合は多いという特徴があります(社会保険は原則として労使折半)。
そうなると、労働者の希望のみで加入をきめるのは不適切であり、そもそも契約上と実態が乖離している状態では加入要件を満たさないと判断されることもあります。
もちろん加入当初は要件を満たしていたものの、時間の経過につれ、徐々に要件を満たさなくなるとういうことは考えられますが、その場合、将来的に喪失の手続きが発生することになり、副次的に失業保険の受給資格要件を得られなかったということも考えられます。
また、所定労働時間とはその企業で通常働くべき時間と解されます。
よくある誤解として、残業時間を含めて「週20時間」以上では雇用保険の加入要件を満たしません。
そもそも残業時間とは契約上の労働時間から外れた時間であり、通常予定されている契約上の時間とは言えません。
卒業後、当初は週に20時間未満の契約であったものの、恒常的に週に20時間以上となるため、契約の変更を行ったのであれば、おのずと所定労働時間も変更となるため、雇用保険の適用対象となります。
もちろん逆のケースも想定され、業務量が減り、週に20時間以上の契約から19時間以下の契約となった場合は所定労働時間が週20時間以上の要件を満たしませんので、資格を喪失することとなります。
また、労働基準法で規定する法定労働時間とは1日8時間・週40時間とする労働時間の時間の上限のことであり、その意味は異なります。
学生の場合、社会人とは分けて考えなければならないので注意
雇用保険は「失業保険」以外にも教育訓練給付金や介護休業給付金等、失業状態を補填する給付だけでなく、労働に近接する諸問題に対して複数の給付制度が創設されています。
もちろん、強制加入の公的保険という側面もありますので、要件を満たした場合には加入の義務が生じますが、学生の場合は、社会人とは分けて考えなければならない点があるため、企業の担当者としても注意が必要です。(執筆者:社会保険労務士 蓑田 真吾)
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