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【妻のパート収入どちらが得か】それぞれの壁を意識した働き方をするか、社会保険料等を支払っても公的年金の受給を選択するか


妻がパートなどで働いている場合、いつも気になるのがその年収額です。

その理由は、配偶者である夫の扶養範囲で働けば、社会保険料の負担もなく、配偶者控除や配偶者特別控除などの所得控除を受けられるからです。

ここでは、給与所得に特定したいくつかの壁の種類と年金に加入する条件の変更(壁が崩れる方向)および年金保険料や健康保険料などの社会保険料を負担する場合と、将来、公的年金を一生涯受給する場合と、どちらが得なのか3つの年収額毎に試算してみます。

まず、損得を試算する前に、簡単な税金の仕組みとそれぞれの壁で求められる要件について触れていきます。

妻のパート収入どちらが得か

社会保険の保険料が9月から「上がる人、変わらない人、下がる人」の違い

所得税や住民税の課税の仕組み

まず、所得税については、毎年年末頃に受取る「給与所得の源泉徴収票」を見れば確認ができます。

この図表は源泉徴収票と所得税の計算式を対比して表示しています。

【所得税の計算の仕組み】

住民税の計算の仕組み

住民税の計算式は基本的には所得税と同じですが、異なる点は、所得控除額と税率です。

所得控除は、項目名は同じですが、社会保険料控除や医療費控除など一部を除いて控除金額が異なります。

控除額は、例えば基礎控除43万円、配偶者控除33万円、扶養控除(一般)33万円などの他、控除額の上限額、納税者や配偶者などの所得金額、年齢などに応じて所得税と異なります。

また、住民税は、一律10%の税率で課税される所得割と原則として一定の所得以上の人全員に一律※5,000(都道府県民税1,500円、区市町村民税3,500)が課税される均等割の二つがあります。

※均等割は2024年から一律4,000円となる予定です。

住民税の課税対象期間は、前年(1月~12)の所得額を基に計算し、住民税額が決定されます。

また、納付時期は今年の6月から翌年の5月までの1年間で、支払いは毎月給与から天引きされます。

年収の壁 いくつかの種類とその要件

年収の壁のうち、税金の壁は100万円・103万円・150万円・201万円など、また、社会保険の壁は106万円・130万円などがあります。

これらの収入の壁と税金や社会保険に関係する要件などについて触れてみますが、ここでは、夫の年収が1,095万円(所得金額900万円)以下の場合を前提としています。

住民税の負担が発生する100万円の壁とは

妻の収入が100万円以下の場合は、給与所得が45万円以下となるため、所得税および住民税は非課税となります。

ただし、均等割については自治体によってその取扱いが異なりますので、該当する場合は自治体に確認することをお勧めします。

最も関心の高い103万円の壁

 上の図表を利用して103万円の壁といわれる年収を例に、所得税を計算してみます。

妻の年収が103万円の場合は、給与所得控除が55万円(年収162万円まで)、全ての納税者が無条件で適用される所得控除の基礎控除48万円なので、計算式は103万円-55万円-48万円 = 0円の課税所得額となります。

一方、住民税は基礎控除が43万円なので、計算式は、103万円-55万円-43万円 = 5万円、なので住民税額は5万円×10%5千円=1万円となります。

つまり103万円以下の給与収入は所得税が非課税となりますが、住民税は上記の通り、課税されます。

 106万円の壁と130万円の壁は、社会保険の加入要件の一つ

 「社会保険に加入する」とは「夫の扶養から外れる」ということで、その場合は、妻本人が社会保険料を負担するという意味です。

なお、年収額の基準は、基本的に昇給や所定労働期間の増加など雇用条件が見直された場合に計算されます。

106万円の壁

まず、106万円の壁は、条件付きですが夫の扶養から外れ、妻の勤務先(社会保険の適用を受けている事業所)社会保険に加入しなければなりません。

その主な要件は、妻の所定労働時間および所定労働日数が正社員の4分の3以上の勤務形態の場合です。

 ただし4分の3の基準に満たない場合でも、以下の要件をすべて満たす場合は社会保険の加入対象となります。

それは、

・ 週の労働時間が20時間以上

・ 月額賃金が8.8万円(賞与・残業手当・通勤手当などは含まず)以上

・ 学生でないこと

それらに加え、

・ 従業員数の要件は、厚生年金保険の被保険者の総数が101人以上の事業所で働いている(特定適用事業所)又はその総数が100人以下でも社会保険の加入が労使で合意されている事業所で働いている(任意特定適用事業所)のいずれかに該当すること

・ 雇用期間は2か月超、しかし2か月以内であっても条件付きで適用が可能

尚、従業員数の要件は、2024年10月から51人以上に改正されるので、社会保険の加入対象者が更に拡大します。

 130万円の壁

 それは妻の年収が130万円以上になると夫の扶養者と認められなくなるため、夫とは別に年金や健康保険などの社会保険の加入条件が妻に加わります。

また、年収130万円に含まれるものは、賞与、残業手当、通勤手当などで、106万円と計算方法が異なるので少し複雑です。

150万円と201万円は税金の壁

この二つの壁は、夫の会社で適用される配偶者特別控除に関する年収額のことで、所得控除額は妻の年収額に応じて段階的に減少(38万円~3万円)します。

妻の年収が150万円以下の場合、控除額は38万円が適用されます。

また、妻の年収が197万円超201万円以下の場合、控除額は3万円となり、それ額を超えると配偶者特別控除の適用はなくなります。

社会保険料の負担が増えるデメリットより年金を一生涯受給するメリットの方が数倍多い

 さて、ここからは、106万円・130万円・150万円の年収毎に30歳で夫の扶養から外れ、60歳まで30年間働いた場合の社会保険料・税金の負担額、および65歳から余命年齢((88)23年間受給する公的年金額を比べてみます。

下表のとおり、いずれの場合も年金受給額が現役時代に負担している社会保険料や税金を大きく上回っています

これは、10年から20年間働いて年金を受給する場合も同じ傾向です。

社会保険料の負担が増えるデメリットと年金を一生涯受給するメリットについて主なものを以下にまとめてみました。

<社会保険等に加入するメリット>

 ・ 老齢厚生年金および老齢基礎年金(国民年金)が一生涯にわたり受給される

社会保険料等の負担額は所得控除の対象となるため節税効果がある

・ 雇用保険の加入により失業時の失業給付金の受給対象となる

 <社会保険等に加入するデメリット>

 ・ 社会保険等の加入により保険料の負担と税金が増え手取額が減少する

・ 夫の会社で配偶者手当や扶養手当などが支給される場合においては、妻の年収が会社の基準を超えると手当がもらえなくなる可能性がある

・ 妻の年収額が201万円を超えると配偶者特別控除がなくなる

 

さらなるメリットとして、年収の壁を意識しない働き方を推進する目的で、政府は、社会保険料の負担軽減策の一環として、助成制度の導入をこの秋にも実施するとしています。

 今後は、年収の壁を意識しない、または意識しなくても良い働き方になっていくことが十分予想されます。(執筆者:CFP、1級FP技能士 小林 仁志)

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