普段病気やケガをしたときの治療は、健康保険を使って3割負担で済みます。
しかし、歯科医院やがん治療で「保険を使えない治療」をすすめられたことはありませんか。
「保険が使えない治療=自由診療」となります。
そして、保険診療と自由診療の他に、基礎部分については保険が使える混合診療があります。
この3つの診療の違いについて説明をします。
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保険診療とは
保険診療とは、国民健康保険や健康保険等の公的医療制度に加入している人が、全国どこでもどの医院でも同じ内容の診療が受けられることです。
検査や治療費などが決められているためで、窓口では費用の3割を負担します。
また、3割負担が高額になった場合でも、高額療養費制度によってひと月の自己負担上限額が8万円程度(年齢や所得によって異なります)に抑えることができます。
ただし、それぞれの疾患について検査や治療内容が決められているため、「○○の治療をしてほしい」と希望することはできません。
自由診療とは
自由診療とは、保険が適用されない診療のことで、治療費が全額自己負担となります。
美容整形手術、人間ドッグ、インプラントが有名ですが、海外で効果が認められている抗がん剤なども該当します。
厚生労働省が承認していない治療や薬を使用すると自由診療となり、初診にさかのぼって、本来なら保険が適用される診療もすべてが自由診療となり、保険が使えなくなります。
特にがんの場合、治療の途中から承認されていない治療を行うと、さかのぼって保険が取り消されて治療費が高額になってしまいます。
自由診療は、医療機関が自由に金額を決められるため、事前に比較検討をすることも必要です。
混合診療の禁止
混合診療とは、保険診療と自由診療を合わせた診療です。
原則、日本では保険診療と自由診療の併用は認められていません。
そのため、一部でも自由診療を含むと初診にさかのぼってすべて、自由診療となり全額自己負担となります。
なぜ、日本では認められないのかというと、混合診療を認めてしまうと平等な医療を受ける権利である国民皆保険制度の趣旨に反してしまうからです。
保険診療と自由診療の併用が認められている診療
混合診療は、例外として、以下の3つは併用が認められています。
1. 評価療養
新しい治療法や新薬など保険導入のための評価を行うことが必要な療養
・ 先進医療
・ 医薬品、医療機器、再生医療等製品の治験に係る診療
・ 医薬品医療機器法承認後で保険収載前の医薬品、医療機器、再生医療等製品の使用
・ 薬価基準収載医薬品の適応外使用(用法・用量・効能・効果の一部変更の承認申請がなされたもの)
・ 保険適用医療機器、再生医療等製品の適応外使用(使用目的・効能・効果等の一部変更の承認申請がなされたもの)
2. 患者申出療養
患者申出療養は、困難な病気と闘う患者の思いに応えるため、先進的な医療について、患者の申出を起点とし、安全性・有効性等を確認しつつ、身近な医療機関で迅速に受けられるようにするものです。
3. 選定療養
患者が自らの希望によって特別な療養を選ぶことができるものです。
- 特別の療養環境(差額ベッド)
- 歯科の金合金等
- 金属床総義歯
- 予約診療
- 時間外診療
- 大病院の初診
- 大病院の再診
- 小児う蝕の指導管理
- 180日以上の入院
- 制限回数を超える医療行為
- 水晶体再建に使用する多焦点眼内レンズ
先進医療に係る費用について
先進医療は、厚生労働大臣が定めている評価療養のひとつで、自由診療の部分と保険適用の部分がある混合診療の代表的なものです。
先進医療を受けた時の費用は、患者が全額自己負担することになり、医療の種類や病院によって異なります。
「先進医療に係る費用」以外の、通常の治療と共通する部分(診察・検査・投薬・入院料等)の費用は、健康保険が適用され、3割負担で済みます。
例)総医療費が100万円、うち先進医療に係る費用が20万円だったケース
・ 先進医療に係る費用20万円は、全額を患者が負担
・ 通常の治療と共通する部分(診察、検査、投薬、入院料等)は、保険が適用
保険が適用される金額は80万円で自己負担は3割の24万円
(24万円に対して高額療養費が適用されるので、後から一部が戻ってきます)
≪画像元:厚生労働省≫
十分な説明を受けたうえで治療を選択しよう
病気によっては、新しい治療法や新薬を使いたいという患者は多いものです。
しかし、保険が使えないと全額自己負担となってしまいます。
さらに本来保険が適用される治療までさかのぼって自由診療となり、高額の医療費を支払わなければなりません。
そこで、評価療養に該当する先進医療であれば、保険診療と自由診療の併用が認められます。
先進医療は、一般的な保険診療を受ける中で、患者が希望し、医師がその必要性と合理性を認めた場合に行うことができます。
事前に説明を受け十分納得したうえで、治療を選択することをおすすめします。(執筆者:特定社会保険労務士、1級FP技能士 菅田 芳恵)
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