不動産を所有する限り、支払わなければならない固定資産税。
不動産を取得する際も、固定資産税は関わってきます。
税金としての固定資産税は、1月1日時点での所有者が、一年分を支払います。
売買実務では売主が一年分を先払いしているので、日割りで清算することが一般的です。
ここで問題は、清算する際の起算日です。
慣例上、清算の起算日は、1月1日と4月1日の2パターンがあります。
マイホームを購入するあなたにとって、1月1日と4月1日、どちらがお得でしょうか。
マイホームを購入するのは、一生のうち数度かと思います。
なかなか遭遇しないシチュエーションですが、どちらが有利かを知っているか知らないかで、結構な差が出ます。
シミュレーションを行った結果、買主が有利になるのは、1月1日起算日でした。
今回は、知っていると得をする固定資産税の清算方法について、お知らせします。
敷地内だけでなく、敷地周りに電柱が立っている不動産物件は「要注意」
固定資産税とは
固定資産(土地、家屋、償却資産)について、市区町村が固定資産の評価を行い、課税標準額を算出します。
課税標準額に税率をかけて、税額が決定されます。
1/1時点での所有者に対し課税します。
固定資産税額の通知は、市区町村から固定資産の所有者に対し、4月~6月の間に郵送で行われます。
固定資産税清算金と、2つの起算日
固定資産税清算金
売主と買主間の固定資産税の精算は、あくまで商習慣です。
行政は、これについて未経過固定資産税等に相当する額と表現します。
参照:国税庁
清算方法
起算日が1/1であれば、12/31まで。
4/1であれば、翌年3/31までとなります。
固定資産清算は、起算日以後の一年間の固定資産税について、売主が売買日前日まで、買主が売買日当日からの分を案分して負担します。
実務的には、固定資産を先払いしている売主に対し、買主が負担額を支払います。
通知書がない時期
1月~3月までの売買時には、当年の固定資産評価額や固定資産税額は不明です(通知書がまだ届いていないため)。
(1) 納税通知書が届くまで清算を延期する(届いてから精算する)。
(2) 前年度の税額をもとに仮清算して、納税通知書が届いた時に金額が異なっていれば再清算する。
(3) 前年度の税額をもとに清算する(再清算しない)。
どの方法で清算するかは、あらかじめ決めておきます。
起算日が二つある理由
1月1日を起算日とする根拠は、固定資産税は1月1日の所有者に対して課税されるためです。
4月1日を起算日とする根拠は、1月1日の所有者に対して発生する税金は、4月1日から始まる年度分の税金となることによるものです。
不動産業界では関東圏で1月1日、関西圏で4月1日とする傾向があります。
シミュレーション
ある不動産物件の購入時における固定資産税の清算をシミュレーションしました。
固定資産税額は、2022年を33万、2023年を36万としました。
起算日を1月1日と4月1日を並列させ、時系列に並べました。
注意点として、4月1日起算日の1~3月は、2022年の残負担額と、2023年の全額を支払う点です
簡素に申し上げれば、買主1月1日起算日の方が、負担額が少ない。
4月1日起算日は、翌年の1月1日から3月31日までの分、買主が多く負担することがわかりました。
買主は4月1日起算日とすると、1月1日起算日と比べて約3か月分、多く支払うことになります。
固定資産税を1/4(3/12か月分)多く支払うことになります。
不動産仲介者の「おまかせ」にならない
不動産契約は、短時間でいろいろな判断を求められる。
決済場所の確認、住宅ローン手続などです。
同時に、いろんな確認をすることになります。多くの書類をそろえ、手続きが必要です。
このような環境下で、固定資産税額の起算日などは、不動産仲介者の「おまかせ」になってしまいがちです。
筆者の仲介業の経験からは、「不動産の購入時は4/1が起算日だったので、売却時も4/1を起算日」などという売主はいませんでした。
すべて、仲介者同士が、「惰性」で決めていました。
最近は仲介の現場では、1月1日起算日が主流になってきています。
不動産売買では、優位な立場、不利な立場もあるはずです。
それらを踏まえ、ご自身が優位になるように心がけてください。
あなたが買主であれば、何食わぬ顔で、1月1日起算日が常識だと通してみてもよいかも知れません。
あなたが売主であれば、4月1日起算日を、主張してみてください。
無理強いしてはいけませんが、発言するとしないでは、固定資産税清算金が1/4も変わってきます。
ぜひ仲介者に頼んでみましょう。あなたに優位な交渉ができるかもしれません。
ちなみに戸建住宅や分譲マンションが建つ市街化区域では、都市計画税も精算対象になります。
固定資産税額と同じように、対応してください。(執筆者:CFP、1級FP技能士 金 弘碩)
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