マイホームの購入は最も大きなライフイベントの一つですが、住宅資金をローンで利用する場合には、それらに関連した数多くのテーマが存在します。
たとえば、
・ ローンに適用される金利のタイプ
・ 民間ローンとフラット35の違いと特徴
・ 返済年齢・収入基準・融資金額・資金の使途・返済期間・返済方法・一部繰上げ返済・借り換えなどの借入要件
・ ローンに関連する諸費用・頭金、等々
挙げればきりがないほどで、これらのテーマをすべて紹介すれば一冊のガイドブックに相当するボリュームです。
そのうち、ここでは、「ローン金利の種類別のしくみと特徴、およびその見方、これからのローン金利は固定か変動かどちらにすべきか」 をテーマとして紹介します。
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住宅ローン金利の主な特徴と留意点
住宅ローンを借りれば必ず付いてくるのが利息の支払いとなりますが、この利息とは、お金の借り入れに関わる利用料のことで、ローンに付随するコストや借入期間に応じてその金額も異なります。
ローン金利のうち、表面金利は、店頭表示金利と呼ばれている基準金利に金利優遇割引を差引いた金利を指し、利率(パーセンテージ(%))で表示されています。
金融機関のパンフレットやホームページ上で公表している金利は、通常この表面金利を指しています。
また、利息には、貸し手側の金融機関や保証会社などで発生するコストを含んでいる場合があります。
それは、融資事務手数料・保証料・団体信用保険料などですが、これらの諸費用を金利に上乗せしたかたちとなります。
一般的に表面金利と上乗せ分を合わせた金利は適用金利(実質金利)と呼ばれています。
したがって、ローン金利を比較検討する際、これらの諸費用を金利に上乗せする場合は、表面金利だけでなく諸費用も含めた適用金利(実質金利)で判断する方が確実です。
住宅ローンの利用で負担すべき主な諸費用は?
ここでは、住宅ローンの利用でかかる諸費用の特徴について触れてみます。
定率型が主流となっている融資事務手数料
この費用は、住宅ローンの融資を受ける際の事務手続きにかかわる費用のことで、ローンの利用者が金融機関に支払います。
この費用の支払い方法には、「定率型」と「定額型」の2つがあります。
定率型は、借入金額に一定の料率を掛けた金額で、借入額の2.2%(税込み) が一般的です。
定額型は、借入金額に関係なく一定額(4万円前後が目安)ですが、最近では定額型より定率型が主流です。
保証料は利用者負担だが!
この費用は、住宅ローンの返済が出来なくなった場合に備えるための保険料のことで、ローンの利用者が保証会社に支払います。
このしくみは、保証会社が金融機関に代わりローンの保証人となり、仮にローンが返済不能となった場合、保証会社がローン残高を金融機関に支払います。
したがって、保証料はローン利用者の返済を保証するためではなく、金融機関を救済するための費用にほかなりません。
保証料には、借入時に支払う「一括前払い型」と、返済期間中の金利に上乗せして支払う「金利上乗せ型(借入金額の2.2%)」があり、支払い方法は選択可能です。
この費用の負担額については、借入金額や返済期間にもよりますが、一括前払い型の方が金利上乗せ型より少なくなります。
ただ、最近では、「保証料は無料」「融資事務手数料は定率型(借入額の2.2%)」のパターンが多く見られます。
この二つは、負担金額が概ね同額なので、単に費用項目を入れ替えたに過ぎないと考えられます。
したがって、諸費用を検討する際は、融資事務手数料と保証料の合計額をワンセットととして比較することです。
団体信用保険料はフラット35と民間ローンで取り扱いが違う!
団信と呼ばれている団体信用保険は、ローン利用者が万一死亡や高度障害状態になった場合、ローン残額が金融機関に返済される仕組みとなっているので、それ以降負担が残ることがないため家族の生活が保障されます。
団体信用保険は、金融機関によって取り扱いが異なりますが、保険料は、民間ローンの多くの場合、死亡・高度障害保障の一般団信の保険料は金融機関が負担するため無料となっていますが既に金利のなかに含まれています。
なお、利用者の健康状態や病歴(告知書の提出が必要)などにより加入の可否が判断されるため、その点は注意を要します。
また、フラット35は任意加入のため、これが借入の条件とはなりません。
保険料は利用者負担となりますが、健康状態に問題がなければ、万一のリスクに備え団信に加入することが得策です。
ガン・急性心筋梗塞・脳卒中による三大疾病保障、七大疾病保障、八大疾病保障など保障内容が特約の場合などは、保険料の負担が別途発生します。
この保険料の支払い方法には、金利上乗せ型と保険料支払い型の2つのタイプがあります。
このうち金利上乗せ型は目安として借入額の0.2%前後の金利が上乗せされます。
住宅ローン金利のタイプの特徴
ローン金利には変動金利型、期間選択固定金利型、全期間固定金利型の3つの種類がありますが、その種類と主な特徴について述べてみます。
最も多く利用されている変動金利型
変動金利は、文字通り金利の変動によって返済額も増減するため、将来の変動リスクについて経済状況や金利の動向を常にウォッチしていく必要があります。
このタイプの基準とされる金利は、短期プライムレートといって、銀行が優良企業向けに貸し出す際に適用する優遇金利で、貸出期間が1年未満の金利をいいます。
したがって、短期プライムレートが上昇傾向にあるときは、利上げの可能性があると見るべきでしょう。
現在の金利水準については、ほとんどが0.5%前後のレートで、これは他のタイプと比べ低い水準です。
このタイプは、金利が低水準のまま続いている、または金利が高止まり、今後金利の下降が予測される場合などにメリットがあります。
このタイプは、仮に金利の上昇がなければ返済額の負担が少なくて済みます。
また、このタイプは、一定期間ごとに金利が見直される民間ローンに適用される金利です。
元利均等返済を選択した場合の金利は、通常6か月ごとに見直されますが、実際の返済額は5年ごとに変動します。
具体的には、6か月(多くは毎年4月・5月)ごとに1回金利が見直されていますが、5年間は支払う返済額が変わりません。これは5年ルールと呼ばれています。
また、返済額は前回と比較して125%を上限(125%ルール)としているため、返済額が激増すリスクは軽減されます。
これらのルールは、メリットですが、金利が上昇したために未返済となっている分は、この時点で払う必要はありませんが、ローン返済期間の最後に未払利息として清算を求められますので、この点は金利の動向を常に注視しておくことが大事です。
なお、元金均等返済の場合は、これらのルールが適用されませんので注意が必要です。
期間選択固定金利型
これは、変動金利型の次に多く、借入から一定期間が固定金利で、それ以降は、変動金利または変動金利か固定金利の選択が可能なタイプの金利となります。
このタイプは、固定金利の一定期間が長いほど、適用金利は高くなりますが、金利水準の状況に応じて選択可能です。
全期間固定金利型
このタイプは、ローン契約時に設定された金利が返済期間中(1年~35年)変わらない金利で、フラット35のローンが利用可能です。
低金利水準が続いている、または将来的に金利上昇が予測される場合にメリットがあります。
一方、このタイプに影響される金利は、新発10年国債の利回りです。
国債については、国が発行する債券のことで、財源の確保や税収の不足を補うために発行されます。
この国債は、新規に発行される償還期間が10年の国債のことで10年間の債券に適用される利回りのことです。
したがって、新発10年国債の利回りが上昇傾向にあるときは、利上げの可能性があると見るべきでしょう。
現在のフラット35の金利水準(最頻値)については、15年~20年1.33%、21年~35年約1.76%で、これは他のタイプと比べ高い水準です。
これからのローン金利は固定か変動かどちらにすべきか? 今の低金利は不自然な状況
住宅ローン金利タイプのうち、変動金利を選択した利用者は、実に69.9%(住宅金融支援機構の調査:2022年10月)と多くを占めています。
この傾向は、超低金利がここ30年近く続いているので納得する状況ですが、さて、これからはどうでしょうか。
今は、世界的なインフレによって主要国は軒並み政策金利を引き上げています。
翻って、日本の政策金利は、ほとんど上がっていません。というより上げることができないといった方が良いのかもしれません。
その理由の一つとして考えられるのは、増え続ける国債の発行です。
発行残高が1,000兆円を超えている国債は、国の借金なので、仮に金利を1%上げれば、10兆円の利払いが発生する勘定です。
これは、国家予算の約1割を占める金額なのでそう簡単には上げられないのも事実です。
しかし、円安進行が続く又はこれ以上の水準が加速する、および物価上昇が加速する状況になればどこかの段階で利上げせざるを得なくなります。
そうなった場合は、金融機関が一斉に大幅な利上げを行う可能性も十分考えられます。
また、固定金利も同様な動きになることは当然のことです。
このような状況から判断すると、今の低金利水準はまったく不自然です。
どこかのタイミングで変動金利が上昇する可能性は否定できません。
過去の住宅ローンの推移を見ても、1980年代およびバブル期の1990年代初めは8%を優に超える水準の時期もありました。
勿論、先のことは誰も正確に読めませんが、固定金利を選択する方が理にかなっていると考えます。
ここで取り上げている内容につきましては、金融機関ごとに異なる場合もありますので、金融機関および住宅ローン専門のWebサイト等で再度確認することをお勧めします。(執筆者:CFP、1級FP技能士 小林 仁志)
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