通勤途上での傷害、病気、障害、死亡の場合には、労災保険が適用されます。
通勤途上とは、自宅と会社の間を合理的な経路で通勤している場合です。
合理的な経路とは、回り道をしない最短距離であり、一般的には会社に届出をしている経路を言います。
では会社からの帰りにどこかに立ち寄りをしたときは、どうなるのでしょうか。
そこで、立ち寄りについて具体的に説明をします。
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通勤とは
通勤と認められるためには、以下の通勤の要件を満たしていることが必要です。
(1) 通勤によること
まずは通勤によるということです。
(2) 就業場所との関連性があること
寝過ごした遅刻やラッシュアワーを避けるための早出などは、始業時間と差があっても就業との関連性は認められます。
しかし、午後からの遅番なのに、朝から出かける場合など就業開始時刻とかけ離れた時刻に会社に行く場合は、関連性がありません。
(3) 自宅と就業場所との往復であること
単身赴任の場合は、今の住居と家族の住む住居のどちらもが住居と認められます。
だから家族の住む住居から会社へ、今の住居から家族の元へすべてが往復となりますので、単身赴任者にとっては安心です。
(4) 合理的な経路及び方法であること
合理的な経路とは最短な経路であり、合理的な方法とは、最短な経路を使った公共交通機関や自転車、自動車などです。
会社員や公務員の場合、会社に申請をしている通勤経路となります。
ただし、会社に届けている手段ではなく、別の手段で通勤した場合はどうなるのでしょうか。
例えば会社にはバス通勤と届けていて、実際には自転車で通勤している場合には、途中で転んでケガをすると労災の対象にはなります。
なぜなら通勤手段は異なっていても会社への通勤途上のケガだからです。
しかし、この場合は、会社から通勤手段が異なっているので指導とともに通勤手当を返すように言われるでしょう。
実際に通勤手当を搾取して新聞紙上をにぎわしている例は数多くあります。
ただし、たまたま雨が降っていたので車で送ってもらったとか、電車が遅れていたのでバスにしたとか、事情があれば労災が適用されます。
(5) 業務の性質を有するものでないこと
業務の性質を有するものは、業務災害となります。
例えば、出張先や顧客先から会社に戻る場合は、通勤災害ではなく業務災害となります。
また、自宅から直行直帰で仕事をする場合も業務災害です。
通勤途上での立ち寄りはどこまで認められる?
通勤の途中で逸脱(合理的な経路をそれること)したり、中断(通勤とは関係のない行為を行うこと)をした場合には、原則として逸脱または中断の間及びその後の往復は通勤とされません。
しかし、以下の2つの例外があります。
【例外1】 ささいな行為
・ 近くにある公衆トイレを利用した
・ 公園で短時間休憩をした
・ 経路上の店でごく短時間お茶を飲んだ
【例外2】日常生活上必要な行為をやむを得ない理由により行うための最小限度のもの
最小限度とは、逸脱・中断の原因となった行為の目的達成のために必要とする最小限度の時間にあたります。
・ 日用品の購入
・ 選挙の投票に立ち寄る
・ 独身者が食堂に立ち寄る
・ スーパーで食料品を購入する
・ 医院(鍼灸・柔道整復師もOK)にて治療を受ける
・ 書店・美容院などに立ち寄る
立ち寄りで注意をしたいこと
日常生活の上で必要な行為をするために立ち寄ることは、認められています。
仕事帰りに夕食のおかずを買ったり、歯医者に行ったり、本を購入したりする行為です。
だからといって、何もかもが認められているわけではありません。
まず、注意したいのが時間です。スーパーで食料品を購入するだけなら短時間で終わるでしょう。
しかし、食料品の他に洋服を見たりして時間がかかってしまうと労災として認められられにくくなります。
2つ目は、立ち寄り先から通勤経路に戻ることです。
歯医者に立ち寄った場合、通勤経路上にあるとは限りません。
少し経路を外れることが多いでしょう。
治療が終わり自宅に帰る時には、いくら別の経路が近くても元の通勤経路に戻らなくてはなりません。
別の経路で事故にあっても通勤途上としての労災は適用されません。
育児・介護のために経路から外れることは認められる
子どもを保育園に送迎するために通勤経路から外れてしまっても、自宅―保育園―会社の間は、労災が適用されます。
また、親の介護のために時々会社の終了後に実家へ立ち寄っている場合も、自宅―会社―実家-自宅と労災の対象となります。
育児と介護は、大変なので優遇されているのです。
ちょっとした立ち寄りは認められています
労災が適用された通勤災害は、どこの会社でも結構あるのではないでしょうか。
駅の階段から落ちたケースや通勤電車で押されて肩を強く打ったなどのケースです。
通勤経路上のケガや病気にしか労災は適用されるわけではありません。
ちょっとした立ち寄りは認められています。
労災が適用されれば、医療費は無料で、さらに会社を休んだ場合は休業給付があります。
特に仕事帰りに食料品を購入することに悩んでいる人は、短時間であれば通勤途上ということで労災の対象となりますので、安心してください。(執筆者:特定社会保険労務士、1級FP技能士 菅田 芳恵)
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