投資初心者の多くがつみたてNISA制度を活用して積立投資を実践していることと思います。
また、来年から始まる新NISAでも積立投資を継続していこうと考えている方も多いのではないでしょうか。
そんな積立投資で人気の株価指数がS&P500です。
参照:SBI証券
例えばSBI証券のつみたてNISA月間積立設定件数ランキングでも上位にS&P500に連動するファンドがランクインしています。
積立設定件数に限らず買付金額でも常に上位の常連となっているS&P500、本記事をお読みの多くの方が実際に投資をされていることと思います。
今回はS&P500に投資をする上で知っておいていただきたいこと、勘違いしがちなことについて解説したいと思います。
「日経平均」vs 「S&P500」 過去5年~30年間、投資していたらどうなっていたか試算してみた
米国大企業500社に均等に投資しているわけではない
S&P500とは米国に上場する企業の上位500社に連動する株価指数です。
これ一本で米国の上位500社全体に投資することができるということでかなりの人気指数となっています。
ですが500社に投資するといっても均等割合で各社へ投資しているわけではありません。
時価総額加重平均を採用しておりますので、各企業の時価総額に応じた割合で投資をしていることになります。
つまり時価総額が小さい企業よりも大きい企業への投資割合の方が大きくなっているということです。
下記は2023年6月のSBI・V・S&P500インデックスファンドの月間レポートの抜粋ですが、企業ごとに投資割合が違うことがご確認いただけるかと思います。
参照:SBI証券
2023年6月の時点ではアップルへの投資割合が全体の7.55%と一番大きくなっており、マイクロソフトが7.00%、アルファベットが3.93%、以下アマゾン、エヌビディアと続いています。
もちろんこの構成割合はその時その時の企業の時価総額によって変動します。
現在はアップルやマイクロソフトといったハイテク銘柄が絶好調なのでこういった情報技術セクターへの投資割合が大きくなっているのですが、この流れが変わると投資割合も大きく変わることとなります。
ちなみに2022年の米国株の不調はこれら情報技術セクターの株価低迷が原因です。
投資割合が大きいセクターの株価が低迷してしまうと他のセクターが堅調であっても大きく下落してしまうことには注意が必要です。
米国上位500社に均等に投資しているわけではないということは抑えておいてください。
米国株へ投資できるのはS&P500だけではない
米国株投資=S&P500という風潮が強いようにも思えますが、米国株へ投資できるのはS&P500だけではありません。
S&P500は先にも解説した通り米国に上場している大企業上位500社に連動する指数です。
S&P500インデックスファンドへ投資することによって米国株の上位ほとんどへ投資できることは間違いありません。
ですが米国全体に投資できるわけではありません。
中小企業まで含めてより広く分散投資をしたいと考えている方にとってはS&P500よりも全米株式インデックスファンドの方が希望に近いでしょう。
冒頭のつみたてNISA月間積立設定件数で9位にランクインしているSBI・V・全米株式インデックスファンドや厚切りジェイソンさんの著書でも紹介されていた楽天・全米株式インデックスファンド(楽天VTI)が人気です。
全米株式インデックスファンドでは約4,000社へ分散投資することができますのでまさに米国全体へ投資するファンドといえるでしょう。
S&P500、全米株式のどちらが優れているという話ではありません。
どちらに投資しても大型株の値動きでリターンのほとんどが決まりますので決定的な違いはありません。
巷ではS&P500の方が優れているという風潮が強いように思えますが、切り取る期間によってリターンはどちらにも軍配が上がります。
どちらに投資するかは好みで選んで問題ないと考えます。
今後もS&P500が最強である保証はない
現在はS&P500が最強指数であることは間違いないでしょう。
ですがこれからもずっとS&P500が最強であるという保証はどこにもありません。
世界の時価総額を振り返ると1900年代初頭は英国が世界のトップでした。
1990年前後の日本のバブル時代は世界の企業の時価総額ランキングの上位を日本企業が独占していました。
また、2000年代は米国株が不調でBRICsをはじめとした新興国株の方がリターンが高かったのは記憶に新しいでしょう。
直近ではS&P500が好調ですが、過去の例からいってもこのままずっと続くと盲信するのは良くありません。
陥落する可能性を認識したうえで投資をするべきだと考えます。
右肩上がりに上昇するわけではない
金融庁や各証券会社で試算できる積立シミュレーションなどでは順調に資産が右肩上がりで上昇しています。
巷でも「投資をすれば資産が増える」ことを誇張して伝えているふしがあります。
もちろん間違いではないのですが、それを参考に積立投資を始めた方は注意が必要です。
「積立投資をすれば順調に資産が増えていく」実際はそんなに単純な話ではありません。
200年代初頭のITバブル崩壊から株価が回復するまで約10年の歳月が必要となりました。
上がり下がりを繰り返しながら長期で見れば成長しているというのが過去の株式相場の動きです。
昨年投資をしていた方なら実感しているかと思いますが、大きな下落に巻き込まれることも計画に入れておかなければなりません。
特に今年、来年で危惧されているのが円高と米国株安のダブルパンチです。
想像以上の資産減少が襲いかかるかもしません。
改めて長期間使わない余剰資金での投資を心がけるようにしてください。
暴落は定期的に襲ってきます。
同じS&P500連動型でもファンドによって手数料に違いがある
S&P500に連動するインデックスファンドならどのファンドに投資しても結果は同じかというとそうではありません。
なぜならファンドごとに手数料が違うからです。
同じ指数に連動するファンドなら投資成績はほぼ同じとなります。
ですが手数料の違いによって実際の実入は変わってきます。
特につみたてNISAや新NISAつみたて投資枠といった長期での投資となるとその差は大きくなっていきます。
同じ指数に連動するファンドだからといってなんでもいいわけではありません。
なるべく手数料の安いファンドを選ぶようにするべきでしょう。
2023年6月現在では
- SBI・V・S&P500
- eMAXIS Slim米国株式(S&P500)
のどちらかを選んでおけば間違いないといえます。
為替の影響を受ける
S&P500は米国の株価指数です。
インデックスファンドへ投資している場合は円で投資し、円での評価額を見ることになるので一見わかりづらいですが、円からドルそしてドルから円の交換が発生しています。
2022年の米国相場はかなり軟調で、S&P500も一時20%を超える下落を経験しましたが、インデックスファンドへ投資していた方はそこまで大きい下落の感覚はなかったと思います。
それは為替が円安に動いていたからです。
円安に動くことによりドル建資産の円評価額は上昇することになります。
ドル建資産の減少幅よりも円安幅の方が大きければ資産は減らないどころか増えることになります。
2022年においては大きく円安が進行したことによってS&P500に連動するインデックスファンドもダメージを軽減することができました。
円安の大きな要因は米国の利上げと日本の金融緩和政策維持です。
日本と米国の金利差が開くことによって円安が進行していたのが主な要因としてあげられております。
ですが今年もしくは来年にも米国が利下げに転じるのではないかとする見方が多数となっております。
米国が利下げに転じれば日米の金利差は縮まることになりますので円高に動くことになります。
円高に動くと2022年とは逆にS&P500インデックスファンドの利益も減少してしまいます。
怖いのは円高と株安のダブルパンチが襲いかかる可能性があることです。
例え円高に動いたとしてもS&P500が上昇していればその利益が減少するだけですみます。
ですが円高が進行している上にS&P500も下落していた場合は大きな含み損を経験することも視野に入れておかなければなりません。
S&P500はあくまでも海外資産であること、為替の影響も受けるということは忘れないようにしましょう。
最も大切なことは投資を継続すること
初心者がしがちなS&P500への勘違いについて解説してきました。
どれも特別難しいものではなく、投資を始めたての方でも理解しておいていただきたい事項です。
積立投資は難しい知識がなくても実践できることは確かです。
ですが全く勉強しなくても良いというわけではありません。
最低限の正しい知識を身につけておかないと途中で売却、利益を逃してしまうかもしれません。
積立投資で一番大切なことは投資を続けることです。長く続けるためにも正しい知識は必要です。
投資を続けていくうえで暴落は必ず訪れます。
暴落をうまく乗り切るためにも正しい知識を身につけて投資に挑みましょう。(執筆者:FP技能士2級、証券外務員1種 冨岡 光)
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