相続により不動産を取得し、登記名義を変更する場合、登録免許税を支払わなければなりません。
しかし、一定の要件を満たす相続登記については、登録免許税の支払いが免除されるケースがありますので、今回は相続登記の登録免許税の免税措置について解説します。
令和6年4月1日から不動産の相続登記が義務化!罰則規定もあるので要注意
相続登記をしないで死亡した人に対する登録免許税の免税措置
相続が発生した場合、不動産の名義はその都度変更しなければなりません。
たとえば、
- Aの相続によりBが土地の所有権を取得し、
- Bが相続登記をしないで亡くなった場合、
土地をCの名義に変更するためには、土地の登記名義をAからBに換える手続きが必要です。
登録免許税は登記手続きのたびに発生するため、AからBへの相続登記の際も原則登録免許税を支払うことになります。
しかし、Bがすでに死亡している場合、土地の登記名義をAからBに換えるための相続登記に対する登録免許税は、令和7年3月31日まで免除される措置が実施されています。
相続登記に関する登録免許税は、土地の価額に0.4%の税率を乗じた額ですが、免税措置の対象期間内に該当する相続登記を行った場合、登録免許税はかかりません。
不動産の価額が100万円以下の土地に係る登録免許税の免税措置
相続で土地の名義を変更する場合、不動産の価額が100万円以下の土地であれば、令和7年3月31日までに受ける当該土地の相続による登記に対しては、登録免許税が課されません。
土地の表題部所有者の相続人が受ける所有権の保存の登記についても、不動産の価額が100万円以下の土地であれば、令和7年3月31日まで登録免許税が課さないこととなっています。
登記名義の変更等が不動産の所有権の持分に対するものである場合、不動産全体の価額に持分の割合を乗じて計算した額を「不動産の価額」とします。
全体の不動産の価値が100万円を超えるとしても、登記手続きの対象となる部分の価額が100万円以下であれば、免税措置の対象です。
相続登記の登録免許税の免除を受ける際の手続き方法
登録免許税の免税措置は申請制となっているため、免税措置を受けるためには登記申請書に、免税の根拠となる法令の条項を記載しなければなりません。
免税措置を適用する記載がない場合、登録免許税は免除されませんので、相続人等が自身で登記名義の変更手続きを行う際は、該当する法令条項の記載漏れに注意してください。
免税措置の種類 | 該当条文 |
相続により土地を取得した方が相続登記をしないで死亡した場合の登録免許税の免税措置 | 租税特別措置法第84条の2の3第1項 |
不動産の価額が100万円以下の土地に係る登録免許税の免税措置 | 租税特別措置法第84条の2の3第2項 |
相続登記の免税措置は「飴と鞭」
相続登記の免税措置は、相続登記が未了のまま放置される問題を解消するための対策として実施されています。
免税措置に該当する場合は登録免許税を支払わずに相続登記が行える一方、令和6年4月1日からは相続登記の申請が義務化されます。
義務化には罰則規定も盛り込まれており、正当な理由がないにもかかわらず登記申請をしなかった場合、10万円以下の過料が科されることがありますので、相続が発生した際は忘れずに登記手続きを行ってください。(執筆者:元税務署職員 平井 拓)
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