総務省の発表によると、マイナンバーカードの有効申請受付数の累計は、2023年4月30日時点で9,662万2,275件に達したようです。
これにより人口に対する割合は約76.7%になったそうなので、申請を行った方にマイナンバーカードが行き渡ると、国民の8割くらいが保有することになります。
医療機関においては2023年4月から、マイナ保険証(保険証としての登録を済ませたマイナンバーカード)を利用するためのシステムの導入が、原則義務化されました。
また厚生労働省の発表によると、マイナ保険証を読み取るための顔認証付きカードリーダーの申込率は、2023年4月23日時点で92.1%に達したようです。
政府は現行の保険証を2024年秋頃に原則廃止し、マイナ保険証に一本化するという目標を掲げています。
このままのペースでいくと2024年秋頃までに、マイナ保険証と顔認証付きカードリーダーなどが、かなり普及すると推測されるので、政府の目標は現実のものになるかもしれません。
なおマイナ保険証に一本化された後に、これを持っていない方には、資格確認書が発行される予定です。
この資格確認書があれば医療費の全額を負担する必要はないのですが、マイナ保険証を使った場合よりも、自己負担が高くなる可能性があります。
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保険証が廃止された後の3つの懸念
現行の保険証が原則廃止され、マイナ保険に一本化された後に関して、次のような3つの懸念があるようです。
(1)高齢者施設でのマイナンバーカードの管理
高齢者施設では高い割合で、入居者の保険証を施設が預かり、診療を受ける際には施設の職員が、医療機関の窓口に提示しているのです。
そうなるとマイナ保険に一本化された場合には、マイナンバーカードを高齢者施設が預かります。
マイナンバーカードを紛失すると、医療以外の面でも入居者が困ってしまうため、これを預かった高齢者施設は、現行の保険証よりも行き届いた管理が求められます。
またマイナンバーカードに格納された電子証明の暗証番号を、高齢者施設が把握した場合には、これが漏洩しないように管理する必要があります。
これらに対して十分な対応ができるのかを、高齢者施設の関係者などが懸念しているのです。
(2)電子証明の更新に関するトラブル
マイナンバーカードと電子証明書には、次のような有効期限が設けられているため、更新手続きが必要になります。
マイナンバーカード
発行から10回目の誕生日まで(18歳未満は発行から5回目の誕生日まで)
電子証明書
年齢に関係なく、発行から5回目の誕生日まで
前者のマイナンバーカードはスマホ、パソコン、証明用写真機、郵送などでも更新手続きができます。
それに対して後者の電子証明書は、市区町村の窓口でないと更新手続きができないため、本人または代理人が足を運ぶ必要があります。
マイナンバーカードの交付申請が進んだのは、マイナポイント事業が実施された2020~2023年頃です。
そのため5年後の2025~2028年頃には、電子証明書の更新手続きのために多くの人々が、市区町村の窓口に足を運ぶのです。
これによるトラブルの発生(例えば順番待ちが多くて来庁した日に更新ができない、システムに対する負荷が大きくなって障害が起きる)を、市区町村の関係者などが懸念しているのです。
(3)マイナンバーカードの紛失
2024年秋頃に現行の保険証が原則廃止され、マイナ保険に一本化されるだけでなく、将来的にはマイナンバーカードと自動車免許が、一体化される可能性があります。
そうなるとマイナンバーカードを持ち歩く機会が、以前よりも格段に増えます。
これによってマイナンバーカードを紛失し、必要な時にマイナ保険を使えないことを、懸念する方がいるのです。
インターネットで調べてみると、日本よりもデジタルが進んでいる韓国では、17歳以上の約40%は10年間のうちに1回以上、日本のマイナンバーカードに相当する住民登録証を紛失しているそうです。
また再発行した住民登録証は10年間で、1,650万件にも達したそうなので、再発行にかかるコストの増加も懸念されます。
対策1:マイナンバーカードを早期に再発行できる制度
自営業者やフリーランスなどが加入する国民健康保険では、保険証を紛失した方が写真付きの身分証明書を持って、市区町村の窓口まで足を運ぶと、即日に再交付してくれる場合が多いのです。
また原則75歳以上の方が加入する後期高齢者医療も、同様の取り扱いをしてくれる場合が多いのです。
会社員などが加入する健康保険では、保険証を即日に再発行するのは難しいようです。
ただ中小企業の会社員などが加入する協会けんぽの場合、入社から間もないため、保険証が手元にない方は、その代わりに使える健康保険被保険者資格証明書を、原則として即日に発行できます。
一方でマイナンバーカードを紛失した場合、通常であれば再交付申請から再交付まで、1~2か月くらいかかってしまう場合が多いのです。
これによって医療機関でマイナ保険証を使えない場合、いったんは医療費の全額を、負担する可能性があります。
もちろん後日に手続きすれば還付されますが、例えば緊急手術を受けて医療費が高額になった場合には、当面の資金を準備するのが大変になると思います。
政府はこういった問題などに対応するため、マイナンバーカードの再交付申請から再交付までを、1週間以内(最短5日)に短縮する、「特急発行・交付」という制度の創設を目指しています。
この制度が2024年秋頃までに創設され、かつマイナンバーカードを紛失した方が早めに対応すれば、紛失によって必要な時にマイナ保険証を使えないなどの懸念を、かなり解消できると思います。
対策2:電子証明書の機能をスマホで利用できる制度
2023年5月からはスマホ(当面はAndroidだけであり、iPhoneに関しては交渉中)で、電子証明書の機能を利用できる制度が始まるのです。
これによって近い将来には、医療機関にスマホだけを持っていけば、資格確認の手続きが済むのです。
またマイナンバーカードがなくてもスマホがあれば、コンビニで住民票などを発行できます。
そうなるとマイナンバーカードを持ち歩く必要がなくなるため、この紛失を防げるのです。
もちろんスマホを紛失した際の情報漏洩などが、新たな問題になるかもしれませんが、マイナンバーカードの紛失が心配な方は、制度の利用を検討した方が良いと思います。
スマホがある方に関しては、高齢者施設がマイナンバーカードを預かる必要がなくなれば、これの管理に関する施設の懸念も、軽減される可能性があるのです。(執筆者:社会保険労務士 木村 公司)
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