国は空き家対策の一つとして、空き家対策特別措置法を改正し、管理不全空き家に該当した不動産に対する固定資産税を6倍にする可能性が出てきました。
今回は固定資産税のしくみと、固定資産税が6倍になるケース、そして固定資産税を抑えるためのポイントを紹介します。
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固定資産税のしくみ
固定資産税は土地や建物、償却資産に対して課される税金で、対象となる資産の評価額に税率を乗じて金額を算出します。
固定資産税の計算式は基本的に同じですが、住宅用地や新築住宅などについては個別に軽減措置が設けられており、不動産としての価値が同じでも用途等によって固定資産税の額は変わります。
たとえば居住できる建物の敷地が200㎡以下の場合、課税標準額が6分の1に減額されるため、固定資産税の支払いは通常の6分の1まで抑えることが可能です。
空き家に対する固定資産税が6倍になる理由
固定資産税の軽減措置は住宅用の不動産を対象としているため、住宅用として使用しなくなると軽減措置は適用できなくなります。
実家など、住宅用の敷地として使用しているものは軽減措置の対象なので、固定資産税は通常の6分の1です。
しかし、相続が発生したことで実家が空き家となってしまうと、軽減措置の対象外となり、今までの6倍固定資産税を支払うことになる可能性があります。
市区町村は、条件に該当した空き家を「特定空き家」として指定し、所有者に対して必要な指導を行った後、空き家の改善が見られない場合、固定資産税の軽減措置を撤廃します。
特定空き家は、倒壊の恐れがあるものや、景観が損なわれるものなどをいい、相続以後未使用となっている建物等は対象となりやすいです。
空き家に対する法改正の影響
「特定空き家」の考え方は以前からありましたが、今回の空き家対策特別措置法の改正案で、今後は「管理不全空き家」に該当する場合も、固定資産税の軽減措置の適用対象外となる見込みです。
管理不全空き家は、特定空き家に指定される前段階にある倒壊等の恐れがある不動産をいいます。
税制改正が実施された場合、今までよりも早い段階で固定資産税の軽減措置が撤廃されることになるため、固定資産税の納税額が増加する人は多くなると考えられます。
空き家に対する固定資産税の負担を軽減する方法
住まいの敷地として使用している土地は住宅用地に該当しますので、相続した物件に引越せば、引き続き軽減措置を適用することができます。
固定資産税は不動産等を所有していることに対して課される税金なので、使用していない不動産を手放すことで、固定資産税の支払いを無くすことも可能です。
相続により取得した土地のうち売却が難しいものについては、令和5年4月27日からスタートした、「相続土地国庫帰属制度」を利用することも選択肢です。
空き家対策特別措置法の改正は、2023年中に行われる可能性がありますので、このタイミングで所有不動産を整理するのもいいかもしれません。(執筆者:元税務署職員 平井 拓)
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