昔から中高生が金銭トラブルに遭う事例は後を絶ちませんが、親が中高生だった昭和と令和の今とはトラブルの内容が少し変わっています。
最近の金銭トラブルの背景には、昭和からあった問題と令和ならではの問題が混在しています。
この記事では2つの体験談と、トラブルの原因や親子で行いたい対策について紹介します。
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【体験談1】昭和の金銭トラブル(私の中学時代)
昭和生まれの私が中学時代に起こした金銭トラブルです。
私は友達から好きなアーティストのライブに誘われましたが、親がお金にシビアで十分な小遣いをもらっていないことを理由に断りました。
しかし友達の「代金は立て替えとく。返済は来月でいい」という言葉に甘えて親の許可がないまま購入。
翌日友達の親から、私の親に即時返済を要求する手紙が来ました。
その時点で初めて事情を知った親があわててチケット代を返済しましたが、友達の親からの信用はなくなり、やがて友情も破綻しました。
【体験談2】令和の金銭トラブル(親戚の子)
親戚の子(高校生)が巻き込まれたのは、メルカリ絡みで生じた友達との金銭トラブルです。
親戚の子の親は、メルカリをよく知らないことを理由に、子どもにメルカリアカウントを持つことを固く禁じていました。
そこで苦肉の策として友達のメルカリアカウントで商品を購入してもらい、商品と引き換えに代金を渡す約束をしました。もちろん親には内緒でです。
ところが、友達が親戚の子に商品を渡さないまま代金だけ要求。
親戚の子との間で大きな金銭トラブルになりました。
そこで初めて親の知るところなり、結局は親が出てトラブルを収束させるはめになりました。
昭和と令和の金銭トラブルで共通している親の問題点とその対策
昭和と令和に起きた以上の金銭トラブルで共通している問題点は、
ことです。
自らの子育て経験を含めたさまざまな角度からその原因を探った結果、以下に挙げる親の問題が背景にあることがわかりました。
背景1:親が子どもの言葉に耳を傾けない
子どもの言葉に耳を傾けない親の子どもは親に金銭トラブルを隠す傾向があります。
私の親も親戚の子の親も、父親は激務でほとんど家におらず、母親はワンオペ育児で忙しすぎて子どもの言葉に耳を傾ける暇がありませんでした。
中高生がそのような大人の事情を理解するのは難しいので、「親が自分から逃げている」と感じます。
それを防ぐためには、両親ともに「忙しければ後で子どもの話を聞く時間を作る」などの配慮を行うことが不可欠です。
どちらのケースでも子どもがその経過をたどり、金銭トラブルが起きても親に相談せずに解決しようとして事態を悪化させました。
子どもと話す中でトラブルが起きた際の対処法についても、親子で話し合っておくとよいでしょう。
背景2:親子でお金の話をしない
冒頭で挙げた2つの金銭トラブルは、どちらも親子でお金の話をしていなかったために起こりました。
私自身も子育て中に子どもとお金の話をしなかった結果、子どもが家を出てからお金のやりくりに困る事態を招いたことがあります。
その教訓から、常日頃から親子でお金のやりくりや多額の出費に備えた貯蓄の重要性、金銭トラブルの対処法などについて親子で話をすることは極めて重要だと痛感しています。
背景3:お小遣いの金額は「同じ学校に通う同級生の平均」より低く抑えている
お小遣い額を同じ学校の同級生の平均より低く抑えていると、「体験談1」のようなトラブルが起こりやすくなります。
お小遣いの金額は極力「同級生の平均」に合わせることを強くおすすめします。
令和の金銭トラブル対策で昭和生まれの親がやるべきこと
令和ならではの金銭トラブルへの対応策として、昭和生まれの親がやるべきことについてもお話しします。
(1) 令和のお金の使い方や価値観への理解を深める
昭和と令和とではお金の使い方がまったく違います。
昭和や平成の前半は形があるもの(車やブランド品など)にお金を払う価値があるとされてきました。
しかし、平成の中ごろから令和にかけては形のないもの(オンラインゲーム、サブスク、友人関係など)にお金を払う価値があると考える人が増えています。
それを理解しない親は令和の価値観を持つ子どもからの信用を失い、「体験談2」のようなトラブルが起きやすくなります。
それを避けたければ、親が令和のお金の使い方や価値観への理解を深めるしかありません。
(2) 親子で令和の金融知識を身に着ける
子どもとお金の話をするためには、親子ともに令和の金融知識を身に着けることも必要です。
それにあたっておすすめしたいのが、令和の正しい金融情報を掲載している金融庁のサイトです。
下記のリンクから、中高生~社会人を対象としたさまざまな金融情報をチェックできますの。ぜひご覧ください。
参照:金融庁
(3) 主なキャッシュレス決済やフリマアプリの使い方をマスターする
最近はキャッシュレス決済やフリマアプリを介した子どもの金銭トラブルが増えています。
<中高生が使う主なキャッシュレス決済>
・ スマホ決済(PayPay、楽天Payなど)
・ 交通系ICカードまたはスマホアプリ(Suicaなど)
・ 電子マネー(WAON、nanaco、楽天Edyなど)
<主なフリマアプリ>
・ メルカリ
・ 楽天ラクマ
・ PayPayフリマ
それを防ぐためには、主なキャッシュレス決済やフリマアプリの使い方をマスターし、子どもの金銭トラブルに備えることが大事です。
また、事前に子どもとよく話しあった上で、入出金履歴が残るキャッシュレス決済を子どもに使わせるのも一つの方法です。
たとえばPayPayは未成年でもPayPay残高を「送る」機能が使えて履歴も残りますので、親が子どものお金の使い方をチェックして金銭トラブルの芽を摘むことも可能となります。
※未成年がPayPay残高を利用する場合は法定代理人(親など)の同意を得る必要があります。
金銭トラブルからわが身を守るために中高生自身が肝に銘じておきたいこと
最後に、金銭トラブルから我が身を守るために中高生自身が肝に銘じておきたいこともお伝えします。
誰ともお金の貸し借りをしない
もっとも重要なことは、「誰ともお金の貸し借りをしない」ことです。
お金の貸し借りをすると、お金を借りた側が不利になっていじめや恐喝に遭うリスクが高くなります。
また、貸し借りをした者の間で大きな金銭トラブルが起きた場合、周囲の人がトラブルに巻き込まれるのを恐れて両者を孤立させる恐れもあります。
そのようなリスクを負ってまでお金の貸し借りを行う必要が本当にあるのでしょうか。
中高生の皆さんはそのことをよく考えた上で慎重に行動してほしいところです。
万が一金銭トラブルに巻き込まれたら必ず親に相談する
金銭トラブルは大人でも対処の難易度が高いのですが、中高生の場合はさらに難易度が上がって自分では対処しきれないケースがほとんどです。
具体的にはいじめや恐喝がメインですが、加害者からの報復を恐れて親に相談できない人も多いようです。
しかし、いじめや恐喝は大人が介入すべき犯罪行為です。
そのようなトラブルに巻き込まれた場合は必ず親に相談してください。
大半の親は学校や警察への通報など、トラブルを収束させる方法を知っていますし、トラブルからわが子を守る覚悟も持っているので必ず助けてくれます。
また、親は人生の先輩の立場からいじめや恐喝に遭わない方法を伝えることもできます。
少しでも気になることがあれば、すぐ親に相談しましょう。
大きな支出に備えてお年玉やお小遣いをためておく
常日頃から、お年玉やお小遣いの一部、バイト代などを先取り貯蓄する習慣をつけましょう。
それによって、ライブチケット代などの高額な支出にもすぐ対応できます。
大きな支出が想定されるときはすぐ親に相談する
数万~数十万円単位のスポーツ用品代や楽器代、合宿代、友達と行く旅行代など、自分では対応できない大きな支出が想定される場合はすぐ親に相談するのが鉄則です。
以上のことを常に意識していれば、万が一自分が金銭トラブルに巻き込まれても冷静に対処できます。
早めに親や周囲の大人に相談しながら対処しましょう。(執筆者:元銀行員 FP2級 大岩 楓)
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