値上げラッシュや2024年のNISA恒久化に伴い、ますます関心が高まる資産形成。
お金の勉強を始めたい人が増えています。
しかし金融教育さえ受ければ、本当に投資を始められるのでしょうか。
行動経済学からみた金融教育事情と、プロの金融トレーダーが断言する「投資に向く人」の意外な特徴を、17年間外資系投資銀行に勤務した筆者の体験談から紹介します。
優待利回り10%超も!? 3月に権利確定、10万円以下で買えるお得な銘柄6つ
「投資を始めたいのに始められない」本当の理由
一般的な金融教育では、金融リテラシーを高めて、金融行動を改善するための取り組みが行われています。
たとえば、以下のような知識を身につけて使いこなす力を養います。
- 家計管理
- 生活設計(ライフプラン)
- 基本的な金融取引
- 金融経済全般
- 保険商品
- ローン・クレジット
- 資産形成商品
金融リテラシーマップより(2016年1月金融経済教育推進会議)
その結果、自分に合った健全なお金の使い方、守り方、増やし方ができるようになるはずでした。
ところが、世界の金融教育現場では、意外な実態が明らかになっています。
「金融教育を受けても、受けていない人とほとんど行動が変わらない」ということです。
正しい知識だけでは行動しない現実を踏まえて、どうすれば人々の行動を変えることができるのでしょうか?
イギリスをはじめ各国の金融教育では、行動経済学の応用が始まっています。
つまり従来の経済学に加えて「心理学」の活用をしているのです。
たとえば、次のような「行動バイアス」が金融の問題行動を起こしたり、逆に行動できない状況を引き起こしたりしています。
行動バイアスとは、人間の不合理なクセのようなもの。
誰にでも起こりうることです。
- 金融行動の回避・先送り
- 自信過剰
- 損失回避
- 近視眼的傾向
プロが断言!「投資に向く人」の意外な特徴
それでは機関投資家であるプロの金融トレーダーたちは、どのように投資と向き合っているのでしょうか。
結論からいうと、投資は「気が小さい方が向く」ということです。
「あいつは気が小さい!トレーダー向きだ!」私が金融業界に入ったばかりの頃、会社の飲み会で聞いた一言に衝撃を受けました。
その時は「気が小さい人が、億単位のお金を動かすなんてできないでしょ!」と答えました。
しかし、トレーダーは「君、トレーディングの本質をわかってないね!」と反論。
それ以来、筆者は「投資と心理の関係」に興味を持つようになりました。
投資の世界では、ちょっとしたミスが大きな損失に繋がりかねません。
筆者はリスク管理の仕事をしながら、「ミスを見逃したらクビになるかも知れない」と気が抜けない日々でした。
次第に「〇〇の対策をしているから、最悪の事態を回避できる」といった、常に最悪のシナリオを想定して備えるマインドセットが身についていきました。
金融経験を積むにつれ、なぜ「気が小さいトレーダー」がよいのか、その真意がわかるように。
気が大きくなりやすい人は、良くも悪くも「投資はうまくいく」前提です。
上げ相場では「もっともっと上がる」と上機嫌になり、利益確定のタイミングを逃しやすくなります。
うまくいく前提なので、最悪のシナリオを想定していません。
そのため下げ相場では、パニック売りをする確率が高まるのです。
一方、気が小さい人は、常に「万が一のことが起きたらどうしよう」と考えています。
「◯%上がったら利益確定」
「◯%下がったら損切り」
「〇〇の状況では買い増し」
など、事前に十分なシミュレーションをして対策を講じています。
気が小さい人の方が「万が一のリスク」に対応する能力が高く、投資に向くということです。
投資銀行のトレーダーたちは選りすぐりのメンバーで、気が大きくなったり、パニックになったりする人はいません。
難しい局面でも冷静な判断ができるよう、厳しい訓練を受けています。
投資は車の運転に似ている
貯蓄しかしたことがないのに、投資を始めるのは「何だか怖い」と感じる人も多いでしょう。
「投資は怖い」と思っている人は、ぜひその感情を大事にしてください。
投資は車の運転みたいなもの。慎重な人ほど安全運転なのです。
「交通事故は起きない」前提の人は、死角の多い場所でもスピードを上げて運転するかもしれません。
慎重な人は、よく注意して運転するはずです。
「投資は怖い」と思っていれば、事前に対策をする人が多いでしょう。
ただ、私たちはプロのトレーダーみたいに、朝から晩まで金融市場をモニターできないし、多額の資金を日々動かす訳にもいきません。
それではどのような対策をすればよいのか?
その解決策が少額から積み立てる「長期積立分散投資」です。
「積立投資のはじめ方について」は過去の記事を参照ください。
【第1回教えて上原さん】毎月いくら投資に? 積立購入後はどうしたら?
投資はリスク管理が全て
投資情報は、Webで簡単に手に入る時代。
その大半は「どうしたら儲かるか」「どの銘柄が良いか」に集中しています。
しかし投資で一番大切なのは「リスクと感情への対処法」です。
「投資はリスク管理が全て」と断言する機関投資家もいるほどです。
気が小さい人ほど、本当は投資に向いていると言えます。
星の数ほどある情報をつまみ食いして、正しい知識を身につけるのは至難の業。
大人の私たちも、高校での金融教育みたいに体系的にお金のことを学びたいものです。
それでも「お金を増やす、使う、管理する」ことに抵抗がある人は、お金に対するトラウマがあるかもしれません。
そういう人は、「ファイナンシャル・セラピー」で解決できるでしょう。
ファイナンシャル・セラピーは、今アメリカで注目の新領域で、心理学と資産運用などの金融アドバイスを組み合わせたサービスです。
個人の心理的な傾向や行動パターンに合わせて、適切なお金との付き合い方をアドバイスします。
次回の記事では、ファイナンシャル・セラピーの観点から、お金と心理の深い関係を紐解いていきます。(執筆者:証券外務員一種、NLPマネークリニック®️認定トレーナー 上原 千華子)
2024年新NISAでも、現行「つみたてNISA」を継続すべき理由 まだの人は一刻も早く始めて先行者利益を!