年金事務所への年金の請求手続きとは別に請求手続きが必要となるものがあり、その中の一つに厚生年金基金というものがあります。
年金事務所での請求手続きでほっと一息という方もいらっしゃるかもしれませんが、今回は厚生年金基金への請求手続きについて解説します。
厚生年金基金とは端的には企業年金の一種であり、企業が単独または共同して設立する公法人となります。
老齢厚生年金の一部を国に代わって支給することと、企業の業績等を勘案し独自に上乗せ給付を行うことで老後の保障を手厚くすることを目的に1966年10月から実施されており、厚生年金保険法にも規定されている制度です。
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請求方法
原則として、加入していたそれぞれの基金に問い合わせをしましょう。
また、特定することが難しい場合は企業年金連合会に問い合わせをするのも一案です。
その際には加入されていた厚生年金基金の加入員番号、国から付番されている基礎年金番号の確認があります。
もし、過去に厚生年金基金に加入していた記憶がある場合は確認しておくことが重要です。
代行給付とは
基金加入後は当該加入期間に応じた老齢厚生年金の報酬比例部分が国に代わって基金から支払われるために「代行給付」と呼ばれています。
上乗せ給付とは
各々の基金によっては独自の年金積み増し分として厚生年金よりも手厚い給付を行うケースがあります。
これは基金の規約によって定められているために画一的な記載は困難ですが、前提として、基金からの給付は老齢に限定されますので、障害や遺族については年金事務所への請求手続きとなります。
基金加入者でない方と比べた場合の注意点
基金加入者へ支払われる年金は一部が基金からの代行給付という形になるため、例えば(長い職業生活でそのようなケースは多くはありませんが)ほぼ同じ給与形態で加入期間も同じ友人同士で年金証書を見比べた場合、基金加入者の方が老齢厚生年金の額が低額となっているはずです。
言うまでもなく、老齢厚生年金の一部が基金から支払われるためです。
しかし、最終的には(上乗せ給付がある場合は)基金に加入していない人に比べて年金額が多くなることが少なくありません。
雇用保険との調整は?
国から支払われる65歳前の老齢厚生年金は雇用保険からいわゆる失業保険を受給する場合、支給停止されます。
そこで、基金からの給付は失業保険との調整対象となるのでしょうか。
この部分については各々の基金の規約によって定められているため、加入していた基金に問い合わせておく方が無難です。
似て非なる制度の国民年金基金
これまで述べてきた制度は「厚生年金基金」であり、国民年金第1号被保険者のみが加入できる国民年金基金とは全く別の制度です。
参考までに国民年金基金も厚生年金加入者と比べて年金額が低額になりがちな国民年金第1号被保険者向けの年金上乗せ制度です。
厚生年金基金加入を確認するには?
長い職業生活の中で自身が厚生年金基金に加入していたか否かを正確に記憶できているケースばかりとは言えません。
確認方法としては、加入していた基金から〇〇厚生年金基金加入員証とうい形で書面の交付を受けているはずです。
また、紛失しているケースも珍しくなく、他の方法としては節目年齢の時に送付されてくる「ねんきん定期便」への記載をフックとして気付けるケースもあります。
また、基金への加入の有無については年金事務所でも把握できているために、確認することは可能です。
受給開始年齢に達する前にきちんと確認
老後の定期的な収入源は多くの場合、年金が大部分を占めることが多いと考えます。
請求漏れを回避する意味でも受給開始年齢に達する前に記録の確認や請求の準備を進めていきましょう。(執筆者:社会保険労務士 蓑田 真吾)
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