会計事務所の相続実務でまれに「故人の子が先に亡くなっている」というケースがありました。
子が先に亡くなっていますと代襲相続人としてその子の子(孫)が相続人になります。
そこで、故人の子が複数いると、代襲相続人である、子の子(孫)は、おじ・おばと遺産分割の話をすることになります。
ところが、先に亡くなった子が結婚し配偶者がいても、その配偶者は法定相続人にはならないのです。
つまり、親が亡くなり、続いて子が亡くなった場合には、その子の配偶者は、子の相続人として遺産分割に参加できますが、順番が逆になり、子死亡 → その子の親の相続の場合は、子の配偶者は、相続人になれず、遺産分割に参加もできないのです。
先に亡くなった子の配偶者と義父母が同居していたりすると、子の配偶者は、より複雑な気持ちになります。
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先に亡くなった子に子供がいない場合
当方も、先に亡くなられた子の配偶者である恵子(仮名)さんから相談をいただいたことがあります。
恵子さんには子供がいませんでした。
夫の両親とは、良好な関係が続いており、義父母から、養子縁組の話もあったそうです。
ただ夫には姉もいて、その姉に気を使い、養子縁組の話は断られたそうです。
ただ、義姉は遠方に嫁いでいることもあり、義父母の老後の介護等の現実的なお世話は、恵子さんがしてきました。
ただし、養子縁組していない以上、恵子さんは義父母の相続権はないのです。
義父から、遺言書作成の提案が
ある日、義父は、「恵子さんに財産を与えるよう遺言書を書いた」と言われ、恵子さんに遺言書を預けていました。
恵子さんにしてみれば、「相続人でないのにそんなことができるの」と思われたそうですが、遺言書では法定相続人以外でも与えることが可能なのです。
現在は特別寄与料という制度もありますが、これは恵子さんの方から請求しないとできません。
恵子さんも、義父に対し、ありがたいことと感謝し面倒も見ていました。
父娘の確執が
義父が亡くなり、恵子さんは、長男の嫁として葬儀も行い、代金も立て替えていたため、義父の子である義姉に相談したところ、
「相続人は私一人になると聞いています。恵子さんに替払い等があったら、領収書を見せてくれたらお支払いします」
との返事のみで感謝の言葉もなかったそうです。
そこは父と娘との間にそれなりの事情があったようです。
遺言書のことを義姉に伝えたところ
恵子さんは、そこで義姉に遺言書を義父から預かっていることを話しました。
義姉からは、「そんなの、信用できない」の一言です。
義父の書いた遺言書は、自筆証書遺言(法務局で保管制度もない時に作成)で、検認の申立てが必要でした。
申立には、故人の戸籍等が必要です。
本来、相続人でない恵子さんは戸籍を入手できないのです。
ここは、当方が、調べ、遺言書を持っている人が「申立人のため、検認手続きで必要である」ことを市役所に説明したところ、入手することができました。
不動産の名義変更には遺言執行者の指定が必要
義父の遺言を裁判所にて検認し、開封したところ、不動産をいただける内容でした。
司法書士さんに、遺言書を見せ相談したところ、義父の書いた遺言書には、遺言執行者の指定がなく、名義変更をするには、相続人の協力が必要であるといいます。
今回、義姉の協力は難しそうです。
弁護士さんに、相談したところ、裁判所に遺言執行者選任の申し立てをし、遺言執行者を決めれば、義姉の協力なしでもできそうだということが判明しました。
遺言書作成も事前の知識があるかないかで、大きな違いが出てくることをその時、学びました。(執筆者:FP1級、相続一筋20年 橋本 玄也)