銀行預金の利息が「すずめ雀の涙」の状態が長く続いています。
でも不動産投資のチラシには、5%や10%の利回りが記載されています。
10%の利回りとは、1,000万円の不動産を購入すれば、年間100万円の賃料収入が得られるということです。
10年で「元が取れる」計算です。
居住用の区分所有の分譲マンション(1戸)の売買情報にも、利回りが記載されている場合があります。
不動産に対する利回り計算は、決して投資物件だけでなく、居住用の不動産についても、大切な指標です。
上記の内容でチラシに利回り10%の不動産なら、必ず10年で元が取れるのでしょうか。
実際にはかなり難しいと思われます。
それはほとんどの場合、不動産チラシの利回りには、購入する際や購入後の必要経費が含まれていないからです。
チラシの利回りはほとんどが表面利回りであり、実際の利回りは(最終利回り)は、経費がかかる分、記載の利回りを下回ります。
次に、利回りの高い物件ほど、評価するべきでしょうか。購入すべきでしょうか。
実はそうとはかぎりません。
普通預金ならば、利息が多い金融機関を選ぶべきです。
利回りを比較する場合は、購入金額を意識するとわかりやすくなります。
同じく年100万円の収入を得る2つの物件、利回りが5%、10%であれば、購入費は2,000万、1,000万となります。
同じ収益を得る物件なのに、なぜ売値が違うのか。
自身が検討している不動産の利回りは、割高なのか、割安なのか。
本日は、利回りを比較する際の注意点について、取り上げます。
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利回りとは
不動産の利回りとは、物件購入の金額に対して、収入の割合を%に数値化したものです。
- 利回りの計算方法:年間収入÷購入金額×100
利回りの種類
表面利回り(グロス利回り)
年間収入÷購入価格×100
実質利回り(ネット利回り)
(年間収入―年間諸費用)÷(購入金額+購入時の諸経費など)×100
想定利回り
年間収入を、満額(年間通して空室なし)や、空室率を想定し利回りを計算する
現行利回り
中古物件は、現在の収入で利回りを計算する
広告上の利回り
不動産物件などのチラシは、満室想定の表面利回りを掲載している場合がほとんどです。
物件購入時は、登記費用等の諸費用が必要となる場合があります。
購入後の空室による収入減、修繕費、固定資産税や電気代等の経費、宣伝広告費等の費用が発生する場合があります。
よって、購入後の実質利回りは表面利回りを下回ることになります。
利回りと購入金額
A不動産不動産とB不動産は年間収入が同じで、利回りが5%と10%です。
利回りはB不動産の方が倍高くなります。
購入金額は2,000万円と1,000万円で、半分となります。
同じ収入なのに、B不動産の販売額が下がる(利回りが上がる)のは、 A不動産にくらべ物件や収入にリスクがあると評価されたためです。
利回りが上がる不動産のリスクとは、以下のような条件です。
不動産の条件
- 築年数が古くメンテナンスが悪いなど、以後追加費用が見込まれる。
- 建築基準や耐震基準を満たしていない。
- 賃貸需要が低い。
- 交通の便が悪い。
- 駐車場や駐輪場が少ない。
- 瑕疵がある(事故物件など)。
入居者の条件
- 対象の客層が悪い。
- 空室の恐れが高い。
- 特定の客層に依存している(大学や専門学校など教育機関、大規模集客施設や工場などの就労機関)。
ランニングコストの条件
- 管理費や修繕積立金が高い。
- 特定の設備に費用が掛かる(浄化槽や井戸などの維持費)。
利回りは、リスクと正比例しています。
利回りが高い物件は、リスクが多く織り込まれている可能性が高く、購入費用が下がる(売値が低い)。
反対に利回りが低い物件は、リスクが少ないと判断されている可能性が高く、購入費用が上がる(売値が高い)。
標準的な利回り
不動産の利回りは、エリア・築年数・構造ごとに発表されています。
投資不動産を取り扱う宅建業者は、営業地域の利回りや売買事例を把握しています。
また、地域の利回りを公開している会社があります。
それらを利用しましょう。
- 一般社団法人 日本不動産研究所では、地域の利回りが公表されています。
たとえば名古屋にあるファミリータイプの表面利回りは、4.7%とされています。
- 不動産投資と収益物件の情報サイト「健美家(けんびや) 」を運営する健美家株式会社では、地域の利回りが公表されています。
東海圏の表面利回りは8.46%とされています。
掲載物件の利回りが公表されているようです。
- 株式会社東京カンテイの市況レポートには、 主要都市圏駅別の利回りが公開されています。
表面利回りについて名古屋駅は8.52%、名古屋市の主だった駅は、4~5%となっています。
検討中の不動産の利回りと、地域の標準的な利回りを比較しよう
自身が検討している不動産の利回りと、地域の標準的な利回りを比較してください。
投資物件購入の際は、利回りを注視すべきです。
また分譲マンションなど居住用財産も、利回りを意識しましょう。
退職など収入が激減した場合に、換金しやすい不動産を持っていると、生活防衛になります。
今回お伝えしたかったのは、
- 広告上の利回りは確定したものでなく、下がる可能性が高い。
- 不動産の利回りは地域で相場がある。それより利回りが高い場合は、リスク要素、低い場合はプラス要素がある可能性がある。
長期的に保有するのであれば、利回りが低い物件の方が「安全資産」として評価できる場合があります。
これらを意識して、利回りを確認してください。(執筆者:CFP、1級FP技能士 金 弘碩)
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