2022年10月に育児介護休業法が大幅に改正されました。
特に今回の改正は、男性育休の取得がしやすく配慮された内容が特色と言えます。
そこで、男性であっても活用可能な育休取得後の社会保険制度の1つである「育児休業等終了時報酬月額変更届」について解説します。
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育児休業等終了時報酬月額変更届とは
特に女性の場合、一般的に育児休業取得前と後では、働き方そのものが大きく変わることが少なくありません。
例えば、
- 労働時間が短くなった
- 残業ができなくなった
- 夜勤ができなくなった
など、子供の養育に時間を割く必要性が高く、副次的に収入も減ることが少なくありません。
そのような場合に収入が低くなったにも関わらず、社会保険料が育休前の水準となってしまうと「手取り額」としては心許ない額となり、生活に与える影響は無視できません。
社会保険料は原則として4月から6月の給与をもとに、その年の9月から実態に合った社会保険料が決定します。
しかし、育児休業の復職は必ずしも4月ということはないので、その間の負担が大きくなってしまいます。
そこで、この届出をすることで、育休復帰後3か月の給与をもとにより早期に実態に合った社会保険料額に改定できます。
もちろん、社会保険料の等級を引き下げると将来の年金額が減るというデメリットもありますが、「養育特例」といった緩和措置があります。
性別による制度の利用可否はあるのか
育児休業等終了時報酬月額変更届を届け出ることで、より早期に実態に合った社会保険料額への改定が可能となりますが、この制度は女性だけでなく、男性も活用できる制度です。
ただし男性の場合、女性と比べて短期の育休となる傾向が多く、統計上も「5日未満」が最多を占めます。
≪画像元:厚生労働省≫
その場合、女性まではいかずとも、5日程度の育児休業取得でも同制度を活用できるのかという心配もでてきます。
結論としては、「〇か月以上の育休でなければ対象にならない」という決まりはありませんので、短期間の育休でも対象にはなります。
もちろん短期間の育休取得後に給与が下がるようなことがない場合、申請するメリットがないというケースもあるでしょうが、育休終了後3か月の平均額を出し、育休取得前の標準報酬月額と1等級以上の差があれば、固定的賃金の変動がなくても4か月目から改定が可能です。
基本的に毎年9月以外の月で標準報酬月額を改定させる場合、月額変更届と言い、固定的賃金の変動があり、かつ従前の標準報酬月額と比べて2等級以上の変動がなければ対象外となります。
他方、育児休業等終了時報酬月額変更届は固定的賃金の変動がなくても対象となることはもとより、1等級の変動でも対象となるため、月額変更届より対象範囲が広いと言えます。
ただし、育児休業復帰後3か月以内の給与を用いることとなるので、育休復帰後相当期間経過後の場合は本制度を活用できません。
育児休業期間中の免除制度
育児休業については周辺部分として、免除制度や育児休業給付金についても改正が行われています。
これまでは対象外で活用できなかった制度も、改正後は活用可能となるものもあります。
代表例として、育児休業期間中の社会保険料免除制度については、これまで「月末」に育児休業を取得していることが要件とされていましたが、仕事柄、月末の取得が難しいという場合もあったでしょう。
改正後は月末育休も対象となるのは継続していますが、その他に同じ月の中で14日以上の育休取得でも給与の社会保険料は免除されるように改正されました。
他方、賞与については1か月超の取得でなければ免除されなくなりましたが、多くの改正内容は男性育休取得の促進につながる制度改正ですので、積極的に活用しましょう。(執筆者:社会保険労務士 蓑田 真吾)
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