所得税は所得の性質に応じて10種類に区分され、所得区分ごとに所得金額の計算方法は異なります。
また所得の種類によっては、個別に所得税の税率が設定されているものもあります。
本記事では所得区分ごとの所得金額の計算方法について解説します。
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所得区分の種類と算出方法
所得区分は次の10種類であり、計算方法は個々に定められています。
所得税はそれぞれで算出した所得金額を合算し、所得控除を差し引いた金額に対して税率を乗じ、税額を算出します。
所得区分と所得金額の算出方法
所得区分 | 所得金額の算出方法 |
利子所得 | 収入金額 |
配当所得 | 収入金額-元本取得に要した負債の利子の額(元本の保有期間分) |
不動産所得 | 総収入金額-必要経費 |
事業所得 | 総収入金額-必要経費 |
給与所得 | 収入金額-給与所得控除額 |
退職所得 | 収入金額-退職所得控除額×1/2 |
山林所得 | 総収入金額-必要経費-50万円 |
譲渡所得 (※1) | 〇短期譲渡所得 総収入金額-(譲渡資産の取得費+譲渡費用)-50万円 |
〇長期譲渡所得 総収入金額-(譲渡資産の取得費+譲渡費用)-50万円(※2) | |
一時所得 | 総収入金額-収入を得るために支出した金額-50万円(※2) |
雑所得 | 〇公的年金等 収入金額-公的年金等控除額 |
〇公的年金等以外 総収入金額-必要経費 |
※1 50万円の特別控除額は、短期譲渡所得に対する譲渡益から控除する
※2 算出された金額の2分の1が総合課税の対象
分離課税方式に該当する所得
所得税は原則として「総合課税方式」で計算しますが、所得区分ごとに個別の税率が定められている「分離課税方式」で所得税額を算出する所得もあります。
分離課税方式で計算する主な所得
・ 上場株式等に係る配当所得等
・ 株式等の譲渡
・ 不動産の譲渡
・ 先物取引に係る雑所得等
・ 退職所得金額
・ 山林所得金額
金地金などの売却した場合、総合課税方式の譲渡所得に該当するため、利益から50万円を差し引いた金額が所得金額となります。(長期譲渡所得の場合、算出された金額の2分の1が総合課税の対象です。)
株式や不動産を売却した際の所得区分も譲渡所得ですが、株式の譲渡所得と不動産の譲渡所得は分離課税方式の対象なので、個別に税率が定められています。
株式の譲渡所得の税率は、一律20.315%(国税15.315%、地方税5%)であり、所得金額の大小で変動することはありません。
不動産の譲渡所得については、短期譲渡所得と長期譲渡所得で税率が異なり、短期譲渡所得と長期譲渡所得の判断基準も総合課税の譲渡所得とは違うのが特徴です。
確定申告不要な所得とは
所得税には、他の所得と分離して一定税率による源泉徴収を行うことにより課税が完結する、「源泉分離課税方式」も存在します。
源泉分離課税方式に該当する所得については、原則として確定申告や納税の手続きは不要です。
源泉分離課税に該当する主な所得
・ 預貯金等の利子等
・ 源泉徴収済みの配当所得
・ 源泉徴収済みの株式譲渡所得
銀行にお金を一定期間預けていると利子(利息)を受け取れますが、利子に対する税金は銀行から支払われるタイミングで徴収されていますので、銀行の利子は申告する必要がありません。
上場株式の配当が支払われる際も、事前に源泉徴収されているため配当所得の申告は原則不要ですが、納税者の選択により申告することも可能です。
源泉分離課税で申告していない所得は、配偶者控除や扶養控除の判定する際の合計所得金額からは除かれます。
しかし配偶者等が配当所得を申告した場合、配当所得も含めた合計所得金額で所得控除の適否判定をしなければいけません。
配当所得を含めた合計所得金額が基準を超えた場合、配偶者控除や扶養控除が適用できなくなる可能性もあります。
また申告期限が過ぎてから申告を取り消すことはできませんので、源泉分離課税の対象となる所得を申告するかどうかは、慎重に判断してください。(執筆者:元税務署職員 平井 拓)
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