少し前までは、家族の介護のために仕事を辞める方が多いのが現状でした。
しかし今は、頻繁に法律が改正されて、さまざまな支援策を講じています。
仕事を辞めるのではなく、まずはどんな法律が使えるのか調べましょう。
それをうまく利用して介護と仕事のバランスを図ってみることが第一です。
そこで、働く上でどんな法律が利用できるのかご紹介します。
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「育児介護休業法」 介護休業を利用してしばらく休む
介護休業とは、常時介護が必要な家族を介護するために取得する休みのことです。
介護休業は、最長93日を限度に3回に分けて取得することができます。
また、仕事を休んだ期間をハローワークに申請することで、介護休業給付金が支給されます。
介護給付金は、介護休業開始前賃金の67%ですが、育児休業のように社会保険料の免除はありません。
しかし、給付金のため非課税ですので、賃金とあまり変わらないでしょう。
また育児休業については、取得後に短時間勤務制度を取得することができますが、介護に関しては、
(1) 短時間勤務制度(8時間勤務を6時間にする等)
(2) フレックスタイム制(自由出勤できる制度)
(3) 始業・終業時刻の繰上げ繰下げ制度(時差出勤制度)
(4) 労働者が利用する介護サービスの費用の助成その他これに準ずる制度
の4つの制度からうち1つを企業が実施すればよいことになっています。
さらにこの4つの制度の期間からは、介護休業期間は除外されますので、同じ対象家族について介護休業を取得した場合は、93日から介護休業の期間を引いた期間が利用できる期間となります。
内容的に疑問がわくかもしれませんが、育児の場合は期間が決まっているのに、介護の場合はいつまでかわからないので、仕方がないかもしれません。
「育児介護休業法」 会社を休まずに介護休暇と時間外労働の制限を利用
介護休業を使わずに大変な時に介護休暇を利用して休み、また残業をしないで早く帰宅することもできます。
介護休暇は、病院の付き添い、役所の手続き等の家族の介護のために休むときに年5日(2人であれば年10日)取得することができます。
法律では有給にする義務を会社に課していませんので、無給の会社が多いようです。
しかし、欠勤扱いではなく、出勤扱いになりますので有給休暇の8割出勤の計算や人事評価にはひびかず、働く上での不利益はありません。
また、残業に関しては、家族を介護する労働者が請求した場合は、事業の正常な運営を妨げる場合を除き、1か月について24時間、1年について150時間を超える時間外労働をさせることができないことが法律で規定されています。
ただし、この制限はあくまでも本人が会社に申し出た場合の措置で、何も言わなければ、残業をしなければなりません。
会社によって異なる制度
法律的には、最長93日の範囲内で利用できる介護休業と4つの制度のうちどれかを制度化すればよいのですが、それ以上に充実している会社が多いのが現状です。
介護休業は93日までの取得ですが、その後短時間勤務制度を必要な期間利用できるようにしている会社が多いようです。
少子高齢化で、年齢の高い人が多くなり、家族の介護をする時期の社員のことを考えなければ、人手不足に陥るからでしょう。
他にも介護休業が終了して介護休業給付金が支給されなくなっても、何らかの賃金保障している会社もあります。
自分の働く会社が、どのような制度を整えているのか確認をしてみることが肝要です。
労働者災害補償保険
労災保険は、業務上と通勤途上のケガや病気が対象となります。
ここで、介護が関係するのが通勤途上です。
同居している場合は、何なら問題はありませんが、別居をしている親の介護に時々様子を見に行かなければならない時、仕事が終了してから行くとします。
すると普段の通勤経路から外れてしまいます。
しかし、安心をして下さい。
介護のために通勤経路から外れて事故にあってケガをしても、通勤途上のケガとして扱ってもらえます。
労災が適用されれば、治療費は無料で、休業補償もあります。
転勤命令に関しては
共働きの夫婦、または独身で家族の介護をしている場合、転勤命令がでたら困ってしまいます。
共働き夫婦の場合は、残った一人で面倒を看なければなりませんし、独身の場合は、誰かに頼むか施設にいれなければなりません。
このような時には、転勤命令を拒否することができるのです。
これは育児介護休業法で定められていて、転勤拒否して評価が悪くなった場合も、不利益を与えたということで法律違反となります。
ただし、施設に入れて常時介護をする必要がなくなった場合は、拒否することはできません。
会社は辞めないという覚悟が必要
介護のために会社を辞めてしまうと、金銭的に困ってしまいます。
たとえ仕事と介護の両立が大変でも、会社は辞めないという覚悟が必要です。
法律にそった介護に関する最低必要な制度しかなくても、会社として重要な社員であれば、何とか両立ができるように考えてくれるはずです。
実は、会社に相談をして仕事と介護を両立して働き続けている人は多いのです。
まずは、法律をうまく活用して働き続け、それでも無理であれば、さらに会社と相談をしましょう。(執筆者:特定社会保険労務士、1級FP技能士 菅田 芳恵)