最近になって私の周りで「つみたてNISAを始めたや始めたい」という話をよく耳にしますが、肝心の商品選びについてはどうしたらいいのか全く分からないという方がほとんどでした。
金融機関の言いなりにならないよう、判断材料を持って商品選択していただくために解説します。
【ぼったくり投資信託】買ってはいけない投資信託の見分け方を解説
商品選択の判断材料にこんな資料があります
口座開設していざ、商品選択となってもどれを選んだらいいのかわからないという相談は結構あります。
企業型DCに加入されている方からも「会社で投資教育的なものは受けたが理解できず結局、元本保証のある商品を選んでそのままにしている」という話も聞きます。
商品選択についての判断材料を持っていないため、リスク&リターンの尺度がわからず商品を選べないのでしょう。
判断材料となり得る資料に金融庁の「資産運用業高度化プログレスレポート2022(pdf)」があります。
この資料は金融庁が公表しているものですが、その中に投資信託商品を評価するのに参考になる図表などがありました。
判断材料の指標としてのシャープ・レシオとは?
上記の資料の中にファンド別の5年間シャープ・レシオの分布図と平均が示されております。
シャープ・レシオとは、価額変動幅(リスク)を考慮したパフォーマンス評価方法の代表的な指標でリターンだけにとらわれずに商品を判断できます。
≪画像元:金融庁(pdf)≫
・2021年12月末のインデックスファンドの5年間シャープ・レシオ平均は0.59 (上図参照)
・2021年12月末の アクティブファンドの5年間シャープ・レシオ平均は0.49 (上図参照)
5年間シャープ・レシオの平均でみた場合、アクティブファンドよりインデックスファンドのほうが成績が良かったことになります。
過去の成績からの判断ではありますが、投資信託ランキングなどで5年間シャープ・レシオをチェックして、インデックスファンドで、5年間シャープ・レシオ0.59以上のスコアを出している商品が選択肢になり得ます。
GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)の運用方針を参考にしてみては?
GPIFとは、国民が払った国民年金と厚生年金の保険料を一括して運用する公的機関で2022年3月末時点の運用資産は196兆5926億円で世界最大級の機関投資家とされています。
GPIFの運用成績については悪かった時に大きくメディアで取り上げられたりするので、あまり運用成績が良くないと思っている方もいますが、着実に資産を増やしています。
GPIFが今のような運用を開始した2001年度以降、2021年度までの年金積立金の名目の運用利回りは年平均で3.71%です。
同じ期間の賃金上昇率の平均はマイナス0.07%でしたので、2001年度以降21年間の実質的な運用利回りは3.78%となります。
2018年3月末時点の運用損益を金融庁が都銀や地銀の計29行を対象に調べた結果、投資信託を保有する個人投資家の半数近くが損失を抱えているという結果を踏まえれば、かなり安定しています。
GPIFの運用方針は「長期分散投資」でポートフォリオについては現在、乖離許容幅を持っていますが、
- 国内債券
- 外国債券
- 国内株式
- 外国株式
それぞれ25%ずつとなるように運用しております。
この運用方針を参考に、ポートフォリオを真似してGPIFのポートフォリオに連動した成果を目指す商品を選択すれば安定的な運用が望めます。
その他の判断材料は何があるのでしょうか?
他にも商品選択のための判断材料はあります。
信託報酬等のコストの割安さです。
長期運用においてコストの違いは大きな差を生みますので必ずチェックしてください。
私見ですが、その他の条件等も総合的に勘案する前提で、インデックスファンドを主体とするなら信託報酬は年率0.3%以下の商品が選択肢の基準と考えます。
アクティブファンドを選択したいのであれば、ファンドのアルファ(α)値もみてみましょう。
アルファ(α)値とは、ファンドの収益率から市場全体の動きに連動したリターンを表すベータ(β)値を引いたもので、ファンドの運用実績とベンチマークの乖離を示す尺度のことです。
先の資料にも掲載されておりますが、アルファ(α)値がプラスになった(買う価値があった)アクティブファンドは444本中35本だけので、参考にしてみてください。
「どこで口座開設するかも重要」です。
ここまで述べてきたような条件を満たす商品がみつかっても取り扱いがなければ意味がありません。
欲しい商品を取り扱っている金融機関で口座開設するようにしてください。(執筆者:CFP認定者、1級FP技能士 小木曽 浩司)