緊急事態宣言時と比べ、徐々に以前の生活スタイルに戻りつつあり、会社によってはボーナスの支給が「復活」するといった動きもみられます。
またボーナスの支給は継続していたものの、決算ボーナスとして通常の年よりもボーナスの支給回数が増えるといった動きがある場合の留意点にフォーカスをあて、解説していきます。
健康保険証なしで病院に行ったら支払いはどうなるのか 負担割合と清算方法を解説
ボーナスと社会保険料
毎月の給与から社会保険料が引かれるのと同様に、ボーナスが支払われる際には、ボーナスからも社会保険料(その他に雇用保険料と所得税も)が引かれます。
これはボーナスも将来受給する年金に反映するという性質上、至極当然の話ではあります。
ボーナスはある意味、「ご褒美」という性質上、ひんぱんに支給されるという前提に立っていませんので、ある一定の回数を超えて支払うと「報酬」(通常の給与等)として扱われます。
社会保険上の考え方として、「労働の対償」として3か月を超える期間ごとに支払われるものを「賞与」として扱います。
しかし、
ボーナスを支払うと、社会保険上も把握する必要があるため、支払った日から5日以内に会社が「賞与支払届」を提出し、社会保険料額が決定します。
給与の場合は入社時に毎月いくら引かれるという基準となる「標準報酬月額」が決定しますので、標準報酬月額に基づき、毎月の給与明細から社会保険料が引かれていきます。
毎月支払われる給与であっても、残業が多かった月や年の途中で昇給や降給もあり得ますので、毎年7月1日から7月10日までの間に4月から6月の支払われた給与額を報告し、標準報酬月額が適正か否かの確認が行われます。
他方、賞与の場合、入社時に賞与の額を報告することはできませんので、支払ったタイミングでの報告となります。
仮にボーナスを年に4回以上支払うと「報酬」として扱われますので、12で割った額を通常の給与に加算して標準報酬月額が決定されます。
イレギュラーで年4回となった場合
他方、通達では、
とされています。
具体例として、過去数年にわたって支給されたことがなく、賃金規程や慣行から判断し、その年に特別に支給された賞与であれば支給回数には含まれません。
仮に7月1日前の1年間に4回以上ボーナスを支給する場合、「賞与」ではなく、「報酬」として扱われ、毎月引かれる社会保険料にも影響を及ぼしますが、イレギュラーな形で年4回以上となった場合はそもそも「年4回以上」とはならないということです。
高報酬層への影響は
厚生年金の標準報酬月額は65万円が上限となっています。
賞与とみなされなくなったことにより、報酬として扱われたとしても、既に保険料は上限いっぱいに達していますので、厚生年金の保険料は上昇しません。
しかし、健康保険の標準報酬月額は139万円が上限となるので、健康保険の保険料は上昇しますが、保険料率は厚生年金が18.3%(労使折半)であるのに対して、健康保険は9.81%(東京都・40歳未満・労使折半)となるため、保険料全体では(賞与ではなくなり報酬に含まれてしまう方が)むしろ安くなるという逆転現象が起こる場合があります。
年金の他に健康保険から支給される傷病手当金や出産手当金、年3回以下の賞与は給付額に反映されませんが、年4回以上となれば給付額に反映されます。
賞与と社会保険料の仕組みを理解しておこう
年3回以下の賞与の場合は個別に都度、賞与としての社会保険料が発生します。
しかし、年4回以上となれば賞与とは扱われなくなり、既に標準報酬月額が65万円以上の方の場合は厚生年金の保険料は既に上限に達していますので、変動がありません。
そして、傷病手当金等の給付額はアップすることとなります(併せて健康保険料もアップしますが、厚生年金に比べて率が低い)。
賞与の支給回数は個々人で決められるものではありませんが、仕組みについては理解しておきましょう。(執筆者:社会保険労務士 蓑田 真吾)
特別支給の「老齢厚生年金」と、雇用保険の「基本手当」は併給できるか、支給停止になる条件とは。